サウジアラビアのネオム(NEOM)プロジェクトが進める「THE LINE」は、これまでの都市設計の常識を覆す壮大な試みです。
全長170km、高さ500m、幅200mの直線型都市という前代未聞の計画は、未来都市として世界的な注目を集めています。
特に最近発表された「Hidden Marina」計画では、20万人の住民が暮らす巨大モジュール都市の建設が進められています。
しかし、未来都市として期待される一方で、「本当にこの都市は実現できるのか?」という疑問もあります。
果たして「THE LINE」は、人類の未来を変える革命的な都市となるのでしょうか?
目次
- 直線型未来都市「THE LINE」とは?
- 「THE LINE」の第一段階「Hidden Marina」の建設が開始
直線型未来都市「THE LINE」とは?
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「THE LINE」は、サウジアラビア政府が主導する「NEOM」プロジェクトの一環として誕生しました。
この構想は、ムハンマド・ビン・サルマン王太子(Mohammed bin Salman)が2021年に発表し、当初の計画では、2024年に住民の入居が開始される予定でした。
今では延期され、全体が完成するのはまだまだ先のことです。
「THE LINE」は、紅海沿岸の砂漠地帯に建設される予定で、ヨルダンとエジプトの国境に近い位置にあります。
そのスケールは圧倒的であり、全長170km、高さ500m、幅200mの壁状の超高層ビル群で構成されます。
都市全体を覆う鏡面ガラスの外壁が特徴的であり、都市内部の空気は調整され、理想的な居住環境を提供する予定です。
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また、「THE LINE」は、土地の効率的な利用を目的とし、従来の放射状都市の課題を解決することを目指しています。
建物の内部は、住宅エリア、商業施設、オフィス、教育機関、医療機関などが統合されたレイヤー構造となっており、住民は徒歩5分圏内で生活に必要な全てのサービスを受けられるようになっています。
都市全体は完全に再生可能エネルギーで運営され、移動手段は自動運転の電動モビリティが中心となる予定なのだとか。
これにより、交通渋滞を解消し、都市全体の二酸化炭素排出量をゼロにすることを目指しています。
しかし、この壮大な計画を実現するためには、多くの技術的・経済的課題を克服しなければなりません。
「果たして本当に実現するのだろうか」と感じる人も少なくありません。
それでも最近、「THE LINE」の進捗が報告されました。
「THE LINE」の第一段階「Hidden Marina」の建設が開始
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2024年時点で、「THE LINE」の第一段階の建設が開始されており、すでに14万人以上の労働者がこのプロジェクトに関わっています。
「THE LINE」の第一段階は「Hidden Marina」と名付けられています。
このモジュール型都市は、全長2.5km、高さ500mという超高層建築で、住宅やホテル、商業施設、学校、警察署などが組み込まれる予定です。
外観は鏡面仕上げとなっており、周囲に溶け込みます。
このHidden Marinaは2030年までには完成する予定であり、その最上階には、近未来的な巨大スタジアムが建設されるそうです。
関係者たちは、ここで2034年のFIFAワールドカップを開催することを目標にしています。
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ちなみに、このプロジェクトには1400億ドル以上が投資されており、長期的に採算が取れるかどうかが問われています。
また、住民の誘致も大きな課題であり、果たしてどれだけの人が「THE LINE」に住みたいと思うのか疑問が残ります。
それでも第一段階の建設が始まった今、このプロジェクトは止まることができません。
「THE LINE」は見事に完成し、未来都市の理想形となるのでしょうか。
それとも、砂漠に「夢の残骸」を残して終わるのでしょうか。
参考文献
First 1.5-mile stretch of Saudi’s audacious Line megacity begins to rise
https://newatlas.com/architecture/line-construction-update-first-phase-feb/
THE LINE
https://www.neom.com/en-us/regions/theline
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部