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男性は女性より肛門挿入「だけ」でオーガズムに達する率が2倍高いと判明


カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究により、男性は女性の約2倍の確率で肛門への挿入刺激「だけ」でオーガズムに達することが判明しました。この研究では、直腸内の快感ゾーンが特定され、男女ともに直腸の前方浅い部分が最も快感を感じやすいとされています。男性の高い感度は前立腺に起因し、女性では陰核の内部構造や陰部神経の影響が考えられます。今回の研究は、肛門性感が解剖学的に根拠のあるものであることを示し、これにより、タブー視されてきたアナルセックスの科学的理解が進むことが期待されています。研究の結果は『Sexual Medicine』に掲載されました。

アメリカのカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)で行われた研究によって、男性は肛門への挿入刺激「だけ」でオーガズムに達する確率が女性の約2倍にのぼることが判明しました。

男女の性行為でも挿入刺激だけでオーガズムに達するのが難しいと言われているなかで、男性の挿入に対する感度の高さは非常に驚きと言えます。

また研究では直腸内の快感ゾーンもマッピングされており男女とも直腸の前方浅い部分が最も快感を感じやすい領域であることを突き止めました。

この部位の近くには男女ともに陰部神経の枝が、女性の場合さらに陰核脚(クリトリスの脚部分)が直腸前壁近くに走行しており、これら解剖学的・神経学的要因が肛門刺激で快感やオーガズムを引き起こす一因と考えられます。

今回の発見は「肛門の快感」は単なる心理的なものではなく身体的な仕組みに裏付けられたものであることを示しています。

研究内容の詳細は2025年6月2日に『Sexual Medicine』にて発表されました。

目次

  • タブーの裏に眠る科学を掘り起こせ
  • お尻に隠れた“Gスポット”:男性はなぜ挿入だけでイケるのか?
  • 男性の前立腺は快楽の泉

タブーの裏に眠る科学を掘り起こせ

タブーの裏に眠る科学を掘り起こせ
タブーの裏に眠る科学を掘り起こせ / Credit:Canva

肛門を使ったセクシュアルな行為(一般的にアナルセックスと呼ばれます)は年代や性別セクシュアリティを問わず多くの人に親しまれてきました。

実際過去の調査では異性愛者では女性の36%・男性の44%がパートナーとのアナルセックス経験を持ち両性愛者や同性愛者ではさらに高率であることが報告されています。

こうした統計が示すように肛門性交(受け身側)は特定の層だけでなく幅広い人々によって行われる普遍的な行為と言えます。

なぜ男性も肛門性交で快感を感じるのか?

これまでの解剖学的な見地から、人間の腰の奥、背骨の下の方から、まるで太い充電ケーブルのような「陰部神経」というメインラインが伸びています。

ケーブルは骨盤の内側をぐるりと回り込み、お尻の柔らかな脂肪に潜り込むと細いコードに枝分かれし、肛門まわりと外陰部の皮膚・筋肉、さらにはクリトリスや亀頭までもくまなく張りめぐられます。

そんな陰部神経の太い枝の一つとして「下直腸神経」が存在しており、肛門から指先がようやく届く1〜2センチほどの浅い前壁に、小さなセンサー線をびっしり伸ばしています。

ここは感覚のホットスポットで、男性ならすぐ裏に前立腺が、女性なら腟の壁のすぐ向こうにクリトリスの内部構造(脚=クルラ)が走っているため、この内側の点を軽く押すだけで外側を直接愛撫したかのような信号が脳へ届き、内側からゾクッと震えるような快感が立ち上がりやすいのです。(※なぜ前立腺刺激が男性にとって快感なのかは3ページ目の「なぜ男性は前立腺刺激で快感を感じるのか?」を部分で解説していますので参照してください)

リズミカルな刺激が続くと、その信号は脊髄を経て骨盤底の筋肉を反射的に締めたりゆるめたりさせ、同時に脳では快感物質のドーパミンやオキシトシンがあふれ、ある強さと時間がそろった瞬間に「絶頂スイッチ」が入ってオーガズムへと達します。

ただしこの前壁センサーは非常に敏感で、潤滑が足りなかったり急に強い圧をかけたりすると、心地よさが一瞬で「痛い」「不快」という信号に反転します。十分に潤滑し、ゆっくり体を慣らせば、男女どちらにとっても体の奥からふくらむ独特の深い快感を安全に味わえる仕組みになっているのです。

しかしながら医療・性科学の分野でアナルセックスに関する研究の多くはHIVや性感染症などリスクに焦点を当てたり対象も異性愛の女性や男性同士のセックス(MSM)に偏っていたりしました。

性的快感や満足オーガズムといったポジティブな側面や直腸内のどの場所が気持ち良いのかといった問いは十分に検討されてこなかったのです。

こうした背景から米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(調査開始当時)などの研究チームは肛門性交時の快感やオーガズムに関する初の大規模調査を実施しました。

この研究の目的は大きく3つあり

(1)どのような男女がどの程度アナルセックスを行っているか

(2)肛門・直腸内のどの部位で快感を得ているか

(3)肛門刺激だけでオーガズムに達することがあるのか

などを明らかにすることでした。

著者らは「肛門の快感の仕組み」や「肛門性交とオーガズムの関係」を解明し医療者が患者に適切なアドバイスを行えるようにする一助とすることを目指したのです。

お尻に隠れた“Gスポット”:男性はなぜ挿入だけでイケるのか?

