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日本の働き盛り世代で“元気さ”が低下し続けている


日本人の“元気さ”が、静かに下がり続けているかもしれません。

広島大学の研究チームは、日本全国を対象にした大規模調査を分析しました。

その結果、日本人の健康関連QOL(生活の質)が、2017年から2024年まで一貫して低下していたことを発見しました。

特に低下が目立ったのは、社会を支える就労世代です。

しかも悪化していたのは、単なる病気の有無ではなく、「痛み」「不快感」「不安」「ふさぎ込み」といった、日常の感覚に近い部分でした。

研究成果は2026年4月9日付で国際学術誌『Scientific Reports』に掲載されました。

目次

  • 日本人の就労世代で健康関連QOLが低下している
  • コロナ後にも健康関連QOL低下は続いていた

日本人の就労世代で健康関連QOLが低下している

今回研究チームが調べたのは、「健康関連QOL(HRQoL)」と呼ばれる指標です。

これは単なる寿命や病気の有無ではありません。

普通に歩けるか、日常生活を支障なく送れるか、身体に痛みや不快感がないか、不安や落ち込みを感じていないかなど、「どれだけ健康に日常生活を送れているか」を総合的に見るものです。

研究では、世界的に広く使われている「EQ-5D-3L」という国際指標が用いられました。

これは「移動」「身の回りの動作」「普段の活動」「痛み/不快感」「不安/ふさぎ込み」の5項目について自己評価する方式です。

そして研究チームは、2017年度、2020年度、2024年度に実施された全国調査を分析。

対象は20〜85歳の日本人成人です。

調査では、地域や人口構成の偏りをできるだけ抑え、2017年度に1万人超、2020年度に約8800人、2024年度に約4400人の有効回答を用いました。

さらに研究では、都道府県別の分析も実施しています。

その中では「経験的ベイズ法」という統計手法により、小さな標本サイズによる不安定さを補正。都道府県ごとの変化をより安定して比較できるようにしています。

そして分析の結果、全国平均の健康関連QOLは、2017年度の0.9133から、2020年度には0.8977、2024年度には0.8834へと、7年間で一貫して低下していました。

年代別に見ると、特に就労世代での健康関連QOLの低下が顕著でした。

男性では40〜69歳、女性では30〜59歳で統計的に有意な低下が確認されています。

では、なぜこのような結果になるのでしょうか。より詳細な結果と共に見ていきましょう。

コロナ後にも健康関連QOL低下は続いていた

今回の研究で特に重要なのは、2024年になっても健康関連QOLが回復していなかった点です。

2020年の低下が一時的な社会変化だけによるものなら、2024年にはある程度回復する可能性も考えられました。

ところが、全国平均の値はさらに低下していました。

研究チームは、この背景としてCOVID-19流行による間接的影響に注目しています。

流行中には、医療サービス利用の減少、身体活動量の低下、メンタルヘルス悪化などが報告されていました。

また、外出や対面での交流が減ったことも、日常生活の質に影響した可能性があります。

そしてこれらの影響はCOVID-19後にも残ったのかもしれません。

社会が表面上は元に戻ってきたように見えても、生活習慣や人との関わり方の変化が、日常の健康感に影響を残している可能性があるのです。

特に注目すべきなのは、QOL低下に「痛み/不快感」と「不安/ふさぎ込み」が大きく関わっていた点です。

つまり、急激に重い病気が増えたというより、痛みや不快感、不安や気分の落ち込みといった、日常生活の中で感じやすい不調が広がっている可能性が見えてきたのです。

さらに都道府県別分析では、ほぼ全ての都道府県でQOLの低下傾向が確認されました。

これは、一部地域だけの問題ではなく、日本社会全体に広がる変化である可能性を示しています。

今後は、身体活動の変化、医療利用、メンタルヘルス、社会的交流などが、健康関連QOLの低下とどのように関係しているのかを、さらに詳しく調べていく必要があります。

私たちは「長生き」についてはよく語ります。

しかし今回の研究は、「どれだけ元気に日常を送れているか」という、もっと身近な問題が変化している可能性を示しています。

日本人の“元気さ”を取り戻すには、病気を治すだけでなく、日々の痛み、不安、孤立しやすい生活環境にも目を向ける必要があるのかもしれません。

全ての画像を見る

参考文献

【研究成果】日本人の健康関連QOLが7年間で一貫して低下 ―特に就労世代で顕著―<2017・2020・2024年度の全国大規模調査で判明>
https://www.hiroshima-u.ac.jp/news/97336

元論文

Longitudinal changes in health related quality of life in Japan based on nationwide surveys and Bayesian regional estimates
https://doi.org/10.1038/s41598-026-45692-x

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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