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沈みゆく国ツバル、「国民の半分」が豪州への移住抽選に申請


南太平洋に浮かぶ島国・ツバルで、世界に前例のない移住計画が動き出しています。

ツバルは地球温暖化による海面上昇の影響で、将来的に国土が消滅するとされる国。

その中でツバルとオーストラリアが提携し、オーストラリアへの移住を希望するツバル住民に向けた「抽選制のビザ申請」が開始

毎年280名の住民が当選する制度ですが、その第一回となる今回はすでに国民の半数となる5000人以上の申請が殺到しています。

この移住計画は、単なる一時避難ではありません。

世界で初めて、国家全体を対象とした「計画的な気候移住」を前提とする法的制度であり、いずれはツバル住民の全員がオーストラリアに移住完了する可能性もあります。

 

目次

  • 海に沈みゆく国「ツバル」が直面する現実
  • 「気候移住」という新しい選択肢――世界初の国家移住条約

海に沈みゆく国「ツバル」が直面する現実

ツバルは、南太平洋のちょうど真ん中、ハワイとオーストラリアの中間に位置する小さな島国です。

国土は9つの環礁(サンゴ礁に囲まれた輪状の島)から成り、面積はわずか26平方キロメートル。

国全体の平均高度は海抜2メートルで、最も高い場所でも4.5メートルに過ぎません

このため、ツバルは世界でも最も気候変動の影響を受けやすい国のひとつとされています。

特に問題となっているのが「海面上昇」です。

研究によれば、ツバル周辺の海水面はここ30年で15センチも上昇しており、満潮時にはすでに一部の土地が冠水するようになっています。

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ツバルの場所/ Credit: ja.wikipedia

国連開発計画(UNDP)は「このままでは2100年までに首都フナフティの島の95%が満潮時に海に沈む」と警告しています。

さらに海水が地下水に浸透し、農業用水や飲料水の塩害も進んでいます。

住民たちはすでに畑を高床にするなどの対策を講じていますが、「土地そのものが消える」という現実には抗えません

これらの事態を受けて、ツバル政府は「もはや“気候変動”は抽象的な脅威ではなく、国家の存続に関わる現実」と捉えるようになりました。

そして2023年、ある画期的な条約が結ばれることになります。

「気候移住」という新しい選択肢――世界初の国家移住条約

2023年、ツバル政府とオーストラリア政府の間で締結された「ファレピリ連携条約(Australia-Tuvalu Falepili Union)」は、世界で初めて、気候変動を理由に「国家全体」の移住を合法的に保障する制度となりました。

この条約により、ツバル国民は年間280人ずつ、抽選によってオーストラリアへ移住できる道が開かれました。

移住者には教育・医療・就労の権利がオーストラリア国民と同等に与えられ、条件を満たせば市民権の取得も可能です。

また、ビザの保有者に移住の義務はなく、自由に帰国することも認められています。

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首都フナフティ/ Credit: ja.wikipedia

最初の抽選受付は2025年6月16日に開始し、7月18日に締め切られました。

オーストラリア政府の発表によると、すでに5100人以上―ツバル国民の半数が応募しており、この移住計画への関心と切実さが浮き彫りとなりました。

しかしこの制度には課題もあります。

年間280人という上限では、仮にフルで移住が続いたとしても全員の移動には数十年を要します。

またツバルの人口が減り続ければ、国家としての存続――政治的独立、文化、国際的認知などが失われる可能性もあります。

ツバルの事例は、私たちに新たな問いを突きつけています。

「国家とは土地に根ざしたものなのか、それとも人々と文化こそが国家なのか」という根源的な問題です。

もしもツバル国民の大半が移住し、国土が海に沈んだとしても、ツバルという「国」は存在し続けられるのでしょうか?

この問いに世界がどう答えるかは、今後の気候変動時代における国際社会のあり方そのものを左右するかもしれません。

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参考文献

Tuvalu residents prepare for world’s first planned migration of an entire nation — and climate change is to blame
https://www.livescience.com/planet-earth/climate-change/tuvalu-residents-prepare-for-worlds-first-planned-migration-of-an-entire-nation-and-climate-change-is-to-blame

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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