お尻に隠れた“Gスポット”:男性はなぜ挿入だけでイケるのか?
お尻に隠れた“Gスポット”:男性はなぜ挿入だけでイケるのか? / Credit:Canva

研究チームはオンライン上でアンケート調査を行い、米国の成人男女を対象に約1,000人分のデータを収集しました。

回答者はシスジェンダー(身体の性と性自認が一致している)女性498人、男性466人で、年齢は18歳から60歳以上まで含まれ、性的指向(異性愛、同性愛、両性愛、無性愛)も多様な層から募られました。

調査ではまず性経験や属性について質問した後、「これまでに受け身の肛門性交を経験したことがあるか」を尋ねました。

すると今回の研究では女性の33%・男性の23%がパートナーとのが『受け身のアナルセックス』を経験したとの回答が得られました。

(※年齢層別にみると、女性では中年期(40~59歳)の経験率が最も高く、男性では高齢層(60歳以上)が最も低くなっていました。)

さらにYesと答えた人には、人間の肛門・直腸を前後×浅深の4つの領域(前方浅部・後方浅部・前方深部・後方深部)に区分した解剖図が示され、パートナーとの性行為中に触れられて気持ちよさを感じる領域にチェックを入れてもらいました。

また、肛門刺激でのオーガズム経験について、「肛門への刺激だけで絶頂に達したことがあるか、あるいは他の部位への同時刺激(共刺激)があれば達したことがあるか」も質問しました。

調査の結果、全体の約28%(3割弱)がこれまでに受け身のアナルセックスを経験したと回答しました。

男女別に見ると女性の33%・男性の23%が経験ありと答えており、女性の方が有意に割合が高い傾向がみられました。

(※ただしこれは女性の『好み』ではなく機会や報告バイアスを反映している可能性があると研究チームは指摘しています。)

年齢層では中年期の女性が最も経験率が高く、逆に高齢の男性で最も低くなっていました。

また性的指向による差もあり、異性愛者に比べて同性愛者や両性愛者の方がアナルセックスの経験率が高い傾向がありました(特に異性愛男性は他の層より低率でした)。

研究チームは、この背景には「肛門の快感=同性愛的」という偏見が影響している可能性があると指摘しています。

実際、2017 年の大学生対象調査では95%もの異性愛男性が「肛門の快感は同性愛的だ」と考えていることが報告されており、そうした固定観念から異性愛男性の中にはアナルセックスを避けたり正直に答えなかったりする人もいると考えられます。

次に、肛門・直腸内でどの部分が「気持ちいい」と感じられるかについては、男女とも「前方の浅い部分」を挙げる人が最も多い結果となりました。

4領域のうち、浅い(入口に近い)部分は奥の深い部分より人気が高く、特にお腹側(前側)の浅いゾーンが最多だったのです。

一方、直腸の奥(深部)や後ろ側を快感ゾーンだと答えた人は相対的に少なく、浅い前方とは対照的でした。

興味深いことに、回答者の性的指向にかかわらずこの傾向は共通しており、男女とも前方浅部の刺激を「心地よい」と感じる人が多かったのです。

では肛門刺激でオーガズムに至ることはあるのでしょうか。

この点について、「肛門刺激のみ」でオーガズムを経験したことがあると答えた人は男性では39%、女性では19%という結果でした。

つまり男性の方が女性よりも挿入刺激だけでイける(オーガズムに達する)割合が有意に高かったのです。

一方で、男女それぞれ約半数の人(女性49%・男性47%)は「他の部位への併用刺激があればオーガズムに達した経験がある」と回答しています。

しかし「肛門への刺激では一度もイったことがない」という人は女性に多く、その割合は男性の2倍(男性16%に対して女性32%)に達しました。

このように、オーガズムに関しては男女間で明確な差が見られました。

男性の前立腺は快楽の泉

男性の前立腺は快楽の泉
男性の前立腺は快楽の泉 / Credit:Canva

今回の研究から、肛門性交による快感は解剖学的・生理学的な根拠を伴うものであることが示唆されます。

直腸の前方浅部が人気だった理由について、研究チームは男性と女性それぞれの身体構造に着目しています。

男性の場合、直腸の浅い前側は前立腺という器官に隣接しています。

前立腺は「男性のGスポット」とも呼ばれ、刺激すると射精やオーガズムを引き起こしやすい性感帯として知られています。

このため肛門から前立腺付近を刺激することで、男性は挿入のみでも快感の高まりやオーガズムを得やすいと考えられます。

一方、女性には前立腺はありませんが、直腸前壁の近くには陰核(クリトリス)の内部構造である陰核脚(クリトリスの脚の部分)が左右に伸びており、さらに骨盤内を走る陰部神経の枝もこのあたりを通っています。

陰部神経は陰茎や陰核など外陰部だけでなく、肛門や直腸周囲の感覚も支配している主要な性感神経であり、オーガズムにも深く関与します。

つまり男女問わず直腸の前側には性感を司る神経や組織が集中しているため、その浅い部分の刺激が強い快感を生むのだろうと考えられるのです。

研究チームは論文の中で「男性は女性よりも他の刺激無しに肛門刺激だけでオーガズムに達しやすいことが明らかになりました。ひとつの説明として、男性には前立腺とその周囲の神経束があり、これが肛門性交でのオーガズムに寄与している可能性があります」と述べ、男女差の一因を解説しています。

なぜ男性は前立腺刺激で快感を感じるのか?

