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50年以上もお風呂に入らなかった男性、半世紀ぶりに入浴したら逆に体調が悪化


この記事では、歴史的に有名な「お風呂に入らない人々」のエピソードを紹介しています。アモウ・ハジ、カイラシュ・シン、そしてナサニエル・ベントリーという3人の男性が取り上げられています。例えば、アモウ・ハジは50年以上も入浴せず、変わった生活習慣を持っていました。しかし、入浴しないことにはリスクがあります。皮膚感染症や臭いの発生、感染症拡大の可能性が挙げられます。また、逆に過度の入浴も肌の乾燥やバリア機能の損傷を引き起こし得ます。このように、入浴の頻度に関するバランスが求められています。シャワーや風呂は1日1〜2回が望ましいとされています。

「めんどくさいし、今日はお風呂いいや…」と思ったことはありませんか?

シャワーや入浴を度々すっぽかす人は少なくありませんが、やはり上には上がいます。

歴史を振り返ると、お風呂に入らない生活を何十年も徹底し続けた人物が何人かいるのです。

今回はそうした人たちの奇想天外なエピソードを紹介します。

それに加えて、お風呂にまったく入らないとどんなリスクがあるのか、逆にお風呂に過度に入りすぎると何が起きるのかも解説していきます。

目次

  • お風呂に入ることをやめた3人の奇人
  • お風呂に入らなくなると何が起きる?
  • お風呂に入りすぎることも問題

お風呂に入ることをやめた3人の奇人

その1:世界一汚い男「アモウ・ハジ」

イランに暮らしていたアモウ・ハジ(1928〜2022)は「世界一汚い男」として有名でした。

彼は青年期に恋愛で数回失敗し、その頃から孤独で奇怪な生活を送るようになりました。

そして1954年に風呂に入ったのを最後に、「水と石鹸は病気の元である」「風呂では滑って死んでしまう可能性がある」という考えのもと入浴を完全にやめてしまいます。

それ以来、50年以上もお風呂に入ることはありませんでした。

その結果、彼の体は泥や灰で覆われ、皮膚自体が乾いた土のようになってしまったのです。

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アモウ・ハジ/ Credit: en.wikipedia

またアモウ・ハジは食生活も変わっており、ヤマアラシの腐った肉を主食とし、タバコのパイプには動物のフンを詰め込み、そこに火をつけて煙を吸っていました。

しかし彼が有名になった晩年に、社会的な圧力に屈して半世紀以上ぶりに入浴する羽目に。

ところがその直後から体調を崩し、数カ月が経った2022年10月に94歳で亡くなっています。

「お風呂に入ったことが原因だ」とも指摘されますが、その科学的証拠はなく、94歳という年齢から老衰の可能性が高いと見られています。

その2:世界一臭い男「カイラシュ・シン」

インドに暮らすカイラシュ・シンも入浴をやめてしまった男性の一人です。

彼は若い頃に「入浴をやめれば息子を授かる」とのお告げを受けたことがきっかけで、お風呂に入らなくなりました。

ところがその後、彼が授かったのは7人の娘であり、男の子を授かることはありませんでした。

それでも彼は徹底してお風呂に入らず、髪を切ることもやめて、歯も磨かなくなったのです。

そのせいで彼は「地球上で最も臭う男性(the smelliest man on Earth)」と呼ばれています。

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カイラシュ・シン/ Credit: Daniel Arenson, Sci-Fi &Fantasy Author(Facebook, 2022)

2009年時点で、入浴をやめてから35年以上が経過していました。

彼はお風呂の代わりに焚き火にあたることで、体の細菌や感染症を殺すことでできると信じています。

その3:18世紀の汚い男性「ダーティ・ディック」

18世紀にもお風呂に入ることをやめた男性がいました。

彼の名前はナサニエル・ベントリー(1735–1809)で、ロンドンの商人をしていました。

しかし彼は婚約者が結婚式の日に亡くなったことをきっかけに、お風呂に入ることをやめ、身なりや家の掃除も全くしなくなったのです。

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ダーティ・ディックの肖像/ Credit: en.wikipedia

その汚れた習慣は当時の有名人となり、「ダーティ・ディック(Dirty Dick)」と呼ばれるようになりました。

また彼自身だけでなく、彼の家や倉庫まで非常に汚れていたので、手紙は「ダーティ・ウェアハウス、ロンドン宛」と書くだけで、彼の家に届いたといいます。

この3人はあまりに極端なケースであり、私たちが真似できるようなことではありません。

では、お風呂に入らないと科学的にどんなリスクがあるのでしょうか?

