爆発物処理班が特殊な防護服を着て、爆弾を解除するシーンを、映画やニュースで目にしたことがあるかもしれません。
しかし、技術の進化により、この危険な作業をロボットが担う時代が訪れつつあります。
英国国防省(Ministry of Defence, MoD)と国防科学技術研究所(Defence Science and Technology Laboratory, Dstl)は、爆発物処理に特化したロボット犬の開発を進めています。
このロボット犬はAIを搭載し、様々な地形を移動しながら爆発物を特定。安全に処理する能力を持っています。
2025年2月に英国政府が公開した報告では、従来の爆弾処理ロボットよりも迅速かつ安全に爆発物を検知・処理できることが示されました。
目次
- 爆弾処理ロボットの進化
- AI搭載のロボット犬が爆弾を処理する
爆弾処理ロボットの進化
爆弾処理ロボットと聞くと、すでに軍や警察で活躍している遠隔操作型ロボットを思い浮かべるかもしれません。
実際、1972年に英国陸軍が開発した「Wheelbarrow(ホイールバロウ)」は、爆弾の安全な移動や処理を可能にしました。
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また、アメリカの「PackBot(パックボット)」や「TALON(タロン)」も戦場や市街地で活用され、IED(即席爆弾)の除去に貢献してきました。
しかし、これらのロボットには限界がありました。
遠隔操作が必須であるため、人間のオペレーターが操作する必要があり、反応が遅れることがありました。
また、階段や障害物が多い場所では移動が困難でした。
加えて、AIの活用も限定的で、爆発物を自動で特定・判断する能力が低かったのです。
そこで、英国の研究チームは「より俊敏に動き、AIを活用して自律的に爆発物を処理できるロボット」の開発に着手しました。
その答えがロボット犬です。
AI搭載のロボット犬が爆弾を処理する
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新しいロボット犬は、従来の爆弾処理ロボットとは異なります。
まず、自律移動機能により障害物を回避しながら、階段を上ったり、狭い路地を進んだりできるようになっています。
ドローンとの連携も取り入れられています。
上空からドローンが監視して安全なルートをリアルタイムで解析し、ロボット犬に伝えてくれるのです。
またロボット犬は、搭載された赤外線カメラや化学分析センサーを用いて爆発物の位置や成分を特定することができます。
AIによる脅威識別機能を活用し、爆発物の種類や危険度をリアルタイムで分析し、最も安全な対処法を決定できるのです。
最後に、ロボット犬は適切な処理方法を実行します。
例えば、遠隔操作によるロボットアームで爆発物を安全な場所へ移動させることが可能です。
また、ロボットアームや射撃によって、安全のうちに爆発物をその場で爆発させることもあります。
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そして、研究チームがこの技術を実際の爆弾処理シナリオでテストしたところ、ロボット犬は迅速に爆発物を特定し、処理できると分かりました。
この演習では、基本的に人間のオペレーターがロボット犬を遠隔操作しましたが、ロボット犬のAI機能により、多くのタスクをロボット犬に任せることができました。
そのおかげで、オペレーターはより重要なタスクに集中することができたのです。
将来的にはほとんどのタスクをAIに任せることも可能かもしれません。
人間が立ち入ることなく爆発物を処理できるため、爆弾処理班の安全性が大幅に向上するはずです。
とはいえ、AIの誤作動やサイバー攻撃のリスクといった課題も残されています。
また、高度な技術を搭載するため、コストの問題も考慮しなければなりません。
今後は、これらの課題を克服し、より安全で実用的な技術へと進化することが求められます。
かつては映画でしか考えられなかったロボット犬が、今では現実の爆弾処理の最前線に立とうとしています。
そう遠くない未来、爆弾処理は人間ではなくロボット犬に託されるのかもしれません。
参考文献
Robodogs tackle bomb detection, defusing and disposal
https://newatlas.com/military/robot-dogs-bomb-disposal/
New robots lead the way in bomb disposal innovation
https://www.gov.uk/government/news/new-robots-lead-the-way-in-bomb-disposal-innovation
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部