地球は長い歴史の中で何度も隕石の衝突を受けており、これまでに見つかっている最古のクレーターは22億年前のものでした。
しかし、この記録が新たに塗り替えられたようです。
豪カーティン大学(Curtin University)の研究チームはこのほど、西オーストラリア州・ピルバラで、約35億年前に遡る世界最古のクレーターを発見したと発表しました。
この発見は、隕石衝突が地球の環境や生命の進化に与えた影響を理解する上で、非常に重要な意味を持ちます。
研究の詳細は2025年3月6日付で科学雑誌『Nature Communications』に掲載されました。
目次
- 地球最古の衝突クレーターとは?
- 約35億年前の「世界最古のクレーター」を発見
地球最古の衝突クレーターとは?

これまで、地球における最古の隕石衝突クレーターとして知られていたのは、西オーストラリア州にあるヤラババ・クレーター(Yarrabubba crater)でした。
このクレーターは直径約70キロに達し、今から22億2900万年前の隕石衝突で形成されたと考えられています。
では、それ以前の時代には、隕石の衝突はなかったのでしょうか?
実際には、地球の形成期(約45億年前)には、証拠こそ見つかっていないものの、隕石衝突が頻繁に起こっていたと考えられています。
月の表面には無数のクレーターが残っており、それらの多くは40億年以上前に形成されたものです。
地球も同じように多くの衝突を受けたはずですが、地球の表面はプレートの動きや風化、侵食によって、古いクレーターの多くが失われてしまったのです。
しかし今回、オーストラリア西部のピルバラ地域で、地球最古となる約35億年前の隕石衝突の証拠が発見されました。
これは地球の歴史を大きく塗り替える可能性を秘めた発見なのです。
約35億年前の「世界最古のクレーター」を発見
研究チームは、ピルバラ地域にあるノースポール・ドームという地層を詳細に調査しました。
特に注目したのは「シャッターコーン(shatter cone)」と呼ばれる特殊な岩の形状です。
シャッターコーンは、隕石が地表に衝突した際に発生する極端な圧力によってのみ形成される特徴的な岩石構造で、隕石衝突の決定的な証拠とされています。
さらに今回見つかったシャッターコーンには、「スフェルール」と呼ばれる微小な球状構造も含まれていました。
スフェルールは、隕石衝突の際に岩石が溶けて空中に飛び散り、急速に冷却されて固まることで形成されるものです。
そしてチームの詳細な分析により、新たに見つかったこれらの証拠は、約34.7億年前に時速3万6000キロの速度で隕石が衝突し、直径約100キロに達するクレーターを形成したことを示していると結論づけられました。
これはヤラババ・クレーターを10億年以上も遡る世界最古の記録となります。

これまでの研究では、隕石衝突が大陸の形成や、生命の誕生および進化に関与した可能性が指摘されてきました。
特に、巨大隕石が地球に衝突することで、
・地殻が押し下げられたり、マグマが上昇したりして、大陸の基盤が形成された
・隕石衝突によって生じた熱水環境が、生命誕生の場になった
といった説が提唱されています。
ただ、これらの仮説を裏付ける証拠はほとんどなく、特に太古代(約40億年前~25億年前)の隕石衝突に関する物的証拠は見つかっていませんでした。
しかし新たに見つかった世界最古のクレーターは、隕石衝突が太古代における大陸の形成や生命の進化に果たした役割をより深く理解するための貴重な情報源となります。
今後、ピルバラ地域の他の場所でも、同様の隕石衝突の痕跡が見つかる可能性があり、さらに古いクレーターの発見も期待されています。
約35億年前、地球に落下した隕石は単なる自然災害に留まらず、大陸形成や生命進化の引き金になったのかもしれません。
参考文献
Earth’s oldest meteorite crater found in Australia
https://www.popsci.com/science/oldest-crater-on-earth/
World’s oldest impact crater found, rewriting Earth’s ancient history
https://www.eurekalert.org/news-releases/1075975
元論文
A Paleoarchaean impact crater in the Pilbara Craton, Western Australia
https://doi.org/10.1038/s41467-025-57558-3
ライター
千野 真吾: 生物学出身のWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。
編集者
ナゾロジー 編集部