お風呂に入らなくなると何が起きる?

どれくらいの頻度でお風呂に入るべきかについて、明確な推奨事項はありません。専門家でも意見が異なることがあります。

とはいえ、定期的に体を洗わない人に最もよく見られる不満は、不快な臭いが発生することです。これはバクテリアや汗が皮膚の隙間に閉じ込められるためです。

また専門家はこう話します。

「体をまったく洗わなければ、多くの皮膚のバクテリアや微生物が過剰に繁殖する可能性がありますが、最も懸念されるのは黄色ブドウ球菌です。

黄色ブドウ球菌はグラム陽性の細菌で、皮膚上に感染症を引き起こし、赤く腫れたり、痛みが出たり、発熱が起こったり、皮膚が火傷のように剥がれることがあります」

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Credit: canva

それから体を洗わないことで、死んだ皮膚細胞がそのまま蓄積して固まり始めます。

そうなると動物の角とか爪に似たよう硬い角質層が皮膚を覆うようになります。

アモウ・ハジの皮膚はまさにそのような状態にありました。

洗わないことのもう一つの問題は、病気を伝染させるリスクがあることです。

インフルエンザの季節が来るたびやCOVID-19の感染者が増えると、最初に話題になるのは手の衛生です。

これは個人を守るための措置だけでなく、感染症が人から人へ移るのを防ぐ重要な手段でもあります。

特に医療現場では大切です。

さらに体を洗わないことで、ニキビやアトピー性皮膚炎などの持病が悪化しやすくなったり、頭皮のフケが出やすくなります。

こうした病気を防ぐために私たちは毎日、入念に体を洗うわけですが、では逆にお風呂に入りすぎると何が起きるのでしょうか?

お風呂に入りすぎることも問題

先の3人とは正反対に、過度の潔癖症からか、1日に何度もシャワーを浴びたり入浴する人がいます。

しかし専門家に言わせれば、体を洗いすぎることで起きる問題もあるのです。

1つ目は「肌の乾燥」です。

頻繁にシャワーを浴びたり、体を洗いすぎると、肌の表面にある皮脂(天然の保湿成分)が失われます。

これにより、肌の乾燥が進み、かゆみやひび割れが生じることがあります。

特に熱いお湯での長時間のシャワーは、皮膚の水分保持能力を低下させやすいです。

2つ目は「肌のバリア機能の損傷」です。

肌は天然のバリアとして、外部の刺激や病原菌から体を守っています。

しかし、過剰な洗浄や洗浄剤の使用により、このバリア機能が損なわれ、敏感肌やアレルギー反応、炎症が起こりやすくなります。

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Credit: canva

3つ目は「湿疹や酒さの悪化」です。

洗いすぎは肌を過度に刺激するため、湿疹(アトピー性皮膚炎)や酒さ(しゅさ:顔の血管が膨張し、赤みが生じる慢性皮膚疾患)の悪化を招くことがあります。

特に敏感肌の人にとっては、強い洗浄剤や頻繁なシャワーは逆効果となることがあります。

それから4つ目として「免疫機能の低下」も指摘されます。

実は私たちの肌には有害な細菌だけではなく、健康にとって必要な善玉菌も住んでいます。

過度に体を洗いすぎることで、これらの善玉菌が失われ、皮膚の自然な防御機能が低下し、感染症やアレルギーが発生しやすくなるのです。

このようにお風呂に入らないことも問題ですが、いくら綺麗好きとはいえ、シャワーや入浴は1日1〜2回にとどめておくようにしましょう。

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参考文献

What Happens When You Stop Washing? The Filthiest Tales Of Humans Refusing To Bathe
https://www.iflscience.com/what-happens-when-you-stop-washing-the-filthiest-tales-of-humans-refusing-to-bathe-74684

ライター

千野 真吾: 生物学出身のWebライター。普段は読書をするのが趣味で、休みの日には野鳥や動物の写真を撮っています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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