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「まばたき」のタイミングで「脳は情報を整理している」


日常のまばたきは、単に目を潤すだけでなく、脳への情報処理としても重要な働きをしていることが分かりました。ベルギーのゲント大学の研究チームは、読書中におけるまばたきのタイミングと脳の認知負荷との関連を調査し、句読点や珍しい単語でまばたきが増加することを確認。この現象は、注意の区切りや情報処理の一部であることを示しています。まばたきが、脳が情報をリセットし整理するタイミングを表している可能性を示唆しており、この理解は集中力を要するタスクの効率化に寄与する可能性があります。

毎日、何気なく行っている「まばたき」。これが実は、あなたの脳にとって意外なほど重要な働きをしているとしたら驚くかもしれません。

まばたきは目を潤すための単なる生理的動作と思われがちですが、最新の研究によると、それは脳が情報を整理し、次に備えるための「リセット」のタイミングでもあるのです。

ベルギーのゲント大学(Ghent University)のルイザ・ボガーツ(Louisa Bogaerts)氏とそのチームは、読書中のまばたきに着目し、そのタイミングと脳の働きとの関連性を分析しました。

この研究では、句読点や行末、珍しい単語においてまばたきが増加することが確認され、まばたきに注意や認知負荷を調整する役割があることが示唆されました。

研究は、2024年12月付の学術誌『Reading Between the Blinks』で発表されています。

目次

  • まばたきの秘密:ただの目の潤いではない?
  • 読書中、脳は「まばたき」の間に情報を整理していた

まばたきの秘密:ただの目の潤いではない?

「まばたき」は生理的な動作として、目を潤し、異物を取り除くという役割を果たします。

しかし、私たちが毎分約15回もまばたきをする理由は、それだけでは説明できません。

なぜなら、実際に目を澄すためには毎分2回程度のまばたきで十分だと言われているからです。

仮に目を潤すためにもう少し多くのまばたきが必要だったとしても、毎分15回はやはり多いのです。

では、私たちがまばたきをする目的には、別のどんな要素が含まれているのでしょうか。

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まばたきには「脳の活動」との関連が示唆されてきた / Credit:Canva

これまでの研究では、視覚入力を一時的に止めるまばたきが、脳の活動と密接に関わっていることが示されてきました。

例えば、集中力を要するタスク中にはまばたきが減り、タスク終了後に増える傾向があります。

これは、まばたきが認知的な「切り替え」や「休憩」のタイミングとして機能している可能性を示唆しています。

さらに、アーサー・ホール(Arthur Hall)氏が1945年に行った先駆的な研究では、読書中に句読点や文末でまばたきが増えることが観察されており、これが注意の区切りや情報の処理と関連しているとされています。

彼はまた、読書中のまばたきが句読点や珍しい単語で増加することを示し、まばたきが情報処理に関与している可能性を提案しました。

しかし、このホール氏の研究は、データが限られていたことや主観的な判断が含まれていたことが指摘されており、彼の仮説を検証する必要がありました。

そこで今回、ベルギーのゲント大学(Ghent University)のルイザ・ボガーツ(Louisa Bogaerts)氏とそのチームは、ホール氏の仮説を元に、改めてまばたきと脳の情報処理の関係を調べることにしました。

読書中、脳は「まばたき」の間に情報を整理していた

今回の研究では、Ghent Eye Tracking Corpus(GECO:読書中の視線の動きや瞬きのタイミングを詳細に記録したデータベース)のデータを用いて、読書中のまばたきパターンを分析しました。

実験では、15人の被験者が、アガサ・クリスティ(Agatha Christie)の小説を黙読し、研究チームは、その際の視線とまばたきのデータを記録(視線追跡装置を使用)しています。

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読書中のまばたきのパターンを記録 / Credit:Canva

研究チームは、ボガーツ氏の仮説にならって、句読点(ピリオド、コンマ、疑問符など)、行末(行の最後の位置で、次の行へ視線を移すタイミング)、そして単語の頻度(使用頻度が高い単語と低い単語)に着目し、それらがまばたきに及ぼす影響を調べました。

その結果、合計で約3万回以上のまばたきが記録されました。

そしてまばたきは、句読点の位置で約4.9倍、行末で3.9倍、句読点と行末が一致する場合に6.1倍も増加すると分かりました。

このことは、まばたきが注意の区切りとして働いている可能性を示唆しています。

まばたきによって視覚から入ってくる情報を一旦遮断することで、脳をリセットしているわけです。

また、頻繁に使われる単語よりも、珍しい単語を読んだ後にまばたきが増えることも分かりました。

珍しい単語を見た時、脳の認知的な負荷(脳が情報を処理するためにどれだけ頑張っているか)が大きくなります。

その時にまばたきをしているということは、短いまばたきの間に、脳が直前の情報を処理し、整理していると考えられます。

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まばたきは、脳が情報を処理するタイミングを示している / Credit:Canva

これらの結果は、まばただきが読書中のランダムなタイミングで行われているのではなく、テキストの認知的な要求に合わせて、戦略的に調整されているという仮説を裏付けるものです。

つまり、まばたきは、脳が情報を効率的に処理するタイミングを示している可能性が高いのです。

今回の研究は、まばたきが単なる生理的動作ではなく、脳の認知的活動と深く関連していることを改めて示すものとなりました。

この知見は、読書や学習、さらには集中力が必要なタスクの改善に役立つ可能性があります。

将来的には、まばたきのパターンをモニタリングすることで、注意力や疲労をリアルタイムで評価する技術の開発にもつながるかもしれません。

例えば、自動運転車のドライバーや航空管制官の注意状態を監視するツールとして応用できるでしょう。

次回、本を読んだり画面を見つめたりしているとき、あなたのまばたきに少しだけ意識を向けてみてください。

その瞬間、あなたの脳は短い「リセット」を行い、情報を整理しているのです。

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元論文

Reading Between the Blinks: The Timing of Spontaneous Eye Blinks in Text Reading Suggests Cognitive Role
https://doi.org/10.31234/osf.io/pu9cv

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部

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