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RPGのスライムが現実に!?触ると発電する「電気スライム」が開発される


カナダのゲルフ大学の研究チームが、押したり踏んだりすることで電気を発生させる「電気スライム」を開発しました。このスライムは、90%以上が水でできていても、高い発電能力を持つという特性を持っています。具体的には、アミノ酸とオレイン酸を特定の割合で混ぜることで、圧力を加えると電圧を生じさせる分子構造を形成します。さらに、このスライムは逆圧電効果も示し、電気を流すことで形が変化することが確認されています。この特性により、歩くだけで発電する床材や、医療用デバイス、ロボットの人工皮膚などでの利用が期待されています。今後の研究課題として、発電量の増強や耐久性の向上が挙げられていますが、このスライムは次世代のエコ技術として有望視されています。

触ると電気を生み出すスライム


まるでRPGに登場するモンスターのような物体が発明されました。


カナダのゲルフ大学(University of Guelph)の研究チームが、圧力を加えると電気が発生する「電気スライム」を開発しました。


このスライムは、90%以上が水でできているのに、押したり踏んだりするだけで電気を生み出すという驚きの特性を持っています。


この研究の詳細は、2024年12月28日付の科学誌『Journal of Molecular Liquids』に掲載されています。




目次



  • 圧力で電気が生まれる?不思議な圧電効果とは
  • 圧力を加えると発電するスライムの開発に成功

圧力で電気が生まれる?不思議な圧電効果とは


圧電効果とは、物質に圧力を加えると電気が発生する現象です。


この効果は、1880年にフランスの物理学者ジャック・キュリー(Jacques Curie)とピエール・キュリー(Pierre Curie)によって発見されました。


例えば、水晶(クォーツ)を押すと、その内部の原子がずれて電荷が偏り、両端に電圧が生じます。


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圧電効果のイメージ / Credit:Wikipedia Commons

この性質を利用した身近な物といえば、ライターの着火石が挙げられます。


圧力を加えることで高い電圧が発生するため、これで火花を発生させガスに着火しているのです。


ちなみに、この効果の逆を「逆圧電効果」と呼びます。


これは、電圧を加えることで材料が物理的に変形する現象であり、スピーカーの振動源などに利用されています。


従来、これらの性質を示す圧電材料として知られてきたのは、水晶、チタン酸バリウム(BaTiO₃)、鉛ジルコン酸チタン(PZT)などの硬い無機材料でした。


これらの材料は高い圧電性能を持つ一方で、柔軟性がなく、体に密着させるデバイスには向いていないという課題がありました。


近年、より柔軟な有機圧電材料も開発されていますが、それでも完全に柔らかい状態で圧電特性を持つ材料は限られていました。


そこで今回、グエルフ大学の研究者たちは、柔らかいスライム状の物質でも圧電効果を発現させるため、実験を行いました。


圧力を加えると発電するスライムの開発に成功


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スライム状の圧電材料の開発に成功 / Credit:YouTube(Canadian Light Source)_Scientists invent slime that could be used in new medical, green energy, and robot applications(2025)

研究チームは、アミノ酸、オレイン酸、水を組み合わせて圧電スライムを開発しました。


アミノ酸は体内のタンパク質の構成要素であり、オレイン酸はオリーブオイルなどに含まれます。


これらの材料は圧電材料としては知られていませんでした。


しかし、特定の割合で混ぜると、分子が自然に並んで独特の構造を作り、圧力を加えることで電圧が発生する性質を持ちます。


研究チームは逆圧電効果も確認しました。


これは、電気を流すことでスライムの形が少し変化する現象です。


この特性があることで、スライムは単に電気を発生させるだけでなく、動きをコントロールするような用途にも活用できる可能性があります。


ちなみに、従来の圧電材料では水分を含まないことが一般的でした。


しかし、今回のスライムでは水分含有量が90%以上でも発電能力が高いことが確認されています。


これは、水の影響で分子の動きがスムーズになり、電荷の移動が促進されるためだと考えられています。


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現実の「電気スライム」は様々な分野で役に立つ / Credit:Canva,ナゾロジー編集

そして、この電気スライムは様々な分野での利用が期待されます。


例えば、歩くだけで発電する床材やウェアラブルセンサー(スマート衣類)、ロボットの人工皮膚などです。


また、このスライムは人体との適合性が高い天然素材でできているので、医療デバイスにも活用できるかもしれません。


研究チームは、次のように語っています。


「私たちの体は、開いた傷口に治癒細胞を引き寄せるために小さな電界を作り出します。


そして、この電界を強める包帯を作ることで、治癒が早まる可能性があります。


電気スライムを利用した包帯を作るなら、自然な動きや呼吸によって電気を発生させ、治癒を早めることができるかもしれません


もちろん課題も残っており、発電量の増強や耐久性の向上が挙げられます。


これらは今後の研究によって改良されていくでしょう。


まるでRPGに登場するかのような「電気スライム」は、次世代のエコ発電技術としての可能性を秘めた「現実的な存在」だったのです。



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参考文献

Scientists invent “slime”that could be used in new medical, green energy, and robot applications
https://www.lightsource.ca/public/news/2024-25-q4-jan-march/scientists-invent-slime-that-could-be-used-in-new-medical-green-energy-and-robot-applications.php

scientists invent slime that produces electricity when squeezed
https://www.designboom.com/technology/scientists-invent-slime-produces-electricity-when-squeezed-university-of-guelph-02-13-2025/

元論文

Ferroelectric soft materials formed with alkanolamines and unsaturated fatty acids
https://doi.org/10.1016/j.molliq.2024.126823

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部

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