パートナーとの夜の営みには確かに、心身をリラックスさせたり、ストレスを緩和させる効果があります。
しかし最近、米ローズ・カレッジ(Rhodes College)の研究で、夜の営みが「ある動機」から行われた場合には、翌日のストレスをむしろ高めてしまう可能性があるというのです。
その動機とは、後ろ向きな理由から性行為をすることでした。
具体的には、どのような場合を指すのでしょうか?
研究の詳細は2025年12月26日付で学術誌『Archives of Sexual Behavior』に掲載されています。
目次
- 性行為は「当日限定」でストレスを下げる?
- 「なぜしたのか」が翌日のストレスを左右する
性行為は「当日限定」でストレスを下げる?
研究チームは今回、結婚から半年未満の新婚カップル319組、計645人を対象に調査を実施。
参加者は14日間にわたり、毎晩その日のストレスや不安の程度、そしてパートナーとの性行為の有無を日記形式で記録しました。
分析の結果、性行為が行われた日は、行われなかった日よりもストレスが低いことが分かりました。
この効果は男女差や夫婦関係の満足度に左右されず、比較的広く当てはまるものでした。
つまり、「夜の営み」はその日限りではあるものの、確かにストレスを和らげる働きを持っていたのです。
ただし重要なのは、その効果が翌日まで持続しなかった点です。
前日に性行為をしていても、翌日のストレスが低くなることはありませんでした。
性行為によるリラックス効果は、24時間を超えて続くものではなかったのです。
「なぜしたのか」が翌日のストレスを左右する
さらに注目すべきなのは、研究者たちが「性行為をしたかどうか」だけでなく、「なぜしたのか」に着目した点です。
参加者は、性行為の動機についても回答しました。
たとえば「相手を喜ばせたい」「愛情を示したい」といった前向きな理由なのか、それとも「喧嘩を避けたい」「関係が悪化するのが怖い」といった理由なのかです。
その結果、関係の衝突を避けるために性行為をした場合、翌日のストレスが高くなることが明らかになりました。
一見、関係を円滑に保つための行動のように思えますが、心理学的には逆効果になる可能性があります。
嫌な結果を避けるための行動は、内面では緊張や警戒心を強めやすく、結果としてストレスを持ち越してしまうのです。
一方で、「相手を喜ばせたい」といった前向きな動機による性行為では、翌日のストレスがやや低くなる傾向も見られました。
ただし、この効果は性格特性などを考慮すると弱まるため、決定的とは言えません。
この研究は、「夜の営みはストレス解消になるか」という単純な問いに対し、「どんな気持ちで行ったかによって、結果は大きく変わる」という答えを示しています。
今回の研究が示しているのは、性行為そのものが万能のストレス解消法ではないという現実です。その日の気分を和らげる効果はあっても、それが翌日まで続くとは限りません。
特に、「関係を壊したくないから」「揉め事を避けたいから」といった理由での夜の営みは、かえって心に負担を残してしまう可能性があります。
ストレスを本当に軽くするためには、行動の表面だけでなく、その裏にある動機や関係性そのものに目を向けることが大切なのかもしれません。
参考文献
One specific reason for having sex is associated with higher stress levels the next day
https://www.psypost.org/one-specific-reason-for-having-sex-is-associated-with-higher-stress-levels-the-next-day/
元論文
Does Sex Today Relieve Stress Tomorrow? Examining Lagged Associations Between Partnered Sexual Activity and Stress Among Newlywed Couples
https://doi.org/10.1007/s10508-025-03295-z
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部
