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アフリカ初「プラスチックを食べるスーパーワーム」をケニアで新発見!


アフリカ原産のレッサーミールワームが、発泡スチロールを食べて自然分解する能力を持つことがケニア・国際昆虫生理生態学センター(ICIPE)の研究で確認されました。研究成果は2024年に『Scientific Reports』に発表されました。このミールワームの腸内に存在する「プロテオバクテリア」や「ファーミキューテス」などの細菌が、プラスチックを分解する酵素を生成することで実現しています。研究チームは、この細菌の酵素を利用した新しいプラごみ処理システムの開発を目指しており、環境汚染問題への重要な解決策となる可能性があります。

プラスチックごみによる環境汚染は今や世界的な問題となっています。

そんなプラごみ問題を解決してくれるかもしれない「救世主」が新たに発見されました。

ケニア・国際昆虫生理生態学センター(ICIPE)の最新研究で、アフリカ原産のミールワームにプラスチックを食べて分解できる能力があることが判明したのです。

これまでにもプラスチックを分解できるミールワームは発見例がありますが、アフリカ原産の種では初めてとのことです。

研究の詳細は2024年9月12日付で科学雑誌『Scientific Reports』に掲載されています。

※ ミールワームの実際の画像はかなり刺激的なため、最後のページにまとめておきました。苦手な方は2ページ目までにしておきましょう。

 

目次

  • ミールワームがプラごみを食べてくれる?
  • 発泡スチロールを分解できる「アフリカ出身」の種を発見!
  • 【閲覧注意】ミールワームが発泡スチロールを分解する様子

ミールワームがプラごみを食べてくれる?

世界では現在、年間4億トン以上のプラスチックが生産されています。

そのうちリサイクルされているのはわずか10%未満であり、推定で1900万〜2300万トンは湖や川、海に流れ込んでいると見られています。

プラスチックには有毒な化学物質が含まれており、その廃棄物が水や土壌を汚染して、生態系に悪影響を与えているのです。

中でも「ポリスチレン」の処理は大きな問題となっています。

ポリスチレンは発泡スチロールの原材料として知られ、頑丈で壊れにくく、生分解が非常に困難な素材です。

その上、発泡スチロールは食品や電子機器、および工業用パッケージなど、汎用性がとても高いので、プラごみとしての廃棄量も自然と多くなっています。

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発泡スチロール/ Credit: canva

そこで専門家らは、ポリスチレンで作られた発泡スチロールを効率的に処理できる方法がないものかと模索してきました。

その中で見つかった解決策の一つが「ミールワーム」です。

ミールワームはゴミムシダマシという甲虫の幼虫期を指し、主に飼育用の生き餌として流通しています。

しかし過去の研究で、ミールワームの中に発泡スチロールを食べて分解できる能力を持つ種がいることが報告されていました。

例えば、豪クイーンズランド大学による報告では、中南米原産の「ゾフォバス・モリオ(Zophobas morio)」という種の幼虫が発泡スチロールをエサとして食べられることがわかっています(Microbial Genomics, 2022)。

他にもプラスチックの消費能力を持つミールワームの報告例はありますが、その一方でアフリカを原産とするミールワームの中に同じ能力を持つ種がいるかどうかは不明でした。

ところが今回、ケニアのナイロビに拠点を置くICIPEの研究チームにより、ついにアフリカ出身でプラスチックを分解できるスーパーワームが見つかったのです。

発泡スチロールを分解できる「アフリカ出身」の種を発見!

