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【集団の知能】掘削や建設を行う「アリ型ロボット」を開発


アリは、設計図もリーダーもいないのに、どうやって巨大な巣を作っているのでしょうか。


実は彼らは、お互いに指示を出し合うのではなく、「環境に残された痕跡」を頼りに行動しています。


この既知の原理を工学的に再現し、その働きを検証するため、アメリカのハーバード大学(Harvard University)を中心とする研究チームは、アリの協調行動を模した小型ロボット群を開発しました。


たった数個の単純なルールだけで、ロボットたちは材料を集めて構造を作り、既にある材料の集まりを掘り崩すような動きまで見せました。


この研究は2026年4月10日付の『PRX Life』に掲載されました。




目次



  • アリのように集団で建設するロボット「RAnt」
  • 2つのパラメータだけで「建設」と「掘削」を切り替える

アリのように集団で建設するロボット「RAnt」


アリやシロアリが集団で構造物を作る仕組みは、これまでの研究である程度解明されています。


その中核にあるのが「スティグマジー」と呼ばれる仕組みです。


これは、個体が環境に変化を残し、その変化に他の個体が反応することで、間接的に協調が生まれるというものです。


アリの場合はフェロモンがその役割を担っています。


今回の研究は、この既知の原理をロボットで再現し、実際にどのような集団行動が生まれるのかを検証したものです。


研究チームが開発した「RAnt(ロボティック・アント)」は、非常に単純な機能しか持っていません。


まず、ロボットが移動した場所には、「フォトルモン(photormone)」と呼ばれる光の信号が実験装置によって投影されます。


これはアリのフェロモンのような“行動の痕跡”を光で再現したものです。


次に、ロボットはこの光の強さの違いをセンサーで検知し、より強い方向へ進むように動きます。


さらに、ロボットは小さなブロックを拾って運び、周囲の光信号が決められた条件を満たすと、ブロックを離します。


重要なのは、ロボット同士が直接通信していない点であり、行動の調整はすべて環境を介して行われます。


つまり、ロボットが残した信号が次のロボットの行動を変え、その結果がさらに環境を変えていくという循環が生まれます。


このような単純なルールにもかかわらず、興味深い現象が観察されました。


画像
単純なルールだけで協力するかのように建造 / Credit:Fabio Giardina(Harvard University)et al., PRX Life(2026), CC BY 4.0

ロボットが偶然同じ場所に集まると、その場所のフォトルモンが強まります。


すると、その場所はさらにロボットを引き寄せやすくなり、集まりが加速。


やがてロボットはその場の信号に強く影響され、同じ場所を周回するようになります。


そのようにしてロボットが局所的に集中すると、そこが構造形成の起点になります。


そこにブロックが運び込まれることで、特定の場所に材料が集まり、自然に構造が形成されていくのです。


つまり、材料の集積や構造形成は、あらかじめ設計図を与えられて起きたものではなく、ロボットと環境の相互作用から自発的に現れたのです。


では、これらRAntの振る舞いは、どのように制御できるのでしょうか。


2つのパラメータだけで「建設」と「掘削」を切り替える


この研究のもう一つの重要な成果は、集団の振る舞いを非常に少ないパラメータで制御できることを示した点です。


研究チームは、ロボットの行動を決める要素として主に2つのパラメータに注目しました。


1つは「協力度(cooperation strength)」で、ロボットがフォトルモンの強い方向にどれだけ引き寄せられるかを表します。


もう1つは「材料を置く/取り除く傾向(deposition rate)」です。


この値の向きを変えると、ロボット群は材料を集める方向にも、取り除く方向にも振る舞います。


協力度が低い場合、ロボットはほぼランダムに動き、材料は広く分散します。


一方で協力度が高くなると、ロボットは信号の強い場所に集中しやすくなり、特定の場所に材料が集まるようになります


さらに、材料を扱うルールの向きを変えることで、同じ種類のロボット群が、材料を集める行動にも、取り除く行動にも切り替わることが確認されました。


材料を置く方向では、ブロックが集められて構造形成が進みます。


反対に、材料を取り除く方向では、既に並べられたブロックの層を掘り崩すような掘削行動が現れました。


ここで重要なのは、こうした切り替えが、司令塔からの命令ではなく、各ロボットの局所的な判断と環境信号の積み重ねで生じている点です。


個々のロボットは単純なルールに従っているだけですが、環境との相互作用を通じて、集団としては一貫した作業を実現しています。



このように研究では、ロボット同士と周りの環境が影響し合うことで、集団の動きが決まることを示されました。


つまり、賢さはロボット一台の中だけではなく、周りの環境も含めて生まれているということです。


こうした仕組みは、危険な環境での自律的な建設や、月・火星といった地球外でのインフラ整備など、将来的な応用も期待されています。


人間が直接作業できない場所において、単純なロボットの集団が協調して環境を構築する技術は、大きな可能性を秘めていると言えるでしょう。


全ての画像を見る

参考文献

Just call these tiny autonomous construction robots “antdroids”
https://newatlas.com/robotics/tiny-autonomous-construction-robots-rants/

Simple Robots That Collectively Build and Excavate Are Inspired By Ants
https://seas.harvard.edu/news/simple-robots-collectively-build-and-excavate-are-inspired-ants

元論文

Robotectonics: Emergent Phototactic Aggregation-Disaggregation in Swarms
https://doi.org/10.1103/cx3h-bwhc

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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