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威力がなさそうな「猫パンチ」が色んな動物に”効く”のはなぜなのか?


猫パンチは巨大なアザラシにさえも影響を与えるように見えますが、その真の効果は「驚かせること」にあるとされます。猫パンチ自体は痛みを与えるほどの威力はなく、驚異的な速さで繰り出されるため、相手を警戒させ、逃げさせる効果があります。猫パンチは家庭内でも見られ、飼い主に対しては注意を引きたいという軽いものから、撫でられることを嫌って攻撃的になるものまで様々です。飼い主の行動が影響する場合が多く、猫パンチを理解し対処することで、より良好な関係が築けるとされています。

ネコが猫パンチで動物たちを攻撃する動画を見たとき、「この攻撃にどの程度の威力があるのか?」と疑問を抱いたことはないでしょうか。

上の動画を見ると、ネコの繰り出す高速パンチは、巨大なアザラシ相手にも十分「効いている」ようにも見えます。

そもそも意味がなければ、ネコもこのような行動は取らないでしょう。

では、小さな前足を使う猫パンチが、動物に「効く」のはなぜでしょうか。解説します。

またこの記事では、飼い主への「猫パンチDV」が生じる原因についても説明しています。

目次

  • 猫パンチで動物を撃退できるのはなぜ?
  • 猫の「家庭内暴力」に対処する

猫パンチで動物を撃退できるのはなぜ?

最初に紹介した動画では、ネコがアザラシに対して強烈な猫パンチを繰り出しています。

そしてパンチを受けたアザラシは、戦意を喪失したかのように水中へ去っていきます

これ以外にも、ネコが様々な動物に猫パンチを繰り出す動画が、公開・共有されており、猫パンチを受けた動物たちは皆、いくらか「効いている」ように見えます。

では、ネコの小さな手を使った猫パンチは、なぜそこまで効果的なのでしょうか?

猫パンチの特性を考えてみましょう。

まず、猫パンチそのものに大きな威力はありません。

大げさな打撃音が響くことはありますが、痛みを感じることはほとんどなく、傷や跡も残りません。

猫パンチを受けたことのあるネコの飼い主であれば、そのことをよく理解していることでしょう。

もちろん、鳥やネズミなどの小動物が相手であれば大きなダメージを与えることはできます。

しかし、同類の猫や、もっと大きな動物に対する猫パンチが、相手を気絶させたりダメージを与えたりすることはありません。

一方で、そのハンドスピードには目を見張るものがあります。

「猫パンチは秒速10~20m」だと表現されることがあり、これが事実であればプロボクサー並みのハンドスピードであることになります。

(これらの数字は個人による検証結果が元になっており、より正確な数字を知るためには、専門家たちの研究報告を待つ必要があります)

いずれにせよ、プロボクサーのパンチと同様、不意に繰り出される猫パンチを避けられる人間や動物はほとんどいません。

これにはスピードだけでなく、猫パンチの軌道(ストレートではなくフックに近い)も関係していると考えられます。

これら猫パンチの特性を考えると、猫パンチの効果性は、威力ではなく、「驚かせること」にあると分かります。

驚異的なハンドスピードで繰り出される猫パンチを予測することは難しく、それを受けたほとんどの動物は、その衝撃に驚いて逃げようとするのです。

もちろん、この猫パンチは失敗することもあります。十分に相手を驚かせることができない場合、手痛い仕返しを受けることが少なくないのです。

ちなみに、私たちが見かける「猫パンチ」の多くは、相手に対する警告軽い威嚇のために使用されています。

猫がより本気で戦うケースでは、唸り声と共に、相手に噛みついたり、爪を出した状態で猫パンチを繰り出したりします。

そしてこうした猫パンチは、外部の敵だけでなく、身内に対して飛んでくることもあります。

もしかしたらあなたも、「猫パンチDV」の被害者の1人かもしれません。

猫の「家庭内暴力」に対処する

ネコと共に生活していると、猫パンチを受けることもあるでしょう。

猫による家庭内暴力が生じるわけです。

多くのケースでは、「飼い主の注意を引きたい」「遊びたい」という気持ちで、軽い猫パンチが繰り出されます。

こうした優しい猫パンチは、飼い主が愛されている証拠だと言えます。

一方で、飼い主のことが嫌になって繰り出される猫パンチもあります。

スペインのバルセロナ自治大学(UAB)による2019年の研究では、飼い主に対する攻撃が発生する条件として最も一般的(最大40%)なのは、「飼い主が飼い猫を撫でようとする時」だと判明しました。

撫でられることが嫌いなネコは少なくありません。

飼い主が強引に撫でようとすることが、飼い主への噛みつきや引っかき、猫パンチに繋がっている可能性があります。

またカナダのゲルフ大学(University of Guelph)の2021年の研究では、飼い主が「ダメ!」と口頭で強い怒りを表現したり、大きな音を立てて叱ったり、ネコの首筋をつかんだりする家庭では、飼い猫が飼い主や他のネコに対してより攻撃的になると報告されています。

飼い主に問題がある場合、ネコもその影響を受け、家庭内暴力を行うようになるのです。

ネコから攻撃を受けやすい飼い主は、今一度、ネコに対する自分の行動や振る舞いを考えてみるべきでしょう。

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多頭飼いしていると、仲間同士で猫パンチが繰り出されることも / Credit:Canva

さらに多頭飼いしている場合、同じ家の中で生活するネコに対しても、猫パンチが繰り出される場合があります。

攻撃性がそこまで高くない猫パンチの場合、それは優位性の主張である可能性が高いです。

ネコは縄張り意識の強い動物であるため、自分の優位性を主張するために、他のネコに対して猫パンチすることがあるのです。

これまで数々の動物たちを撃退してきた猫パンチは、家の中では愛情もしくは不満の表明です。

飼い主が、猫パンチの本当の意味を理解して対応するなら、ネコたちとより良い関係を築くことができるでしょう。

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参考文献

Why Do Cats Slap and Swat? 9 Vet-Reviewed Reasons &Tips
https://www.catster.com/cat-behavior/why-do-cats-slap-and-swat/

Training Methods Linked to Aggressive Behaviour in Cats, U of G Study Finds
https://news.uoguelph.ca/2021/05/training-methods-linked-to-aggressive-behaviour-in-cats-u-of-g-study-finds/

元論文

Common feline problem behaviours: Owner-directed aggression
https://doi.org/10.1177/1098612X19831206

Risk factors for aggression in adult cats that were fostered through a shelter program as kittens
https://doi.org/10.1016/j.applanim.2021.105251

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部

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