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親になると満足度が下がるかもしれない!それでも親は「意味のある人生」を送ると判明!


「親になると人生の意味が増す」というドイツ・ケルン大学の研究が、ヨーロッパ30カ国の4万人以上を対象に実施されました。結果、親であることは一貫して人生の意味を高めるが、満足度には影響が異なることが示されました。特に若年層や低学歴・単身親では満足度が低下する傾向がありますが、北欧のように育児支援のある国では親の満足度も高いとされます。一方、親であることで得られる「未来志向」「他者志向」「目的意識」は人生の意味を高める要素となります。この研究は、親になることで得られる人生の意味の深まりを示し、少子化進行中に子どもを持つ意義について考える契機となるでしょう。今後、親子関係の質や育児の価値観が人生の意味に与える影響をさらに探る研究が望まれています。

「子どもを持ちたいけど、人生がハードになるのは嫌だ」

そんな迷いを抱く人が多い今の日本。

しかし、ヨーロッパで4万人以上を対象に行われた研究は、「親になると人生の意味が増す」という興味深い結果を示しました。

確かに親になると状況によって一時的に落ち込んだりするものです。

それでも、そんな中で「人生に対する意義」を見出せるとしたら、それは本当に“損”なのでしょうか?

そんな視点から今回の研究を覗いてみましょう。

この研究を行ったのは、ドイツ・ケルン大学(University of Cologne)の研究チームです。

詳細は2025年5月19日付の『Journal of Marriage and Family』誌に掲載されました。

目次

  • 親になることは「幸せ」か?満足度と人生の意味に及ぼす影響を分析
  • 親になると満足度は低下するかもしれない。でも人生の意味は増す

親になることは「幸せ」か?満足度と人生の意味に及ぼす影響を分析

人はなぜ子どもを持つのでしょうか?

少子化が進行し、育児の負担ばかりが取り上げられる現代において、「子どもを持つメリットとは何か?」という問いは、かつてなく現実的な問題となっています。

従来の社会学や経済学の研究では、親になることで「人生の満足度」、つまり日々の幸福感やストレスの少なさがどう変化するかに注目が集まってきました。

過去の多くの研究では、親と非親の間に大きな幸福の差がないか、もしくは親のほうがストレスフルであるという結果が出ていたのです。

一方で、心理学の世界では、子どもを持つことで「人生の意味」が深まるのではないかという仮説が提唱されてきました。

しかし、これまでの研究は小規模・単一国のものであり、代表性に乏しいものでした。

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子供を持つことは、親にとって幸せなのか? / Credit:Canva

このような背景のもと、今回の研究では「親であること」が人生の満足度と人生の意味の両方にどのように影響するかを、ヨーロッパ30カ国・43,721人のデータを用いて調査されました。

データは「欧州社会調査(ESS)」の2006年と2012年から取得され、18歳から49歳までの成人が対象です。

そして「あなたは現在の人生にどの程度満足していますか?」(0〜10点)と、「私は自分の人生における行動に価値があり、有意義だと感じている」(1〜5点)という2つの項目に対する回答を分析しました。

研究チームは、対象者の性別、年齢、教育、パートナーの有無、宗教心、両親の学歴・職業など多様な要因も考慮。

さらに、地域の福祉制度や文化的背景を考慮し、国を6つの文化クラスターに分類して結果を比較しています。

では、結果はどうなったでしょうか。

親になると満足度は低下するかもしれない。でも人生の意味は増す

研究の結果は、多くの人にとってどこか納得できるものかもしれません。

まず、「人生の満足度」については、結果が分かれました。

若年層(18〜29歳)や低学歴・単身の親では、満足度が非親よりも低下する傾向が見られたのです。

特に、福祉制度の乏しい南欧・中東欧の国々ではその傾向が顕著でした。

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支援の少ない環境で子育てする親は満足度が低下する / Credit:Canva

一方で、育児支援の整った北欧では、親である人々の満足度・意味のスコアがともに非親よりも有意に高いという結果が示されました。

この結果が示すのは、親になることで満足度が下がるのは、「日常生活にかかる負担の重さ」や、「時間・お金・サポートといった育児に使える資源の不足」が原因だということです。

特に経済的に余裕がない場合、育児が「喜び」よりも「重荷」として感じられやすくなります。

パートナーとの関係性、年齢、教育なども大きく関わっており、社会的支援がない中で育児に向き合うことは、満足度の低下につながるのです。

これだけを考えると、親になることは「ただただリスクが高いこと」のように思えるかもしれません。

しかし、この研究は親になることの別の側面も示しています。

「人生の意味」に関しては、親である人は一貫して非親よりも高いスコアを示したのです。

この傾向は、年齢・教育・パートナーの有無・国・性別といった全てのグループで共通して観察されました。

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親であることは一貫して「人生の意味」を高めていた / Credit:Canva

なぜ、「人生の意味」はどの親でも一貫して高まるのでしょうか?

それは、親になることが「未来志向」「他者志向」「目的意識」という3つの心理的側面を強く刺激するからです。

子育ては「今この瞬間の快楽」ではなく、「将来のための投資」であり、「自分以外の存在に尽くす営み」です。

その結果、多少のストレスや犠牲があっても、「自分の人生が価値あるものだ」と感じるようになるのです。

この研究は「親であること=人生の意味を深める」という現代では特に見過ごされがちな側面を、データで裏付けた点で意義深いと言えるでしょう。

今後は、親子関係の質や育児の価値観が“人生の意味”にどう影響するかを詳しく調べることが期待されます。

少子化の現代において、「親になる意味」は数字では測れないものかもしれません。

満足感は一時的かもしれませんが、「意味のある人生を送った」という実感はずっと残るものです

親になるという選択も、案外悪くないのかもしれませんよ。

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参考文献

Parents are not happier but have a greater sense of meaning in life, study finds
https://phys.org/news/2025-05-parents-happier-greater-life.html

元論文

Parenthood in Europe: Not More Life Satisfaction, but More Meaning in Life
https://doi.org/10.1111/jomf.13116

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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