「これ、あのときの“伝説の焼きそば事件”じゃん!」
そんなひと言で、一気に場が盛り上がった経験はありませんか?
一部の人にしか通じない“内輪ネタ”は、なぜあんなに楽しくて、なぜあれほど笑いを誘うのでしょうか?
アメリカ、チャンプレイン・カレッジ(Champlain College)に所属する心理学者リンジー・ゴッドウィン氏は、その理由を解説しています。
この記事では、内輪ネタが人と人との絆を強める仕組みや、それを私たちがどのように活用できるかを解説します。
目次
- 内輪ネタとは? そしてなぜそれがこんなにも楽しいのか?
- 内輪ネタの活用法!上手く使えば最強のコミュニケーションツールになりえる
内輪ネタとは? そしてなぜそれがこんなにも楽しいのか?
内輪ネタとは、特定のグループ内でだけ意味が通じるジョークや言い回しのことです。
例えば、大学時代のゼミ仲間しか知らない教授の口癖や、会社で頻発する「あの人またやったね」といった失敗談などがそれにあたります。
「また田中先生の『それ、常識だから!』出たねw」
このように他のクラスでは全く伝わらないけれど、そのクラスの生徒にとっては笑いのツボだったりします。
さらに、社内で頻発するエピソードがネタ化することもあります。
「また佐藤さんの『10分だけいい?』が2時間コースだったね」
新人には意味不明でも、古株は笑えるのです。

また、家族の間だけで通じる変なニックネームも、夫婦の間で交わされる秘密の言葉も、内輪ネタに含まれることでしょう。
ゴッドウィン氏も、自身の大学の同窓会で25年ぶりに再会した友人たちと、すぐに昔の内輪ネタで盛り上がったと述べています。
では、どうして人はこんなにも「内輪ネタ」が好きなのでしょうか?
社会心理学者のバウマイスター氏とリアリー氏の研究(1995年)では、人間には「どこかに所属したい」という根源的な欲求があると述べています。
内輪ネタはその欲求を満たすための有力な手段として機能しているのです。
内輪ネタで笑い、笑わせられるということは、自分が限られたグループの一員であることの証明だからです。
そして仲間と同じ笑いでつながれたとき、人は「ここにいていいんだ」と深く感じることができます。
さらに脳科学的にも、内輪ネタを通じて生まれる共感や笑いは、脳の報酬系を活性化し、ドーパミンの放出を促すことが示唆されています、
このように、内輪ネタには人と人とを結びつける力があります。
そして、その瞬間に生まれる笑いは、共有してきた時間や共通の経験を思い出させ、心理的なつながりと安心感を強く生み出します。
私たちが内輪ネタを好むのもよく理解できますね。
では、こうした内輪ネタの心理的な効果をどのように利用できるでしょうか。
内輪ネタの活用法!上手く使えば最強のコミュニケーションツールになりえる
内輪ネタを上手く活用できるなら、相手との絆をぐっと深めることができます。
では、どうやって内輪ネタを作ることができるでしょうか。

まず、内輪ネタにつながる「小さな共通ネタ」を発見しましょう。
内輪ネタは、何気ない一言やちょっとした失敗から生まれることがよくあります。
例えば、毎朝の朝礼で起こるちょっとした出来事をネタにして「また部長が“気合い入れていこう”3連発してたね」などと共有するなら、内輪ネタの種が生まれるかもしれません。
次に、そのネタを繰り返し使うことで、内輪ネタとして定番のものにできます。
ただしやりすぎは注意です。
内輪ネタは毎日使うものではなく、さりげなく、時折出すからこそ、その威力を発揮するのです。
最後に、内輪ネタの輪を広げることができます。
内輪ネタは時として排他的に働くことがあり、新しくその場に加わった人が「取り残された」と感じてしまう危険があります。
そのため、同じグループに入った新しいメンバーがいるなら、その人を締め出すのではなく、内輪ネタを説明してあげることができます。

では、なかなかリアルな場面で、内輪ネタを活用できそうにない場合はどうでしょうか。
現代において内輪ネタが活躍するのは、なにも対面コミュニケーションに限った話ではありません。
インターネット、特にSNSの世界では、内輪ネタが新たな言語や文化を生み出しているといっても過言ではありません。
ネット上でも内輪ネタを上手く活用するなら、誰かと繋がっている、どこかに所属しているという安心感が得られることでしょう。
もちろん、内輪ネタには注意が必要です。
特定の誰かを笑いの対象とする場合には、それがイジメや差別につながっていないか、相手への配慮を常に忘れないようにすべきです。
それでも上手に活用すれば、内輪ネタは人間関係を強化する最強のコミュニケーションツールになることでしょう。
参考文献
Why We Like Inside Jokes
https://www.psychologytoday.com/us/blog/possibilitizing/202505/why-we-like-inside-jokes
ライター
矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。
編集者
ナゾロジー 編集部