今回、調査対象となったのはアフリカ原産の甲虫・ガイマイゴミムシダマシ(学名:Alphitobius diaperinus)の幼虫であるレッサーミールワームです。

レッサーミールワームの幼虫期間は8〜10週間であり、暖かく、常に餌にありつける養鶏場などによく見られるといいます。

また本種はアフリカ出身ですが、現在では世界の多くの国にも広がっているとのことです。

チームは飼育下にあるレッサーミールワームを用いて、ポリスチレンを原材料とする発泡スチロールを分解できるかどうかを検証。

その結果、レッサーミールワームには発泡スチロールを食べて、自然分解できる能力があることが確認されました。

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発泡スチロールがエサになる⁈ / Credit: Canva, ナゾロジー編集部(2022)

さらにチームはレッサーミールワームを3つのグループに分けて、それぞれの条件で発泡スチロールの消費の仕方がどう変わるかをテストしています。

1つ目は発泡スチロールのみを餌として与えた条件。

2つ目は栄養価の高い「ふすま(小麦をひいて粉にした後に残る皮)」のみを餌として与えた条件。

3つ目は発泡スチロールとふすまを混ぜて与えた条件です。

その結果、発泡スチロールとふすまを混ぜた条件では、発泡スチロールのみを与えた条件に比べて、レッサーミールワームの生存率が高く、より多くの発泡スチロールを食べていることがわかりました。

これは栄養豊富なふすまを程よく混ぜることで、レッサーミールワームの発泡スチロール分解能力がさらに高まることを示唆するものです。

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ミールワームが発泡スチロールを食べた前後 / Credit: Fathiya M. Khamis et al., Scientific Reports(2024)

さらにチームは、レッサーミールワームのプラスチック分解を可能にしている腸内細菌も明らかにすることに成功しました。

発泡スチロールを与えられたレッサーミールワームの腸内には、さまざまな化学物質を分解できる細菌として有名な「プロテオバクテリア」「ファーミキューテス」が多く含まれることを見出したのです。

この他にも、クライベラ、ラクトコッカス、シトロバクター、クレブシエラといったプラスチックを分解できる酵素を産生する細菌が多く見られました。

つまり、発泡スチロールを自然分解しているのはレッサーミールワーム本人というよりも、レッサーミールワームの腸内に潜む細菌が作り出している酵素なのです。

しかもこれらの細菌は大規模に使用しても、昆虫や土壌環境に害を及ぼすことはありません。

そこで研究者らは、大量に廃棄された発泡スチロールを分解処理するシステムとして、これらの細菌(および細菌が作り出す酵素)を使った方法を開発したいと考えています。

要するに、レッサーミールワームがうじゃうじゃいる穴の中に発泡スチロールを捨てるといった原始的な方法ではなく、レッサーミールワームから分離した細菌を培養し、それを使ったより効率的な方法で発泡スチロールを処理するのです。

チームは今後、大規模な発泡スチロール廃棄物を安全かつ効率的に分解できるような微生物溶液の開発が可能かどうかを検討していきたいと話しています。

では最後に、発泡スチロールを分解するレッサーミールワームの実際の画像を見ておきましょう。

※ 苦手は方はここまでの閲覧にしておいてください。

【閲覧注意】ミールワームが発泡スチロールを分解する様子

こちらがミールワームによる発泡スチロール分解能力を検証した実験の様子です。

Aは実験前の発泡スチロール、Bは実験後の発泡スチロール、Cは発泡スチロールとふすまを混ぜた餌を食べるミールワーム、Dは発泡スチロールのみを餌とするミールワームです。

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Credit: Fathiya M. Khamis et al., Scientific Reports(2024)

なかなか刺激的ですが、本当にミールワームが発泡スチロールを食べていることがわかります。

ただ先ほども話しましたように、プラごみ処理システムを開発する際は、このように大量のミールワームを用いるのではなく、彼らから分離した細菌(およびその酵素)を使った方法が考えられています。

見た目はかなり強烈ですが、ミールワームは人類が生み出したプラごみ問題を解決できるヒントを持っているのです。

全ての画像を見る

参考文献

Plastic-eating insect discovered in Kenya
https://theconversation.com/plastic-eating-insect-discovered-in-kenya-242787

Can the mealworm be the answer to Africa’s plastic waste problem?
https://www.icipe.org/news/can-mealworm-be-answer-africa%E2%80%99s-plastic-waste-problem

元論文

Mitogenomic profiling and gut microbial analysis of the newly identified polystyrene-consuming lesser mealworm in Kenya
https://doi.org/10.1038/s41598-024-72201-9

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

ナゾロジー 編集部

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