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【動物界のフェンシング!?】キリンの“首バトル”は礼儀とフェアプレイを重視していた


キリンのオスたちは繁殖期に交尾権を巡って「ネッキング」と呼ばれる儀式的な戦いをします。ネッキングは、オスが首を鞭のように振り回し相手に打ち付ける行動で、フェアプレイと優雅さが特徴です。この戦いには礼儀が重視され、始める前に首を交差させる儀式を行い、勝負中も相手の好みの側に配慮するなど、常に公平性が尊重されます。バランスを崩した際には追撃を控え、戦いの終わりには勝者が誇示しないのが通例です。キリンのネッキングは、ただの力比べにとどまらず、彼らの品位と社会的なやり取りを反映した行動なのです。

動物の戦いといえば、牙や爪を剥き出しにした血みどろのバトルを思い浮かべるかもしれません。


しかし、アフリカのサバンナに暮らすキリンたちは、なんと優雅で儀式的な戦いを繰り広げているのです。


その戦いはまるでフェンシングや剣道のように、礼儀と様式美にあふれたもの。


これは「ネッキング(necking)」と呼ばれる行動であり、オス同士が首を鞭のように振り回し、互いの胴体に打ち付け合います。


このキリンたちの不思議な戦いの作法について、動物行動学者や野生動物研究者たちの観察を紹介します。




目次



  • 首で戦うキリンたちの「ネッキング」とは
  • キリンたちはフェアプレイを好む

首で戦うキリンたちの「ネッキング」とは


キリンは地上で最も背の高い動物であり、成獣の平均体高は4〜6メートルに達します。


その中でも際立って目立つのが約2〜2.4メートルにもなる長い首です。


この長い首は高所の葉を食べるためのものだと考えられてますが、実は、もう一つの重要な役割を持っています。


それが「武器としての利用」です。


オスのキリンは、繁殖期になると交尾権をかけて他のオスと戦います。


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低強度のネッキング / Credit:Wikipedia Commons

その際に行われるのが「ネッキング(necking)」と呼ばれる行動です。


これは一方のキリンが首を大きく振り、首や頭部を鞭のようにしならせて相手の胴体や首に叩きつけるという戦いです。


低強度のネッキングでは、体をこすり合わせたり、寄りかかったりして、「どちらが直立した姿勢を保てるか」といった押し相撲のような勝負を行います。


一方、高強度のネッキングでは首を大きく振り回し、激しい打撃戦に発展する場合があります。


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高強度のネッキング。首をぶつけ合う激しい戦い / Credit:Kenya Wild Parks(YouTube)_What Does it Mean When Giraffes are Necking?(2024)

重くて硬い頭蓋骨を振り回す攻撃は強力で、相手を気絶させるほどの威力を発揮することもあります。


また、稀ではあるもののこのネッキングによって首の骨が折れて死んでしまうオスもいます。


このような情報を聞くと、キリンのネッキングも「肉食動物たちが行う血みどろの戦い」と同じように思えるかもしれません。


しかし動物学者たちによると、キリンたちの戦いは単なる暴力ではなく、礼儀と様式美に溢れたものだというのです。


なぜそう言えるのでしょうか。


キリンたちはフェアプレイを好む


キリンたちのネッキングは、剣道やフェンシングのような礼儀を重んじる戦いです


まず、キリンたちは戦いの前に首を交差させるような穏やかな接触を交わし、「戦う意思があるかどうか」を確認する“儀式”を行うことが多いと言われています。


まるでスポーツの前の握手や礼のようです。


また動物学者たちは、キリンたちが戦いの最中も、常に相手に配慮を示し、公平性を大事にしていることを発見しました。


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キリンたちは互いの「好みの側」を尊重し、戦う向きを決める / Credit:Kenya Wild Parks(YouTube)_What Does it Mean When Giraffes are Necking?(2024)

例えばキリンたちは人間でいう「左利き」か「右利き」といった利き手と似た「好みの側」をもっています。


そしてマンチェスター大学(UoM)のジェシカ・グランワイラー氏は、「2頭ともあらゆるやり取りにおいて、お互いの好みの側を尊重していた」と述べています。


加えて注目すべき点として、「ネッキングを行うキリンたちはフェアプレイを好む」といったことも挙げられます。


例えば、ネッキングにより片方のキリンがバランスを崩した時、もう片方はここぞとばかりに追撃しません。


バランスを崩したキリンが正しい体勢に戻るの待つために、有利だったキリンは少しの間試合を止めるのです。


まるで人間たちが審判を伴ったルールありの試合を行う時のように「規範を遵守する態度」が存在しているのです。


これほど礼儀を重んじる戦いが行われることは、野生動物の中では珍しいことです。


また戦いの終わりも優雅です。


片方のオスがネッキングをやめてその場から離れると、それが負けを認めたことになり、試合はあっさりと終了します。


勝った方が勝利を誇示したり、負けたキリンを追いかけまわしたりすることもありません。


キリンたちは戦いの始まりから終わりまで、フェアプレイを貫くことができるのです。


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キリンたちはフェアプレイを好む / Credit:Canva

ちなみに研究では、若いキリンは経験を積むために軽めのネッキングを繰り返すことが確認されており、これは社会性の発達にも関係していると考えられています。


キリンたちのネッキングは単なる喧嘩ではなく、社交、力の見せ合い、メスへのアピールといった複雑な目的を持った行動です。


そしてその全てが、驚くほどにエレガントに行われています。


私たち人間も、日常の中で他者と衝突したり、意見をぶつけ合ったりすることがあります。


優劣を決めなければいけない時もあるでしょう。


そんなとき、キリンのように“品位を保ちながら自分を主張する”という態度を思い出せたら、争いの意味も変わってくるはずです。


キリンたちの首の一振りが教えてくれるのは、「強さとは、優しさと美しさを兼ね備えたものだ」という真理なのかもしれません。


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参考文献

The etiquette of a giraffe fight
https://thekidshouldseethis.com/post/the-etiquette-of-a-giraffe-fight

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部

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