「ひとりでいると寂しくなり、ネガティブ感情に支配される」
多くの人がそう考えています。
実際、孤独は心の健康に悪影響を及ぼすと語られることも少なくありません。
しかし近年の心理学研究は、この常識に静かに疑問を投げかけています。
英レディング大学(University of Reading)研究チームは2021年に、新型コロナウイルス流行初期に2000人以上を対象に「ひとりの時間」の体験を調査。
その結果は「孤独=つらい」という単純な図式が成り立たないという事実でした。
むしろ、多くの人にとって孤独は、成長や回復、そして他者との関係を見直すための重要な時間になっていたのです。
目次
- 孤独は「心を整える時間」だった
- 孤独が「人とのつながり」を強める理由
孤独は「心を整える時間」だった
研究では、思春期(13〜16歳)、中年期(35〜55歳)、高齢期(65歳以上)の3つの年齢層に分けて調査が行われました。
まず注目すべきは、ひとりでいるときの感情です。
参加者は「どれだけ穏やかでリラックスしていたか」を評価しましたが、すべての年齢層で「安らぎを感じる」という傾向が確認されました。
特に高齢者は、最も強く「落ち着き」や「安心感」を感じていました。
また、多くの人が孤独な時間をネガティブにではなく、むしろ価値ある時間として捉えています。
例えば、自分の時間を持つことを「重要で有益」と感じたり、「ひとりの時間を大切にしている」と答えた人が多かったのです。
さらに、孤独な時間は心理的な回復だけでなく、成長の機会にもなっていました。
最も多く報告されたのは「自己成長」です。
参加者の約45%が、ひとりでいることで自分自身を見つめ直したり、人生について考えたり、精神的に成長したと答えています。
中年層ではその割合が62%に達しており、孤独な時間が「内面を深める場」として機能していることが分かります。
また、約44%の人は、新しいスキルを身につけたり、何かを達成したりすることで「有能感」を得ていました。
オンライン講座を受けたり、趣味に打ち込んだりと、孤独な時間は「何もしない時間」ではなく、「自分を高める時間」だったのです。
つまり孤独とは、心を休ませながら同時に自分を育てる、いわば「内面のトレーニング時間」とも言えるでしょう。
参考文献
Growing, Learning, Connecting: The Benefits of Being Alone
https://www.psychologytoday.com/us/blog/living-single/202201/growing-learning-connecting-the-benefits-being-alone
元論文
What Time Alone Offers: Narratives of Solitude From Adolescence to Older Adulthood
https://doi.org/10.3389/fpsyg.2021.714518
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部
