これからの暑い季節、寝苦しい思いをする夜が多くなるかもしれません。
夏場の睡眠は、ぐっすり眠れた感じがしなかったり、寝苦しさのあまり途中で目を覚ましたり、起床時にだるさを感じることも少なくないでしょう。
では、暑い夜でも快適に眠るためには、どうすればいいのでしょうか?
今回は、だれでも簡単に実践できる科学的ヒントを見ていきます。
目次
- 夏場に快眠が妨げられる科学的な理由とは?
- 寝具やパジャマ選びも重要、「くつ下を冷やす」裏ワザも
- 寝る前の水分量、飲み物の種類も大事
夏場に快眠が妨げられる科学的な理由とは?
人の体には、内部の温度を安全な範囲に保つ「体温調節」のしくみがあります。
暑い日に疲れやだるさを感じやすいのも、体が普段より多くのエネルギーを使って体温を調整しているためです。
そして睡眠も、この体温調節と密接に関わっています。
私たちは眠るとき、体の中心部の熱を少しずつ外へ逃がしていきます。
この熱の放出がうまく進むことで、眠りにつきやすくなります。
ところが、寝室そのものが暑いと、体は熱を外へ逃がしにくくなるのです。
さらに湿度が高いと、問題はより大きくなります。
体は汗をかき、その汗が蒸発するときに熱を奪わせることで体を冷やしています。
しかし空気がすでに湿っていると、汗が蒸発しにくくなります。
つまり、高温多湿の夜は、「暑い」だけでなく「汗による冷却が効きにくい」状態でもあるのです。
暑い夜に眠れないとき、まず意識すべきなのは、体が熱を逃がしやすい環境を作ることです。
その1:日中の熱を寝室に入れないこと
暑さ対策というと、寝る直前に扇風機を回したり、冷たいものを使ったりする方法を考えがちです。
しかし、寝室の温度は夜になって急に決まるわけではありません。
日中に窓から入った日差しが床や壁、家具を温め、その熱が夜になっても室内に残ることがあります。
そのため、陽射しの強い晴れた日は、日が当たる窓のカーテンやブラインドを閉めておくことが大切です。
シャッターやオーニング、外側の日よけが使える場合は、さらに効果的です。
ガラスに日光が届く前に遮れるため、室内へ入る熱を減らしやすくなります。
その2:涼しい時間帯に「風の通り道」をつくる
窓の開け方にも注意が必要です。
外の空気が室内より暑い時間帯に窓を開けると、涼しくするどころか熱い空気を入れてしまいます。
窓を開けるなら、外気が室内より涼しい早朝、夕方、夜間が向いています。
家の異なる側の窓やドアを開けて風の通り道を作ると、室内にたまった熱を逃がしやすくなります。
これはクロスベンチレーションと呼ばれる換気方法です。
また、サンルームのようなガラス張りの空間や、日当たりのよい部屋は特に熱をため込みやすい場所です。
こうした部屋がある場合は、日中に換気し、可能であれば家のほかの部分とつながる室内ドアを閉めておくと、熱の広がりを抑えやすくなります。
その3:寝る場所を変えてみる
寝室が上階や南向き、西向きにある場合は、家の中でもかなり暑くなっている可能性があります。
熱は建物の中を上へ移動し、日を受けた壁や屋根は日没後も熱を放出するからです。
熱波の時期には、1階や北向きの部屋など、家の中で最も涼しい場所に寝ることも現実的な対策です。
寝具やパジャマ選びも重要、「くつ下を冷やす」裏ワザも
暑い夜の寝具選びで重要なのは、「冷たそうに見えるか」ではなく、体から出る熱と湿気を逃がせるかです。
当然ながら、重い布団や厚い羽毛布団、体にぴったりした合成繊維の衣服は、熱や湿気を閉じ込めやすくなります。
そのため、暑い時期には寝具を減らし、薄いシーツを使うほうが快適になりやすいです。
とくに、薄い綿のシーツは汗を吸収しやすく、体の熱を逃がす助けになります。
綿やリネンなどの天然繊維でできた、ゆったりした寝間着も有効です。
裸で寝るほうが涼しいと思われがちですが、ゆったりした天然繊維の服は汗を吸い、空気の流れを作るため、かえって快適な場合があります。
ただし、生地の厚さや織り方、水分の扱い方によって快適さは変わります。
また、寝るときは暑くても、夜の間に体温は下がります。
そのため、寝具を完全になくすのではなく、薄い掛けものを近くに置いておくと安心です。
暑いのに明け方に寒く感じることがあるのは、夜間に体温が下がるためです。
その4:扇風機の使い方には注意
扇風機は、暑い夜に役立ちます。
ただし、扇風機そのものが空気を冷やしているわけではありません。
