「カロリーが高く、食べれば太る」というのが常識のナッツ類ですが、そのナッツに“痩せる力”が秘められていると分かりました。
筑波大学に所属する礒田博子氏ら研究チームが、カシューナッツの3つの部位、ナッツ、果肉部位(果托)、そして殻の抽出成分が、脂肪細胞の成長を抑制すると報告したのです。
「脂肪を減らすナッツ」という発見は、単なる健康食品の枠を超えて、食の未来を変えるかもしれません。
また、これまで廃棄されていた部位を有効活用できる可能性もあります。
研究の詳細は、2025年1月10日付の学術誌『Scientific Reports』に掲載されました。
目次
- カシューナッツの「残り物」の効果を検証
- カシューナッツの捨てられていた部分に脂肪蓄積の抑制効果があると判明
カシューナッツの「残り物」の効果を検証
カシューナッツは、世界中でおつまみやお菓子に用いられる人気のあるナッツです。
しかし、その構造を知ると、実は「ナッツ」だけが主役ではないことに気づきます。
カシューナッツはカシューナットノキという木から得られますが、その木になる実は、ナッツ、カシューアップル、そして殻の3つの部位で構成されています。

ナッツ(CK)は通常私たちが食べる部分で、硬い殻の中にある種子です。
カシューアップル(DA)はナッツの上にあるカラフルでジューシーな偽果(果托)で、実際には果実全体の90%以上を占めています。
殻つまりシェル(SH)はナッツを包む外殻で、通常は捨てられますが、実は強力な植物化学成分を含んでいます。
世界では大量のカシューナッツが生産されていますが、その副産物であるカシューアップルやシェルのほとんどが廃棄されています。
研究チームは、この大量に廃棄されている部位に着目しました。

実は、これまでに行われた様々な研究が、カシューナッツにおけるカシュ―アップル、シェル、ナッツが人間や動物における脂肪蓄積能力を減らす可能性を示しています。
しかし、その詳細や脂肪細胞の分化に対してどのような影響が及ぶかは調査されていませんでした。
脂肪細胞の分化とは、前駆脂肪細胞と呼ばれる未熟な細胞が、脂肪を蓄積する能力を持つ成熟した脂肪細胞へと変化するプロセスのことです。
この分化の過程は、肥満の進行や代謝疾患と密接に関係しており、脂肪組織の増加に直結します。
そこで今回、礒田博子氏ら研究チームは、肥満の原因である脂肪細胞の形成と脂肪蓄積を抑える可能性があるかどうかを、マウス由来の前駆脂肪細胞を使った実験で調査しました。
カシューナッツの捨てられていた部分に脂肪蓄積の抑制効果があると判明

研究チームは、ベトナム産のナッツ、ブルキナファソ産のアップル、そして日本企業から提供されたシェルを、それぞれ70%エタノールで抽出しました。
次に、マウス由来の細胞を培養し、インスリンなどを用いて脂肪細胞への分化を誘導しました。
その後、脂肪分化中の細胞にそれぞれの抽出物を添加し、脂肪滴の量や脂肪形成関連遺伝子およびタンパク質の発現量を測定しました。
そして実験の結果は、驚くべきものでした。
まず、カシューシェルが、脂肪細胞の分化を顕著に阻害しました。
脂肪細胞の形成に不可欠な遺伝子と、それに続く脂肪合成遺伝子の発現が大幅に低下しました。
脂肪滴(細胞内の脂質を貯蔵・分解してエネルギーを産生したり、脂質を合成したりする)の働きも著しく抑えられ、これは殻に多く含まれるフェノール系化合物(アナカルジック酸やカルドールなど)の作用が関係していると考えられます。

また、カシューアップルも同じように、脂肪蓄積をいくらか抑制する効果がありました。
そして最も興味深いのは、カシューナッツが「アディポネクチン」というタンパク質のレベルを大幅に増加させたという事実です。
このタンパク質には体がインスリンをより効果的に使用し、脂肪をエネルギーとして燃焼させるのを助ける働きがあります。
この増加は、カシューナッツが脂肪を「減らす」というより、「質のよい脂肪細胞を作る」方向に働いている可能性を示しています。
この研究は、カシューナッツが脂肪と戦う味方である可能性を示した点で画期的です。
特に、普段は廃棄されるカシューアップルやシェルに脂肪細胞の成長を抑制する効果があることは、サステナブルな食材利用という意味でも大きな価値があります。
将来的には、これらの部位から抽出した成分が、サプリメントや機能性食品として活用される日が来るかもしれません。
参考文献
Health Benefits of Cashew Nut Byproducts: Inhibiting Fat Accumulation
https://www.tsukuba.ac.jp/en/research-news/20250307143000.html
Cashew plant leftovers are very good at inhibiting fat cell growth
https://newatlas.com/disease/obesity/cashew-plant-inhibition-adipocyte-lipid-accumulation/
元論文
Inhibitory effects of cashew Anacardium occidentale L. kernel, apple, and shell extracts on lipid accumulation and adipogenesis in 3T3-L1 adipocytes
https://doi.org/10.1038/s41598-025-85727-3
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部