嫌なほど自信満々な人や、妙に冷静で動じない人に出会ったことはないでしょうか。
そうした人たちは、周囲から見ると扱いにくい存在かもしれません。
米テキサス大学サンアントニオ校(UTSA)の研究によると、ナルシシズムやサイコパシーといった一部のダークな性格特性は、ストレス時の不安や心血管反応の小ささと関連していました。
この研究は2026年5月30日に『International Journal of Psychophysiology』で正式公開されています。
目次
- 「ダークな性格」はストレス反応にどう関係するのか?
- ナルシズム・サイコパシー傾向の高い人は、ストレス課題での反応が異なる
「ダークな性格」はストレス反応にどう関係するのか?
心理学には、「ダークトライアド」と呼ばれる3つの性格特性があります。
それが、ナルシシズム、サイコパシー、マキャベリアニズムです。
ナルシシズムは、自分を特別だと感じやすく、称賛や優越感を求める傾向です。
サイコパシーは、感情の冷たさや衝動性、恐怖や罪悪感の感じにくさと関係します。
マキャベリアニズムは、他人を計算高く操作し、自分の利益を得ようとする傾向です。
いずれも対人関係では問題につながりやすい性格特性ですが、研究者たちは、こうした特性がストレスへの反応においては別の顔を持つ可能性に注目しました。
そこで研究チームは、心疾患のない18〜26歳の大学生139人を対象に実験を行いました。
参加者はまず、ダークトライアドの傾向を測る質問票に回答。
その後、安静状態で心拍数や血圧を測定し、続いてストレスを与えるための暗算課題に取り組みました。
この課題では、参加者は研究者に見られながら計算を行い、間違えると訂正されるなど、社会的評価を受ける状況に置かれました。
実験中には、収縮期血圧、拡張期血圧、平均動脈圧、心拍数が測定され、課題の前後には本人が感じたストレスや不安も確認されました。
その結果、ナルシシズムが高い人は不安や血圧反応が小さく、サイコパシーが高い人は主観的ストレスや心拍反応が小さい傾向を示しました。
一方、マキャベリアニズムは、主要な分析ではストレス反応と明確な関連を示しませんでした。
それぞれの反応について、より詳細な結果を次項で見ていきましょう。
ナルシズム・サイコパシー傾向の高い人は、ストレス課題での反応が異なる
詳しく見ると、ナルシシズムが高い人は、ストレス課題後に報告した不安が低く、さらに収縮期血圧と平均動脈圧の上昇も小さい傾向がありました。
収縮期血圧とは、いわゆる「上の血圧」です。
平均動脈圧は、心臓から送り出される血液の圧力を全体的に見る指標です。
つまりナルシシズム傾向の高い人は、評価される場面でも不安を感じにくく、血圧の上昇幅も比較的小さかった可能性があります。
理由の一つとして、ナルシシズム傾向の高い人は、評価場面を「脅威」ではなく「自分を示す場」と受け止めやすい可能性があります。
また、サイコパシーが高い人は、課題後に感じたストレスが低く、心拍数の上昇も小さい傾向がありました。
これは、サイコパシーが恐怖や不安の感じにくさ、情動反応の弱さと関係することを考えると理解しやすい結果です。
彼らは、プレッシャーがかかる場面でも、強い緊張や動揺が起こりにくいのかもしれません。
一方で、マキャベリアニズムは、少なくとも主要な分析では、ストレスや心血管反応と明確には結びつきませんでした。
同じダークトライアドでも、自信の強さや情動反応の弱さを含む特性と、計算高さを中心とする特性では、ストレスへの関わり方が異なるのかもしれません。
とはいえ、この研究には限界があります。
対象は心疾患のない若い大学生139人であり、実験も短時間の暗算課題に限られています。
また、心拍数や血圧の上昇が小さいことは、一見すると「ストレスに強い」ように見えますが、それが長期的に健康によい反応なのかは、この研究だけでは判断できません。
今後は、より幅広い年齢層や健康状態の人を対象に、日常生活のストレスや長期的な心血管リスクとの関係を調べる必要があります。
それでも今回の研究は、社会的には困った性格であっても、特定のストレス場面では動じにくさとして現れることを教えてくれました。
参考文献
Some dark personality traits may help the body handle stress more easily, finds new study
https://sciencex.com/news/2026-07-dark-personality-traits-body-stress.html
元論文
Examining the association between the dark triad personality traits and cardiovascular reactivity to acute psychological stress
https://doi.org/10.1016/j.ijpsycho.2026.113420
ライター
矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。
編集者
ナゾロジー 編集部
