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閉鎖されたプールに取り残された「シャチの親子」の映像が話題に


南フランスにある「マリンランド・アンティーブ」の閉鎖が決定した後、シャチの親子「ウィキ」と「ケイヨ」が藻で覆われた狭いプールに取り残された映像が公開されました。法律の変更により海洋哺乳類のショーが禁止された後、彼らの移送先が決まらず、新たな居場所を見つけるのが困難な状況です。動画公開で動物保護団体の注目を集め、SNS上では批判と保護活動の声が高まっています。適切な環境を与えるための方法として「海洋サンクチュアリ」の設立が提唱されており、これには多額の費用がかかるとされていますが、シャチたちの長期的な健康を考慮する上で重要とされています。

南フランスの閉鎖されたマリンパークで、藻だらけのプールに取り残されたシャチの親子の映像が公開され、世界中に波紋を広げています。

映像に映っているのは、24歳の母シャチ「ウィキ(Wikie)」と、その11歳の息子「ケイヨ(Keijo)」

本来なら広大な海を泳ぐべき彼らが、人工の狭いタンクの中で泳ぎ続ける姿に、多くの人が胸を痛めています。

なぜ彼らは狭いプールの中に置き去りにされているのでしょうか?

目次

  • なぜプールに置き去りに?
  • なぜシャチ親子の移送は進まないのか

なぜプールに置き去りに?

このシャチの親子はフランス南部・リヴィエラにある「マリンランド・アンティーブ」という海洋施設で飼育され、かつてはショーを行ったりして活躍していました。

しかしフランスでは動物愛護の観点から、2021年に海洋哺乳類を使ったショーが法的に禁止され、同施設も来場者数の減少とともに2025年1月に閉鎖

ところが、施設に取り残されたシャチの親子の移送先が決まらず、プール内での生活を余儀なくされているのです。

そして今月初め、動物保護NGO「TideBreakers」がドローンで撮影した映像をSNSに投稿したことが、事態の転機となりました。

それがこちらです。

映像には、緑色の藻が繁茂したタンクの中を、ウィキとケイヨがぐるぐると回遊している様子が収められています。

これに対しマリンランドの運営側は「藻は春に自然発生するもので、ろ過された海水に含まれる藻類の胞子が原因。定期的にブラッシングして除去しており、動物に害はない」と説明しています。

さらに「施設には現在も約50人のスタッフが勤務しており、シャチとイルカの健康管理に努めている」と述べています。

しかしこの説明に納得しない声は多く、SNS上では「これは動物虐待ではないか」「一刻も早く移送すべきだ」という意見が相次ぎました。

映像公開後には、施設職員への殺害予告を含む脅迫まで寄せられたといい、波紋はさらに広がっています。

かつて26年間マリンランドを運営していたマイク・リデル氏も「これは想定内の藻の繁殖だ」と映像に理解を示しましたが、それでも「こうした施設に長期間シャチを閉じ込めておくべきではない」という意見には同意を示しています。

なぜシャチ親子の移送は進まないのか

実はマリンランドの運営側は、すでに複数回、シャチ親子と同施設にいる12頭のイルカたちの移送を試みています。

2024年2月には、スペイン国内の2つの施設に移送する申請を提出しましたが、スペイン政府は「施設がシャチやイルカの保護に適していない」としてこれを拒否しました。

続いて日本の施設への移送も検討されましたが、今度はフランス政府が「ヨーロッパ内で、より高い福祉基準を満たす施設でなければならない」として許可を出さず、話は立ち消えに。

最終的に、唯一基準を満たすとされたスペイン・テネリフェ島の施設への移送案も、スペイン側が「設備が要件を満たしていない」と判断し、2025年4月に拒否されました。

このように、法制度や国ごとの基準の違いが障壁となり、シャチたちはいまだ適切な移送先を見つけられないまま閉鎖された施設にとどまっているのです。

複数のNGO、たとえば「One Voice」や「シー・シェパード」などは、シャチの健康状態を確認するため専門家を現地に派遣する許可を求めていますが、これもまだ実現していません。

かといって、彼らを野生の海に放すことはできません。

この親子はいずれも人間の飼育下で誕生し、野生環境には慣れていないので、弱肉強食の自然界ではとても生きていけないと考えられているのです。

では、ウィキとケイヨの未来に本当に必要な解決策とは何なのでしょうか?

フランスの環境省や動物保護団体が一致して挙げているのが「海洋サンクチュアリ」の設立です。

これは完全な野生環境ではなく、ある程度人間の管理下にありながらも、より自然に近い広い海域で動物たちを保護する場所のこと。

本来の生息地に近い環境で、半野生的な生活を送らせることで、ストレスや健康被害を軽減しながら長期的に保護するという考え方です。

しかしマイク・リデル氏によれば、そのようなサンクチュアリを維持するには、年間で200万〜300万ユーロ(約3.3億〜5億円)の費用がかかるとされています。

ただ、その投資には十分な意義があります。ウィキとケイヨは適切な環境であれば今後も数十年にわたって生き続けられると考えられているからです。

今回の映像がきっかけとなり、世界がふたたびこのシャチの親子に目を向けています。

この関心が一過性のものではなく、持続的な保護活動へとつながっていくことが、彼らにとっての「本当の解放」につながるかもしれません。

全ての画像を見る

参考文献

Video of Orcas Stranded in Algae-Infested Pools Triggers Fresh Concerns
https://www.sciencealert.com/video-of-orcas-stranded-in-algae-infested-pools-triggers-fresh-concerns

ライター

千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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