扇風機は皮膚の上に空気を流し、汗の蒸発を助けることで涼しく感じさせています。
そのため、湿度や気温、体調によって効果は変わります。
とくに、非常に高温の環境では、扇風機だけでは十分でないことがあります。
高齢者、脱水気味の人、体調が悪い人では注意が必要です。
扇風機を使う場合は、水分をとり、寝ている間に風を顔や体へ直接当て続けないようにします。
使っていてかえって暑く感じたり、めまいがしたり、気分が悪くなったりする場合は、使用をやめる必要があります。
冷却グッズも、使い方によっては助けになります。
保冷剤や冷凍ブロック、冷却枕は、体の一部を冷やして寝苦しさを和らげる場合があります。
ただし、保冷剤を直接肌に当てるのは避け、布で包むようにします。
結露で寝具が濡れないよう、トレイの上に置くなどの工夫も必要です。
その5:くつ下を冷やす方法も
靴下を冷蔵庫で冷やして履く方法もあります。
足を冷やすと、皮膚全体や体の温度を下げる助けになる場合があるからです。
就寝前に、冷えたくつ下をしばらく履いて、本格的に寝るときに脱ぐといいかもしれません。
寝る前の水分量、飲み物の種類も大事
暑い日は、日中から十分な水分をとることが大切です。
ただし、寝る直前に大量の水を飲むと、夜中にトイレへ行くために目が覚めやすくなります。
喉が渇いて目が覚めない程度に、しかし就寝直前に飲みすぎない程度に、水分量のバランスをとることが重要です。
飲み物の種類にも注意が必要です。
清涼飲料には、カフェインを多く含むものがあります。
カフェインは中枢神経を刺激し、目が覚めた状態を強めます。
暑い日に飲酒量が増える人もいますが、アルコールにも注意が必要です。
アルコールは寝つきをよくするように感じられることがあります。
しかし、早朝に目が覚めやすくなり、睡眠全体の質を下げることがあります。
その6:日中の昼寝をやめるか、時間を減らす
また、暑さで夜の睡眠が乱れていると、日中に強い眠気を感じることがあります。
それでも、できるだけ昼寝を避けることがすすめられます。
夜に眠るための眠気を、日中に使ってしまわないためです。
それから暑い日でも、普段の就寝時間や就寝前の習慣はできるだけ守ることが大切です。
生活リズムを大きく変えると、かえって睡眠パターンが乱れやすくなります。
もしベッドに入っても眠れない場合は、いったん起きて、読書や考え事などなど、落ち着いた行動をする方法があります。
ただし、スマホを見るのは避けたほうがよいです。
画面のブルーライトや、終わりなく続くスクロールは脳を刺激し、さらに目が覚めた状態にしてしまうことがあります。
眠気を感じたら、再びベッドに戻るようにします。
暑い夜の快眠は、寝る前ではなく昼から始まっている
暑い夜に眠るための対策は、寝る直前だけで完結するものではありません。
日中は日差しを遮り、外気が涼しい時間に換気しながら、家電や調理により発生する熱と湿気を減らすことも大切です。
夜は、家の中で最も涼しい場所を選び、通気性のよい寝具と衣服を使い、扇風機や冷却グッズを安全に活用します。
さらに、水分補給や飲み物の選び方、スマホを見ない習慣も、睡眠の質に関わります。
たとえ一晩か二晩、睡眠が乱れても、多くの人は大きな問題なく日中を過ごせます。
大切なのは「眠れないかも」と不安になりすぎないことです。
暑い夜の快眠は、部屋に熱を入れないこと、体が熱を逃がしやすい状態を作ること、そして普段の睡眠リズムを守ることから始まります。
参考文献
Eight ways to sleep well in hot weather
https://theconversation.com/eight-ways-to-sleep-well-in-hot-weather-285434
How to get a good night’s sleep during hot weather
https://www.bbc.com/news/articles/cpw7gp2ky70o
How to sleep in a heatwave: 13 clever tips and cooling essentials
https://www.theguardian.com/thefilter/2026/jul/07/how-to-sleep-in-a-heatwave
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部
