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500年の「空白の期間」を経てポルトガルに”帰ってきたビーバー”とは?


ヨーロッパビーバーは、かつてはヨーロッパ各地の川辺に普通に暮らしていた生物です。

しかし15世紀の終わりを境に、ポルトガル国内からその姿は一切見られなくなっていました。

そして現代、私たちは信じがたいニュースを耳にすることになります。

2025年、環境保護団体「Rewilding Portugal(リワイルディング・ポルトガル)」が、ポルトガル領内でヨーロッパビーバー(学名:Castor fibre)の存在を確認したと発表しました。

スペインとの国境地帯に設置された自動カメラが、若い成獣とみられる個体をとらえたことで、500年の空白がついに埋められました。

目次

  • 生態系エンジニア「ビーバー」ってどんな動物? ポルトガルでは500年前に絶滅
  • ポルトガルで500年ぶりにビーバーが復活!今後の対策とは?

生態系エンジニア「ビーバー」ってどんな動物? ポルトガルでは500年前に絶滅

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ポルトガルでは絶滅していたヨーロッパビーバー / Credit:Canva

ヨーロッパビーバーは、体長約80〜100cm、体重11〜30kgほどの大型齧歯類(げっしるい)で、川や湖の近くに生息します。

広い平たい尾と水かきを持つ後ろ足を活かし、水辺の生活に特化した体を持っています。

生態的には夜行性で、主に植物の葉や樹皮を食べ、縄張り内にダムや巣(ロッジ)を作るという独自の行動で知られています。

この行動が、彼らを単なる動物以上の存在にしています。

実はビーバーは、自然界における”生態系エンジニア”と呼ばれるほど、環境に対する影響が大きいのです。

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ビーバーは生態系エンジニア / Credit:Rewilding Portugal

彼らが作るダムは、川の流れをせき止めて小さな湿地や池を形成します。

これにより、周囲には水を好む植物が生え、両生類や魚類、昆虫、鳥類、そして他の哺乳類たちが集まりやすくなります。

ビーバーが暮らすことで、周辺の生物多様性は一気に豊かになるのです。

また、こうした湿地は水を貯え、土壌の湿潤を保ち、地下水の補給にも貢献します。

干ばつや山火事が深刻な問題となる南ヨーロッパにおいて、ビーバーの存在は気候変動に対する自然の盾ともなり得るのです。

しかし、ポルトガルでは15世紀末を最後にビーバーの記録は絶たれました。

乱獲、毛皮・肉・薬用としての利用、そして川辺の開発が彼らを追いやったと考えられています。

以来、ポルトガルの川にはビーバーがいない状態が続き、生態系の一部が欠けたままとなっていました。

ところが最近、500年の空白を埋めるニュースが飛び込んできました。

ポルトガルで500年ぶりにビーバーが復活!今後の対策とは?

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500年ぶりにポルトガルでビーバーが発見される / Credit:Rewilding Portugal

2025年6月、環境保護団体「Rewilding Portugal(リワイルディング・ポルトガル)」が、ポルトガル領内でヨーロッパビーバーの存在を確認したと発表しました。

実はビーバーが再びポルトガルに現れたのは、スペイン側からの”分散”によるものでした。

この20年間、スペイン国内ではビーバーの保護と再導入プログラムが進められてきました。

特にドゥエロ川流域の国立公園では個体数が安定し、2023年にはすでに「国境から150メートル圏内」にまで接近していたことが報告されていました。

そしてついに2025年、ポルトガル領内で正式な痕跡とカメラ映像によって、存在が確認されたのです。

スペインで増加したビーバーたちがポルトガルにもやってきたのです。

この発見は、Rewilding Portugalが長年にわたって行ってきた監視活動の成果でもあります。

彼らは以前から「ビーバーが自然に渡ってくるのは時間の問題」と主張しており、地域社会や行政機関に対して共存の準備を呼びかけていました。

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帰ってきたビーバーとの共存策も考慮しなければいけない / Credit:Rewilding Portugal

ポルトガルにビーバーが復活したことで、考慮すべきことも出てきます。

ビーバーのダムは時に農地の浸水やインフラの損傷といった問題も引き起こします。

実際、ドイツやフランス、スイスなどの国々では、農家とビーバーの共存をめぐる摩擦が生まれており、様々な対策が行われています。

ポルトガルでも、こうした対策を「問題が起きてから」ではなく「事前に準備しておくこと」が重要になります。

その一歩として、今年の秋に開催される2回Rewilding会議では、ビーバーの共存策が大きなテーマとなる予定です。

自然の恩恵を受けつつ、人間の暮らしとの摩擦を最小限に抑えるためには、科学と地域社会の対話が不可欠です。

500年という空白の期間経て、ようやくビーバーがポルトガルの地に帰ってきたという報告は、非常に喜ばしいものです。

もしかしたら、私たちが暮らす地域でも、粘り強く環境を改善していくことで、かつて消えてしまった生き物たちが復活の兆しを見せてくれるかもしれません。

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参考文献

More than 500 years later, the Beaver is back in Portugal
https://rewilding-portugal.com/news/more-than-500-years-later-the-beaver-is-back-in-portugal/

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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