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イヤホン不要!超音波ビームの交差で作る「音のプライベートスポット」


ペンシルベニア州立大学の研究チームは、超音波を利用して特定エリア内だけに音を届ける「音のプライベートスポット」技術を開発しました。この技術は、超音波ビームを交差させ、目に見えない音の「泡」を形成することで、泡の中の人だけが音を聴ける仕組みです。この技術により、美術館やオフィス、車内などで個別の音楽や音声案内を提供することが可能になります。例えば、美術館では特定の展示物の前で案内音声を流し、車内では各座席で異なる音楽や音声を聴くことができます。この技術は、耳を塞がずに周囲に迷惑をかけずに音を楽しむ新たな手段となる可能性があります。

イヤホンやヘッドホンを使うのが煩わしいと感じたことはありませんか?

「音楽を楽しみたいけど、耳を塞ぎたくない」「他人に迷惑をかけたくない」

そんな悩みを解決するかもしれない新技術が誕生しました。

ペンシルベニア州立大学(Pennsylvania State University)の研究チームが、超音波を使って音のプライベートスポットを作り出す新技術を発表しました。

この技術を応用すれば、ヘッドホンなしで特定のエリアだけに音を届けたり、公共の場でのプライベートな音声案内が可能になるかもしれません。

この研究の詳細は、2024年3月17日付の『Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)』誌に掲載されました。

目次

  • 超音波を交差させて「音のプライベート空間」を作ることに成功
  • 美術館やオフィス、車内でもプライベートな音楽・音声空間が得られる

超音波を交差させて「音のプライベート空間」を作ることに成功

私たちは普段、スピーカーやヘッドホンを使って音を聴きます。

しかし、スピーカーを使えば周囲の人にも聞こえてしまい、ヘッドホンを使えば耳をふさぐことになります。

私たちの「音を聴く」という行為は、これまでずっとこのルールに制限されてきました。

耳をふさがずに、しかも、周囲の人には漏れることのない音楽体験を可能にすることはできるでしょうか。

今回、研究者たちは、超音波を利用して「オーディブル・エンクレーブ(audible enclaves)」と呼ばれる「音のプライベートスポット」を作ることに成功しました。

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超音波ビームを交差させて特定の人にだけ音が聞こえるスポットをつくる / Credit: Heyonu Heo(Pennsylvania State University)_‘Audible enclaves’ could enable private listening without headphones(2025, EurekAlert)

これは、目に見えない小さな音の「泡」のようであり、その中にいる人だけが音を聴くことができるというものです。

では、どのようにこれを可能にしているのでしょうか。

研究者たちは、2本の超音波ビームを放射し、それらを適切な交差点で干渉させることで、特定のエリアでのみ周波数変調が起こり、可聴範囲の音を生成しているのです。

どちらの超音波ビームも、それ自体では音を聴くことはできません。

ビームが交差して初めて可聴音が発生するので、スポット外の人には音が聴こえないのです。

またこのビームは人間の頭などの障害物を回避して、指定された交差点に到達できるため、どのような場所でも「音のプライベートスポット」を生成することが可能だと言えます。

美術館やオフィス、車内でもプライベートな音楽・音声空間が得られる

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人形を使った実験の様子 / Credit: Poornima Tomy(Pennsylvania State University)_‘Audible enclaves’ could enable private listening without headphones(2025, EurekAlert)

研究チームが行った実験では、周波数40kHzと39.5kHzの超音波ビームを交差させて、人形の頭の前方数センチに500Hz「音のプライベートスポット」を作ることに成功しました。

またビームの1つの周波数を変えることで、可聴範囲の125Hz~4kHzまでの6オクターブにわたる音声を生成できることも示しました。

この新しい技術により、現時点では、対象から約1メートル離れた場所に音を送り、60dB程度の音量で音楽や音声を再生することができます。

研究チームは、「超音波の強度を上げるなら、距離と音量の両方をもっと大きくできるかもしれない」と述べています。

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車内でそれぞれが異なる音声や音楽を聴くことが可能になるかも / Credit:Canva,ナゾロジー編集

もし将来、この技術が実用化されるなら、さまざまな分野で活用するでしょう。

例えば、美術館や博物館では、特定の展示物の前に立つと、その説明音声が聞こえるシステムを作ることができます。

訪問者が展示の前に立ったときだけ、ピンポイントでガイド音声を届けることができるため、他の来場者には邪魔になりません。

また、オフィスでは、特定のデスクだけに音声が届く仕組みを取り入れることで、個人の集中力を高めることができるでしょう。

さらに、車内での応用も考えられます。

例えば、「運転席ではナビの音声案内を、助手席では音楽を、後部座席では映画の音声をそれぞれ独立して流す」なんてことも可能になるかもしれません。

イヤホンやヘッドホンを使わずに個人だけの音楽空間を楽しめる時が来るのを楽しみに待ちたいものです。

全ての画像を見る

参考文献

‘Audible enclaves’ could enable private listening without headphones
https://www.eurekalert.org/news-releases/1076892

Ultrasonic Beams Create Private Sound Pockets The technology could be used to create personalized and secure “audible enclave”
https://spectrum.ieee.org/ultrasound-tech

元論文

Audible enclaves crafted by nonlinear self-bending ultrasonic beams
https://doi.org/10.1073/pnas.2408975122

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部

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