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見る角度で表情が変わる「2400年前の人形」を発見!


ワルシャワ大学の研究チームがエルサルバドル西部のサン・イシドロ遺跡で、約2400年前の陶製人形を発見しました。これらの人形は見る角度によって表情が変わるという特異なデザインが施されており、怒っている、微笑んでいる、怯えているなどと見えるよう工夫されています。考古学者は、これらの人形が宗教儀式や演出に用いられた可能性を指摘しており、特に可動式の頭部を持つものは「人形劇」に使われたと考えています。この発見は、エルサルバドルが広範な文化ネットワークに属していたことを示唆し、古代メソアメリカ文化の高度な芸術性と交流を明らかにしています。

中央アメリカ・エルサルバドルの古代遺跡で、驚くべき陶製の人形が発見されました。

なんと、この人形は見る角度によって表情が変わるというのです。

この発見を報告したのは、ポーランド・ワルシャワ大学(University of Warsaw)の研究チームです。

同チームはエルサルバドル西部のサン・イシドロ遺跡で、約2400年前の陶製人形を5体発掘しました。

一体どのような人形だったのでしょうか?

研究の詳細は2025年3月5日付で学術誌『Antiquity』に掲載されています。

目次

  • 見る角度で表情が変わる人形
  • 人形を作った目的とは?

見る角度で表情が変わる人形

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人形が見つかった遺跡の位置/ Credit: Jan Szymański et Gabriela Prejs., Antiquity(2025)

古代の人々が作った人形と聞くと、どんなものを思い浮かべるでしょうか。

素朴な形をしたお守りのようなもの?

あるいは、神々や祖先を象った彫像のようなもの?

しかし今回発見されたエルサルバドルの陶製人形は、これまでにあまり見たことのないような特異な特徴を持っています。

それは「見る角度によって表情が変わる」ということです。

研究チームによると、これらの人形を目の高さから見ると「怒っている」ように見え、上から見ると「微笑んでいる」ように見え、下から見ると「怯えている」ように見えるデザインが施されていたのです。

これは単なる偶然ではなく、意図的にデザインされたものだと考えられています。

なぜ、古代の人々はこのような人形を作ったのでしょうか?

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5体の人形/ Credit: Jan Szymański et Gabriela Prejs., Antiquity(2025)

エルサルバドルの遺跡と「ボリナス型人形」

この人形が発掘されたのは、エルサルバドル西部のサン・イシドロ遺跡

ここは、紀元前1000年頃から紀元後250年頃にかけて栄えた「前古典期」の都市遺跡のひとつです。

この遺跡で見つかった人形は「ボリナス型人形(Bolinas-type figurines)」と呼ばれるタイプのもの。

これまで、グアテマラの遺跡で類似の人形が見つかっていましたが、エルサルバドルで発掘されたのは今回が初めてです。

この発見により、当時のエルサルバドルがメソアメリカの広範な文化圏とつながっていたことが示唆されています。

また、これまで考えられていたよりも高度な芸術性と意図的なデザインが施されていたことも明らかになりました。

では、これらの人形は何に使われていたのでしょうか?

人形を作った目的とは?

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可動式の頭部/ Credit: Jan Szymański et Gabriela Prejs., Antiquity(2025)

人形の表情が変化するという特性は、単なる遊び心から生まれたものでしょうか?

それとも、何か宗教的な意味があったのでしょうか?

研究チームは、この人形が儀式に使用されていた可能性が高いと考えています。

特に、頭部が可動する仕組みを持つ3体の人形は「人形劇」「儀式の演出」に用いられた可能性があります。

考古学的な調査では、人形とともに翡翠のペンダントや供物の器が発見されているため、何らかの宗教儀式の一部だったのではないかと推測されています。

また人形のうち1体は、他の人形の空洞の胴体パーツとぴったり合う構造になっていたことから、「誕生の儀式」を再現していたのではないかという仮説もあります。

このように人形は単なる飾りではなく、古代の信仰や儀礼に深く関わる重要な役割を持っていた可能性があるのです。

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胴体にピッタリはまるように。誕生の儀式の再現か/ Credit: Jan Szymański et Gabriela Prejs., Antiquity(2025)

今回の発見は、エルサルバドルの古代文化についての新たな視点を提供しました。

従来、エルサルバドルはメソアメリカの中心地(グアテマラやメキシコ)とは異なり、文化的に孤立していたと考えられていました。

しかし、この陶製人形のスタイルや材料は、グアテマラやコスタリカの遺跡で見つかったものと似ており、広範な交易ネットワークの存在を示しています。

つまり、エルサルバドルの古代社会もまた、周辺の国々と文化を共有し、交流していた可能性が高いのです。

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見つかった人形/ Credit: Jan Szymański et Gabriela Prejs., Antiquity(2025)

エルサルバドルの遺跡で発見された表情が変わる陶製人形は、2400年前の人々が持っていた高度な芸術的センスや、宗教儀礼における役割を示唆する重要な発見でした。

さらに、この発見により、エルサルバドルがメソアメリカの文化的ネットワークの一部であり、周辺地域と深く関わっていたことも明らかになりました。

もしかすると、古代の人々も「人形劇」を楽しみ、私たちと同じように物語を語ることを大切にしていたのかもしれません。

全ての画像を見る

参考文献

2,400-year-old puppets with ‘dramatic facial expression’discovered atop pyramid in El Salvador
https://www.livescience.com/archaeology/2-400-year-old-puppets-with-dramatic-facial-expression-discovered-atop-pyramid-in-el-salvador

Pre-Columbian ‘puppets’indicate ritual connections across Central America
https://phys.org/news/2025-02-pre-columbian-puppets-ritual-central.html

元論文

Of puppets and puppeteers: Preclassic clay figurines from San Isidro, El Salvador
https://doi.org/10.15184/aqy.2025.37

ライター

千野 真吾: 生物学出身のWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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