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麻痺患者を再び歩けるように!自ら近寄り装着もサポートする「次世代外骨格」


韓国科学技術院(KAIST)は、下半身麻痺患者が自分で装着できる次世代外骨格「WalkON Suit F1」を開発しました。この外骨格は患者が他人の助けを借りずに装着でき、自ら歩行して患者に近づくことが可能です。通常、装着にはサポートが必要だったが、前向きにドッキングする新たな設計により、それを解決しています。さらに、サイバスロン2024で金メダルを獲得し、狭いスペースを移動するなどの困難な課題を克服しました。この技術革新により、麻痺患者は「再び歩く」という夢を実現しつつあります。

これまで外骨格は、下半身麻痺患者にとって「再び歩く」という夢をかなえてきました。


しかし、従来の外骨格は重くて複雑であり、患者は健常者のサポートを受けなければ外骨格を装着できませんでした。


最近、韓国科学技術院(KAIST)は自ら歩行し、麻痺患者の装着をサポートできる「次世代外骨格」を開発しました。


この外骨格を装着した患者は、「狭い隙間を歩く」など麻痺患者にとって難易度の高い様々なミッションをクリアし、義肢などを用いた障がい者の競技「サイバスロン2024」で優勝しました。


詳細は、2024年10月24日付の『韓国科学技術院』より発表されています。




目次



  • 再び歩く!麻痺患者の夢を実現させる「外骨格」とその課題
  • ひとりで歩き、患者に歩み寄る次世代外骨格「WalkON Suit F1」

再び歩く!麻痺患者の夢を実現させる「外骨格」とその課題


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下半身麻痺患者にとって「再び歩く」ことは夢 / Credit:Canva

下半身が麻痺した患者にとって、再び歩くことは夢のようなものです。


特に重症度が高いと一層そのように感じるかもしれません。


例えば、1982年に米国脊髄損傷協会(ASIA)によって定められた「ASIA機能障害尺度」では、そのグレードがE(正常)~A(完全麻痺)の5段階に分かれており、グレードが上がれば上がるほど、再び歩くことが困難になります。


しかし、KAISTの研究チームは2015年から、そのグレードA「運動・知覚の完全麻痺」の患者を対象に、再び歩けるようにする外骨格を開発してきました。


2016年、彼らは初めて下半身麻痺患者用の外骨格である「WalkON Suit 1」を発表。


その後、第四世代まで改良し、2020年には障がいの無い人の通常の歩行速度である時速3.2kmを達成した「WalkON Suit 4」を発表しました。


しかし、この外骨格には、他のウェアラブルロボットに共通する根本的な問題がありました。


それは、外骨格を装着するには、他人の助けが必要だということです。


患者は、外骨格を装着できればひとりで歩くことができますが、そもそも装着する時に、誰かに助けてもらわなければいけなかったのです。


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ひとりで装着できる次世代外骨格「WalkON Suit F1」 / Credit:KAIST

しかし、研究チームは諦めませんでした。


最近、この問題を解決した、患者ひとりで装着できる次世代外骨格「WalkON Suit F1」の発売に至ったのです。


この外骨格ロボットでは、後ろ向きに座る方式ではなく、前向きにドッキングする方式が採用されているため、患者は車椅子から降りてロボットに乗り込む必要がありません。


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他人のサポートを必要しない外骨格。短時間の歩行であれば杖も不要 / Credit:Exoskeleton Lab @ KAIST(YouTube)_WalkON Suit F1: The Next-Gen Exoskeleton That Walks Itself(2024)

またロボット自体が装着をサポートするため、途中で誰か人間の助けを借りる必要もありません。


このように、患者ひとりでの装着が可能になったのは、この外骨格ロボットが優れたバランス機能を有しているからです。


ひとりで歩き、患者に歩み寄る次世代外骨格「WalkON Suit F1」


新しい外骨格ロボット「WalkON Suit F1」は、着用前の状態でも、人型ロボットのように、2本足で立ち、自力で歩行することが可能です。


そしてロボットの方から歩いて患者(使用者)に近づくことができます。


また患者が使用したり装着したりする際にロボットに体重をかけたとしても、重心を能動的に制御するバランス機能により、倒れることはありません。


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単独で立ち、歩行できる外骨格ロボット。杖で突いても倒れない / Credit:Exoskeleton Lab @ KAIST(YouTube)_WalkON Suit F1: The Next-Gen Exoskeleton That Walks Itself(2024)

意図的にロボットを杖で突いたりしても、2本足でしっかりとバランスを保っています。


外骨格を装着した患者は、基本的には歩行時に杖を併用しますが、この優れたバランス機能により、杖無しでもいくらか歩いたり、直立した状態で両手を使った立ち仕事を短時間行えたりします。


こうした技術は、モーターと減速機の出力密度が既存技術の2倍に向上したことや、高度なモーション制御アルゴリズム、障害物検出用の視覚認識システムの実装によって実現しました。


そして研究チームは、このWalkON Suit F1を使用し、2024年10月27日に、4年ぶりに開催される「サイバスロン(義肢などを用いて障がい者が競技に挑む国際スポーツ大会)」に参加しました。


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狭い隙間も移動できる。競技大会で金メダルを獲得 / Credit:KAIST

参加者は、限られた時間内に「狭い椅子の間を横に歩いて移動する」「杖に頼らず歩く」「狭いドアを通り抜け、ドアを閉める」「キッチンで食事の準備をする」などの様々なミッションを完了するよう求められました。


チャレンジの結果、KAISTチームとWalkON Suit F1は、6分41秒で全てのミッションを完了し、金メダルを獲得することができました。


2位や3位のスイス、タイのチームがどちらも10分以内にタスクを完了できなかったことを考えると、WalkON Suit F1が現段階で圧倒的な性能を有していることが分かります。


こうした新しい技術の開発は、下半身が完全に麻痺した患者が諦めていた「自分で歩く」という夢をかなえてくれるはずです。



全ての画像を見る

参考文献

KAIST Introduces a Wearable Robot that Walks and Puts itself on to Disabled Persons
https://www.kaist.ac.kr/newsen/html/news/?mode=V&mng_no=40790

Team KAIST Crowned Champion for their World’s Best Ironman, Winning their 2nd Consecutive Win at the Cyborg Olympics
https://www.kaist.ac.kr/newsen/html/news/?mode=V&mng_no=40910

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部

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