驚くべき魚の行動が新たに発見されました。
英エディンバラ大学(University of Edinburgh)の最新研究で、「ブルーランナー」と呼ばれる肉食性の魚が、ある種のサメの背後に身を隠し、まるで忍者のように獲物に近づいて狩りを仕掛けることが判明したのです。
これにより、獲物に気づかれないように獲物に接近して、狩りの成功率が高まっていました。
研究の詳細は2025年3月4日付で科学雑誌『Ecology』に掲載されています。
目次
- サメにぴったりと付き従う魚を発見
- サメを盾にすると狩りの成功率がUP!
サメにぴったりと付き従う魚を発見
一見すると、サメと魚は「食う・食われる」の関係に思えるかもしれません。
しかし海の世界では、サメと魚の意外な共生関係がしばしば見られます。
たとえば、一部の魚は大型のサメに付き添って泳ぎ、鮫肌に体をこすりつけて寄生虫を取ったり、捕食者から身を守ったりすることが知られているのです。
逆にサメの方も、小型魚に体表についた寄生虫や死んだ皮膚を食べてもらうメリットがあります。
今回注目されたのは「ブルーランナー(学名:Caranx crysos)」と呼ばれる小型の肉食魚です。
ブルーランナーは最大全長70センチの中型魚で、小さな魚を捕食する肉食性で知られています。
研究者の報告によると、彼らは地中海に生息する「メジロザメ(学名:Carcharhinus plumbeus)」の後ろにぴたりと張り付き、その影に隠れることで自らの姿をカモフラージュしていることがわかったのです。

この様子は、イタリア・ランピオーネ島周辺の海で撮影された水中映像から確認されました。
研究者たちはダイバーと遠隔操作の無人探査機を使って観察を行い、合計34回にもわたってこの戦略が使われていることを記録しました。
特に興味深いのは、ブルーランナーが普段は小さな群れで狩りをするにもかかわらず、この場合は単独でサメに付き従い、獲物に高速で突進していた点です。
これまで、魚がサメを盾にして奇襲攻撃を仕掛ける行動は観察されたことがありませんでした。
サメの背後に身を隠すことに、どれくらいの効果があるのでしょうか?
サメを盾にすると狩りの成功率がUP!
ブルーランナーはなぜ、わざわざサメの背後に隠れてまで単独行動を選んだのでしょうか?
研究者たちは、この戦術が非常に効率的であることを突き止めました。
というのも、サメの影に隠れていた場合、獲物であるスズメダイなどの小魚はブルーランナーの接近に気づく確率がわずか10%程度だったのに対し、群れで狩りをした場合は95%以上の確率で発見され、防御陣形をとられていたのです。
また、サメの後ろを泳ぐことで水の抵抗が減り、エネルギーを節約できる可能性もあります。
そして、何よりもサメという巨大な存在が、自分を狙う捕食者からの“天然の盾”になってくれるという利点もあるのです。
このような行動は「生態系における相互作用の多様性」を示す貴重な例であり、環境変化がどのように生物の行動を変えるかを理解する手がかりにもなります。

このように、サメは自分より小さな魚であれば何でもかんでも食べるわけではありませんし、小魚の方もサメを見たら常に逃げるわけではありません。
中には、メジロザメを盾にするブルーランナーのように、一見するとヤバそうな捕食者に近づいて、その威光を利用する種もいるのです。
参考文献
Fish use sharks as shields to ambush prey, study reveals
https://www.ed.ac.uk/news/fish-use-sharks-as-shields-to-ambush-prey-study-reveals#:~:text=Scientists%20have%20revealed%20for%20the,prey%20by%20hiding%20behind%20sharks.&text=The%20previously%20unknown%20behaviour%20was,sharks%20in%20the%20Mediterranean%20Sea.
元論文
To see and not be seen: Carangids hide behind sharks to prey on fish
https://doi.org/10.1002/ecy.70028
ライター
千野 真吾: 生物学出身のWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部