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ホッキョクグマの赤ちゃんが初めて巣穴から出た!成長と巣立ちの貴重な記録を公開


カナダのトロント大学スカボロ校の研究チームによる、ホッキョクグマの赤ちゃんが母親と共に巣穴から出る瞬間を記録した研究が発表されました。ノルウェーのスヴァールバル諸島で10年間にわたる遠隔カメラ観察を経て、ホッキョクグマの巣穴での生活や子熊の成長過程が探求されました。研究により、母グマが先に巣穴を出て安全確認を行い、その後赤ちゃんが慎重に外界へ出る様子が明らかになりました。また、適応訓練として巣穴周辺で数日から数週間を過ごす事実も判明しました。気温や時間帯が赤ちゃんの巣穴脱出に影響を与え、今後の気候変動の影響を考慮する必要性が示されています。研究の詳細は、『Journal of Wildlife Management』に掲載予定です。

ホッキョクグマの赤ちゃんが母グマとともに巣穴から出る瞬間を記録した研究が発表されました。

北極圏の厳しい環境の中で生まれるホッキョクグマの赤ちゃんは、最初の数か月間を雪と氷でできた巣穴の中で過ごしており、彼らの様子を研究することは非常に困難です。

この研究を主導したのは、カナダのトロント大学スカボロ校(UTS)の研究チームです。

彼らは、ノルウェー・スヴァールバル諸島で約10年間にわたり遠隔カメラで撮影を続け、ついに、ホッキョクグマの巣穴生活に関するいくつかの疑問に答えることができました。

研究の詳細は、2025年2月26日付の『Journal of Wildlife Management』誌で発表されました。

目次

  • ホッキョクグマの赤ちゃんを保護する「巣穴」の生活
  • ホッキョクグマの子が初めて巣穴から出る映像が記録される

ホッキョクグマの赤ちゃんを保護する「巣穴」の生活

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ホッキョクグマの子は大事な2年間を巣穴で過ごす / Credit:Polar Bears International

ホッキョクグマの母グマは、秋から冬にかけて雪の中に巣穴を掘り、その中で出産し、数か月間赤ちゃんを育てます。

生まれたばかりの赤ちゃんは体重600gほどで、毛が薄く、自力で寒さに耐えることができません。

そのため、巣穴は赤ちゃんを寒さや外敵から守るシェルターの役割を果たします。

そして赤ちゃんたちは、母乳とアザラシの脂肪を得て、急速に成長します。

1年目の春に巣穴を離れるまでには、体重が約10kgにもなります。

翌年には、ホッキョクグマの親子は再び巣穴に戻り、母親は子熊が乳離れするまで見守ってあげます。

この最初の2年間は子熊が生き残るために非常に重要なプロセスだと考えられています。

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ホッキョクグマの子の生存率は約半分。保護のための研究が必要とされている / Credit:Polar Bears International

それでもホッキョクグマの赤ちゃんが大人になるまで生き残ることができるのは、全体の約半分だけです

だからこそ、ホッキョクグマの個体群を保護する活動は重要です。

しかし、彼らは人里離れた雪の下に巣穴を作るため、巣穴におけるホッキョクグマの様子を研究することは簡単ではありません

そこで、トロント大学スカボロ校の研究チームは、ノルウェーのスヴァールバル諸島で約10年にわたって遠隔カメラを用いた撮影を行い、ホッキョクグマの親子の様子を粘り強く記録し続けました。

そのおかげで、この度、ホッキョクグマの赤ちゃんが初めて巣穴から出る様子を取得することに成功しました。

また巣穴で生活するホッキョクグマの親子に関する貴重な情報もいくつか入手できました。

ホッキョクグマの子が初めて巣穴から出る映像が記録される

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ホッキョクグマの赤ちゃんの巣穴脱出の映像をとらえる / Credit:Polar Bears International_Polar bear cubs emerging from their dens for the first time: New study captures rare footage(2025, EurekAlert)

研究チームが記録した映像では、巣穴脱出のプロセスが明確に示されていました。

最初に巣穴を出るのは母グマで、外の環境を慎重に確認します。

その後、赤ちゃんグマたちは慎重に母グマの後を追いながら巣穴から這い出し、新しい世界へと踏み出します。

赤ちゃんたちはすぐには移動せず、数日から数週間、巣穴の周辺で適応訓練を行うことが分かりました。

この期間、母グマは狩りを再開せず、巣穴周辺で子グマを見守ります。

これは、赤ちゃんが極寒の環境に適応し、筋力をつけるための重要な時期だと考えられています。

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母グマは巣穴の近くで子グマを訓練する / Credit:Polar Bears International_Polar bear cubs emerging from their dens for the first time: New study captures rare footage(2025, EurekAlert)

ホッキョクグマの親子が巣穴の近くに留まる期間は平均12日ほどですが、この期間は家族によって大きく異なるようです。

ちなみに赤ちゃんグマたちがひとりで外にでることは滅多になく、赤ちゃんグマが母親と離れているの様子が観察されたのは全体のたった5%でした。

スヴァールバル諸島では、子熊は最長で2年半も母親に依存して生きていくのです。

また研究では、気温や時間帯が巣穴脱出のタイミングに影響を与えることも確認されました。

気温が高いほど赤ちゃんグマが巣穴の外にいる時間が長くなり、逆に寒い日には巣穴に戻る時間が増える傾向があることが分かりました。

そしてホッキョクグマのこれらの育成プロセスは、現在深刻化している気候変動の影響を受ける可能性があります。

研究者たちも、「ホッキョクグマの巣穴脱出は非常に繊細なプロセスであり、少しの環境の変化が影響を及ぼす可能性がある」と述べています。

今後の研究ではさらに広範囲での観測を行い、気候変動の影響をより詳細に追跡していく必要があります。

全ての画像を見る

参考文献

Polar bear cubs emerging from their dens for the first time: New study captures rare footage
https://www.eurekalert.org/news-releases/1074740

New Study: Polar Bear Cubs Emerging From Maternal Dens
https://polarbearsinternational.org/news-media/articles/new-study-polar-bear-cubs-emerging-from-maternal-dens

First-Ever Detailed Footage Shows Polar Bear Cubs Emerging From Dens
https://www.sciencealert.com/first-ever-detailed-footage-shows-polar-bear-cubs-emerging-from-dens

元論文

Monitoring phenology and behavior of polar bears at den emergence using cameras and satellite telemetry
https://wildlife.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/jwmg.22725

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部

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