多くの男性にとって前立腺への適度な刺激は快感を生みやすいと考えられています。それには大きく二つの理由があります。

ひとつめは前立腺が射精というフィナーレの主役の一つだからです。射精のとき、前立腺は精液の三割ほどを占める分泌液をギュッと絞り出しながら、尿道へ“押し込むポンプ”の役目を果たします。その際に前立腺の筋繊維がリズミカルに収縮し、周囲の神経が一斉に興奮して脳に強い快感信号を送ります。

外側から圧をかけると、この「射精リハーサル」のような収縮が部分的に起こりやすくなり、脳は射精時と似たパターンの快感を感じ取るわけです。

ふたつめは、前立腺を包む被膜やその裏側に性感を伝える細い神経が集中していることです。これらは骨盤内を走る骨盤神経や陰部神経と合流し、ペニスの亀頭や会陰を刺激したときと同じ“報酬回路”を脳内で開きます。つまり前立腺の軽い圧迫は、亀頭を触られたときと似た信号を脳に送りつつ、射精に備える生理的反射まで部分的に呼び起こすため、独特の深い快感になりやすいのです。

こうした解剖学的・生理学的仕組みのおかげで“前立腺は男性のGスポット”と呼ばれることがあるのです。

もっとも、こうした生物学的要因だけで男女差のすべてが説明できるわけではありません。

研究者らは社会的・心理的な要因の影響も指摘しています。

例えば女性の場合、オーガズムに達するには陰核への刺激が欠かせない人が多く、肛門だけでは不十分に感じることが多いかもしれません。

実際、本調査でも肛門のみでイク女性は少数派で、ほとんどは他の部位との併用刺激が必要だと答えています。

また、肛門セックスに対する世間のスティグマ(負の烙印)や個人のメンタル面も無視できません。

長年タブー視されてきた経緯から、女性は肛門で感じることに罪悪感や恥じらいを覚えたり、男性パートナー側も女性の肛門を積極的に刺激しづらかったりする場合があるでしょう。

そうした心理的ハードルが女性のオーガズム達成率を下げている可能性もあります。

一方、男性側では先述のように「肛門の快感=ゲイっぽい」という偏見が根強いことから、特に異性愛男性では肛門への刺激自体を避けたり軽視する傾向があるかもしれません。

性的嗜好や価値観によっても、感じ方や答え方には差が生じうるわけです。

本研究はアンケートによる自己申告データを用いており、回答者が主観的に感じた快感やオーガズムをベースにしています。

そのため記憶違いや回答バイアスの可能性は残ります。

また調査対象はシスジェンダーの男女に限られており、トランスジェンダーやノンバイナリー(Xジェンダーなど)の人々は含まれていません。

従って、性多様性を含む全ての集団に今回の知見が当てはまるとは言えず、今後はより多様な参加者を含めた研究が望まれます。

とはいえ、本研究は肛門性交のポジティブな側面に光を当て、その実態を科学的に示した点で画期的です。

多くの男女が肛門で快感を覚え、中でも前側の浅い部分が人気であること、そして男性は女性より挿入刺激のみでオーガズムに達しやすいことがデータで裏付けられました。

これらの発見は、肛門にも明確な性感帯が存在し、それが神経解剖学的に説明しうる現象であることを示しています。

今後この知見が広まれば、アナルセックスに対する根強いタブーや誤解の解消にもつながるかもしれません。

実際、研究者たちは「肛門の性感構造を理解することで、患者へのより良い性的カウンセリングや、肛門周辺の手術・治療後の影響予測に役立つ可能性がある」と述べています。

(※たとえば手術などで直腸の一部を切除する場合、快感の源となりやすい浅い部分を切り取るのを可能な限り避けるなどの方法が提案できるでしょう)

セックスについて語る上で、快感や満足といった前向きな側面にもしっかり目を向けることの大切さを、本研究は教えてくれているのです。

日本においては肛門性交だけでなく通常の性行為研究も軽視したり、さらに笑いものにすることがあり、時には性科学研究そのものが偏見の目でみられれがちです。

少子高齢化に悩む国の国民が性科学を笑うのは、非常に憂慮すべき状況だと言えます。

性科学を笑うものは性科学に泣くことになるでしょう。

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元論文

Anal sex practices and rectal erogenous zone maps among men and women of diverse sexual orientations: an anatomic-map based questionnaire study
https://doi.org/10.1093/sexmed/qfaf037

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部

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