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拒食症の脳に共通点「脳への燃料供給は一般人と同じ」


拒食症は単なるダイエットのしすぎではなく、食事や体重に対する強い恐怖を伴う深刻な精神疾患です。フィンランドのトゥルク大学の研究では、拒食症患者の脳でオピオイド受容体の活動が正常よりも上昇していることが判明しました。オピオイド受容体は食欲や快楽を調整する役割を持っており、この異常が拒食症や過食症に影響を与えている可能性があります。また、拒食症患者の脳は栄養不足でもブドウ糖を健常者と同様に取り込む傾向があります。この発見は、単なる食事量の増加ではなく、脳システムの改善が治療に必要であることを示唆しています。しかし、調査のサンプルが限られているため、さらなる研究が必要です。

SNSでガリガリに痩せたインフルエンサーを見て、心配になったことはありませんか。

拒食症(神経性無食欲症、Anorexia Nervosa)は、単なるダイエットのしすぎではなく、深刻な精神疾患です。

患者は極端な食事制限を行い、たとえ危険な状態になっても、体重が増加することに対して強い恐怖を抱えています。

では、このような患者の脳は、そうでない人とどのように異なるのでしょうか。

フィンランドのトゥルク大学(University of Turku)の研究チームは、拒食症患者の脳の働きを詳細に分析しました。

その結果、拒食症患者の脳には共通点があることを発見しました。

この研究の詳細は、2025年1月12日付の『Molecular Psychiatry』誌に掲載されました。

目次

  • 拒食症とは?原因は「脳」にある
  • 拒食症患者の脳は栄養不足でもエネルギーを維持している

拒食症とは?原因は「脳」にある

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拒食は単なる願望ではない。脳に原因がある / Credit:Canva

拒食症は、単なる「痩せたい」という願望ではなく、深刻な精神疾患です。

この病気の主な特徴として、食事を極端に制限すること、体重増加に強い恐怖を抱くこと、自分の体を実際よりも太っていると認識することが挙げられます。

拒食症はさまざまな健康リスクを伴い、低血圧や心拍数の低下、骨密度の低下による骨粗しょう症、消化不良、免疫機能の低下、ホルモンバランスの崩れによる生理不順や無月経など、様々な問題を引き起こす可能性があります。

さらに、長期間の栄養不足は心臓や脳にも影響を及ぼし、最悪の場合、生命に関わる事態を招くこともあります。

また、拒食症からうつ病や不安症につながることもあります。

では、どうして拒食症の患者は、一般人のように食べることができないのでしょうか。

これまでの研究では、拒食症と脳構造の変化が関連付けられており、特に脳内の報酬システムに何らかの変化が生じていると考えられてきました。

今回、トゥルク大学の研究チームは、拒食症患者の脳の状態をさらに詳しく調査することにしました。

拒食症患者の脳は栄養不足でもエネルギーを維持している

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拒食症患者の脳は、食欲と快楽の調整システムが正常に働いていない。ただし脳へのエネルギー供給は健常者と同じ / Credit:Canva

研究チームは、拒食症患者13名と健康な対照者13名の脳をPET(陽電子放射断層撮影)で分析し、比較しました。

その結果、拒食症患者の脳では、オピオイド受容体に作用する神経伝達物質の活動が通常よりも上昇していることが明らかになりました。

これらの物質は、脳内の食欲や快楽を調整する働きがあります。

過去に研究チームは、肥満患者でこのシステムの活動が低下することを発見しています。

つまり、脳が本来持つ「食欲や快楽の調整システム」が正常に働かないことが、過食や拒食を引き起こしていると分かります。

この結果は、拒食症の治療において、単に食事量を増やすだけではなく、脳システムの異常を改善する必要があることを示唆しています。

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拒食症患者の脳内のオピオイド受容体の数(上段)と糖摂取量(下段) / Credit:University of Turku

さらに驚くべき発見は、拒食症患者の脳が、深刻な栄養不足にも関わらず、健康な人と同じ量のブドウ糖を取り込んでいたことです。

通常、体が栄養不足になると、代謝が低下し、エネルギーの消費を抑えようとします。

脳は体全体のエネルギー消費量の約20%を占めるため、栄養不足の影響も大きいはずです。

しかし、拒食症患者では、生理機能には様々な負担をかけるものの、脳だけはできるだけ健康な状態を保とうと、エネルギーを優先して供給していたのです。

これらの発見は、拒食症患者の脳が特別な仕組みを持つことを示しており、拒食症の治療戦略を根本から見直す必要があることを示唆しています。

食べられないのは、単なる意思や気持ちの問題ではなく、脳のせいなのかもしれません。

拒食症患者の脳は、食欲システムに異常を抱えながらも、脳機能を守ろうと必死になっていました。

ただし今回の実験はサンプルが小さく、限界があります。

今後のさらなる研究が、拒食症患者にとって新たな希望になることを願います。

全ての画像を見る

参考文献

Patients with anorexia have elevated opioid neurotransmitter activity in the brain
https://www.utu.fi/en/news/press-release/patients-with-anorexia-have-elevated-opioid-neurotransmitter-activity-in-the

Anorexia Patients Reveal a Distinct Pattern in Their Brain Activity
https://www.sciencealert.com/anorexia-patients-reveal-a-distinct-pattern-in-their-brain-activity

元論文

Anorexia nervosa is associated with higher brain mu-opioid receptor availability
https://doi.org/10.1038/s41380-025-02888-3

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部

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