「健康のためにランニングを始めたけれど、長く走れない」「すぐに膝や足首が痛くなって困る」
そう感じたことはありませんか?
そんな方におすすめの走り方があります。
それが「ジェフィング(Jeffing)」と呼ばれるランニング方法です。
これは「走る」と「歩く」を組み合わせたもので、ケガのリスクを大幅に減らしながら、初心者でも長距離を簡単に走れるようになることで注目されています。
では、ジェフィングはどのように誕生し、どんな効果が期待できるのでしょうか?
目次
- 初心者でもできる「ジェフィング」のやり方とは?
- ジェフィングのメリットとは?
初心者でもできる「ジェフィング」のやり方とは?
ジェフィングは1970年代、アメリカの元オリンピックランナーであり、コーチでもあったジェフ・ギャロウェイ(Jeff Galloway)氏によって考案されました。
当時ギャロウェイ氏は、初心者ランナーの指導を任されていましたが、通常のランニングだけでは多くの人が途中でケガや疲労によって離脱してしまう現実に直面していました。
そこで彼が着目したのが「走ること」と「歩くこと」を交互に繰り返すというシンプルながら革命的な方法でした。
そしてギャロウェイ氏が指導したグループでは、10週間のプログラムの末に全員が5kmまたは10kmのレースを完走するという成果をあげたのです。
この成功例は瞬く間に広まり、ジェフィングは持久力強化の効果がありながら、初心者でも実践できる安全なトレーニング法として確立されました。

具体的な方法はとてもシンプルです。
最初は1~2分のランニングに対し、やや長めのウォーキング(4〜5分)を組み合わせ、合計で20分以上続けることを目安にします。
慣れてきたらランニングの時間を徐々に増やし、ウォーキングの時間を減らしていきます。
ギャロウェイ氏は「30秒走って30秒歩く」から始めることを提案しています。
このサイクルに慣れたら「45秒走って30秒歩く」といったふうに、少しずつ自分のペースに合わせて調整します。
この方法はスウェーデン発祥の「ファルトレク(fartlek:速い走りとゆっくりした走りを交互に繰り返す)」に似ていますが、ファルトレクがスピード向上を目的としているのに対し、ジェフィングはあくまで持久力の向上と疲労管理を重視しています。
つまり、初心者向きのランニング方法なのです。
またギャロウェイ氏は「ハフ・アンド・パフ(息切れ)ルール」という独自の指標も設けるといいと指摘します。
これは「自分の呼吸が荒く聞こえるときは無理をせず、時間を守らなくても良いので、すぐにウォーキングに切り替える」というルールです。
この考え方が、ジェフィングの安全性と実践しやすさにつながっています。
ジェフィングのメリットとは?
ジェフィングの最大の魅力は、持久力を高めながらもケガを予防できることです。
連続して走る場合と違い、エネルギーが一気に枯渇せず、関節や筋肉への負担が大きく減ります。
そのため初心者はもちろん、ケガや病気からの復帰を目指すランナー、さらにはマラソンなどの長距離競技に挑むベテランランナーにも広く活用されています。
2016年の研究では、ジェフィングを実施したランナーたちが、全行程を走り続けたランナーとほぼ同じタイムでマラソンを完走したことが報告されています。
しかもジェフィング組の方が筋肉痛や全身疲労感が少なかったという結果が得られました。

またジェフィングは、ランナーが自分の体調やコンディションに応じて「走る→歩く」のサイクルを自由にカスタマイズできる点も大きな特徴です。
ストップウォッチを使って30秒走・30秒歩のサイクルを守る人もいれば、感覚に頼って「少し疲れてきたら歩く」と柔軟に切り替える人もいます。
これによって精神的なストレスも軽減され、「今日もトレーニングを続けよう」というモチベーション維持にもつながるのです。
さらに初心者ランナーが「自分はまだ本物のランナーではないのでは?」と感じてしまう心理的な壁を取り払ってくれる点も評価されています。
ジェフィングでは「どんなペースでも前に進み続けること」が最も大切とされているため、周囲と比較して焦ることなく、自分の体調や目標に合わせた走り方ができます。
「ランニングに挑戦したことがあるが、すぐに挫折してしまう」という方は、一度ジェフィングを試してみるといいかもしれません。
参考文献
Here’s Why You Should Try ‘Jeffing’to Run Longer And Farther
https://www.sciencealert.com/heres-why-you-should-try-jeffing-to-run-longer-and-farther
ライター
千野 真吾: 生物学に興味のあるWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部