流れ星は、晴れた夜空であれば1時間に数個ほど観測できると言われています。
地球にはそれだけ多くの小さな岩石が降り注いでいて、1日に地球に降り注ぐは宇宙の塵や小さな流星体は数十トンにも及ぶと言われています。
そのほとんどは大気圏で燃え尽きてしまい地上に影響を与えることはありませんが、当然に欠片が地表に到達することもあります。
隕石に当たる確率は、よく宝くじで大金を引き当てる確率と比較されますが、そんな低い確率の隕石が、なんと偶然防犯カメラに映るというレアな事象が起こりました。
カナダで捉えられたこの映像は、天文学的にも貴重な映像資料として、『The Meteoritical Society(隕石学会)』に報告されています。
目次
- 防犯カメラが捉えた流星体落下の衝撃
- 過去の流星衝突事故と今回の報告の意義
防犯カメラが捉えた流星体落下の衝撃
隕石と思われる岩石の報告は、研究機関に数多く寄せられると言いますが、その99.9%はただの勘違いで地球の岩石だそうです。
しかし今回の報告は、調べるまでもなく確実に隕石だと判明しました。
なぜならその様子の一部始終を防犯カメラが記録していたのです。
2024年7月25日、カナダのプリンスエドワード島、シャーロットタウンのマーシュフィールド地区で、隕石の落下が確認されました。
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隕石はローラ・ケリーさんとジョー・ヴェレイダムさん夫妻の自宅近くに落下しました。
二人は夕方の散歩を終えて帰宅した際、玄関先の歩道に灰色の粉塵が広がっていることに気付いたといいます。
最初は単なる砂埃かと思い、ヴェレイダムさんはほうきを持ち出して掃き始めましたが、地面の様子がおかしかったため、不審に思った彼は防犯カメラの映像を確認しました。
すると、そこには隕石が空から落下し、地面に衝突する衝撃で粉塵が舞い上がる瞬間が鮮明に映っていたのです。
この衝突の瞬間には氷が割れるような特徴的な音も記録されていました。
この映像は、流星体が地表に衝突する瞬間を記録した非常に珍しい事例として、科学界で注目されています。
またちょうどこの時期、アルバータ大学のクリス・ハード教授がこの島に観光に訪れていたそうで、破片がすぐに採取・分析され、この隕石はH5普通コンドライトに分類されると判明しました。
H5普通コンドライトというのは、主に鉄とニッケルから成る一般的な隕石のことで、数字の部分は金属粒子の熱変性の段階を指しますが、5は一般的なもので構造的に安定していることを指します。
これはよく見られるタイプの隕石で、その起源は火星と木星の間の小惑星帯だと考えられています。
隕石は粉々でしたが、粉塵を集めた結果、地上に到達した破片の質量は約95グラムだったと推定されています。
とはいえ衝突時の速度は時速200キロメートル近かったと推定されるため、もし人の近くに落下していれば大きな被害をもたらした恐れがあります。
ヴェレイダムさんは散歩中だったというので、もし出発の時間や帰宅の時間がズレていたら玄関先で隕石に衝突する不幸もあり得たかもしれません。
そう考えると非常に恐ろしい出来事です。
実際人にぶつかったという報告も過去には存在しています。
過去の流星衝突事故と今回の報告の意義
このような流星体は、宇宙空間を漂う微小な天体が地球の大気圏に突入することで発生する現象です。
大気圏に突入すると、大気との摩擦による加熱で発光し、これが「流れ星」として観測されます。
過去の研究によると、大気圏突入の摩擦熱によって流星体は質量の99%以上を失うことが多いとされています。そのため今回報告された流星体も、もともとは数十キログラムはあったと考えられます。
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こうした流星体が地上に到達し、被害を引き起こすことは極めて稀ですが、歴史的にはいくつかの事例が報告されています。
最も有名なケースのひとつが、1954年にアメリカ・アラバマ州に落ちた「ホッジス隕石」です。
この隕石は住宅の屋根を突き破り、室内に落下したと伝えられています。
このとき室内には人がおり、ソファで昼寝をしていた女性のそばに隕石が落ちたため、彼女は破片の衝撃で負傷したといいますが、命に別状はありませんでした。
これは、流星体が人に物理的な影響を与えた極めて稀な例として記録されています。
今回のカナダでの報告は、被害を伴うものではありませんが、防犯カメラによって流星体の落下が記録された点で大きな科学的意義を持ちます。
今はどこにでもカメラがあります。今後も防犯カメラや監視カメラ、スマートフォンに科学的に貴重な映像が記録され、私たちも見ることができる機会がどんどん増えていくかもしれません。
参考文献
The Meteoritical Society
https://www.lpi.usra.edu/meteor/metbull.php?code=84378
A Meteorite Is Caught on Camera as It Crashes Outside a Front Door
https://www.nytimes.com/2025/01/16/science/meteorite-debris-security-camera-canada.html
ライター
相川 葵: 工学出身のライター。歴史やSF作品と絡めた科学の話が好き。イメージしやすい科学の解説をしていくことを目指す。
編集者
ナゾロジー 編集部