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『便秘』は心臓発作のリスクを2倍以上高める重大危険因子だった!


便を十分に出し切れない状態が続く「便秘」。

これは悩んでいる人が多い一方で、よほど重症でない限りはありふれた症状だと軽く考えてしまう人も多いかもしれません。

しかし、オーストラリアのモナシュ大学(Monash University)生物科学部に所属するフランシーヌ・マルケス氏ら研究チームによる新たな研究で、便秘の人は、心臓発作などの心臓病を引き起こすリスクが2倍以上高いと判明したのです。

研究の詳細は、2024年8月16日付の学術誌『American Journal of Physiology-Heart and Circulatory Physiology』に掲載されました。

私たちは、よくあるトラブル「便秘」について、もっと真剣に考えなければいけないのかもしれません。

目次

  • 便秘は「よくある健康トラブル」?それとも「重大な問題」?
  • 便秘は心臓発作のリスクを高める
  • 便秘と心臓病はどのように関連しているのか

便秘は「よくある健康トラブル」?それとも「重大な問題」?

便秘は、特に高齢者や女性に多い症状で、世界人口の約14%が抱えている健康トラブルです。

この数字が示すように、何日か便が出ないことで苦しんでいる人は少なくありません。

ただ研究チームは便秘が「よくある健康問題でありながら、その危険性が見過ごされがち」だと警告を発しています。

多くの人が便秘で悩んでいる
多くの人が便秘で悩んでいる / Credit:Canva

確かに、よほどの重症状態でない限り、単に便が出にくいという問題を危険視する人はあまりいないでしょう。

しかしマルケス氏らの新しい研究によると、実は、この症状が別の重篤な症状と関連している可能性があるというのです。

それが心臓発作です。

心臓発作は命に関わる病気なので、便秘と心臓発作が関連するとしたら看過できない問題です。ただ、この二つがどうして関連するのでしょうか?

マルケス氏も次のように述べています。

心臓病はこれまで、高血圧や肥満、喫煙などを主な原因として考えてきました。

しかし、これらの要因だけで重大な心臓病の発生を完全に説明することはできません

そのため、マルケス氏ら研究チームは、心臓発作・脳卒中・心不全などの発症と、それによる死亡を含む「主要心血管イベント(MACE)」が、主要な原因とされる問題以外に、どのような要因と関連するかを調べ直すことにしました。

これまでの研究では、便秘と高血圧の関連性が示されており、このことから心臓病と便秘も何らかの関連があるという考えがあります。

そこで今回、研究チームは、便秘がMACEの発生リスクを増加させるかもしれないと考え、この2つの関連性に焦点を絞って調べました。

便秘は心臓発作のリスクを高める

研究チームは、イギリスの長期大規模バイオバンク研究「UKバイオバンク」を用いて、40万8354人のデータの取得し、2万3814件の便秘の症例を特定しました。

またUKバイオバンクの情報には、個々の健康記録やライフスタイル、遺伝子情報などが含まれています。

そしてチームは、これらの情報を元に、便秘と主要心血管イベント(MACE)にどのような関連性があるのか分析しました。

便秘に悩んでいる人は、心臓発作のリスクが2倍以上高い
便秘に悩んでいる人は、心臓発作のリスクが2倍以上高い / Credit:Canva,ナゾロジー編集

その結果、便秘に悩む人は、そうでない人に比べて、MACE(心臓発作、脳卒中、心不全による入院など)を引き起こす可能性が2倍以上も高いと分かりました。

また、便秘と高血圧の両方を抱える患者は、高血圧のみの患者に比べて、心臓発作を引き起こすリスクが34%も高くなると分かりました。

この点についてマルケス氏は、「便秘が高血圧に関連する心血管疾患のリスクを増大させ、心臓発作や脳卒中が生じる確率をさらに高めるかもしれない」と述べています。

では、どうして便秘と心臓発作が関連しているのでしょうか。

便秘と心臓病はどのように関連しているのか

便秘と心臓病の根底には、同じ遺伝的要因があるかもしれない
便秘と心臓病の根底には、同じ遺伝的要因があるかもしれない / Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

今回の研究では、便秘とMACEの間の遺伝的関連性も調査され、この2つに遺伝的相関関係があると認められました。(詳細な点はまだ分かっていません)

研究チームは、「便秘とMACEのそれぞれの症状の根底には、共通の遺伝的要因があるかもしれない」と推察しており、「この発見は腸の健康と心臓の健康を結び付ける新たな研究の道を開くものです」と続けています。

加えてチームは、便秘とMACEを関連付ける理論の1つとして、「リーキーガット(腸管壁侵漏)」を挙げています。

リーキーガットとは本来腸壁を透過しない毒素等入り込むことがあります。

この状態がリーキーガット(腸管壁侵漏)と呼ばれており、感染症やアレルギーなど全身に様々な不調を引き起こします。

これは高血圧やがんの発病や進行とも関連があると考えられています。

腸のバリア機能の低下が、便秘と心臓病の両方に関連しているのかもしれない
腸のバリア機能の低下が、便秘と心臓病の両方に関連しているのかもしれない / Credit:Canva

リーキーガットでは、腸内が炎症を起こし、腸の運動が鈍くなるため、これが便秘を引き起こす可能性があるのです。

またリーキーガットの原因の1つは不適切な食事やストレスだと考えられており、これも便秘を引き起こす要因です。

そのため研究チームは、便秘と関連しているリーキーガットによって、心臓発作のリスクが高まっているのかもしれないと考えています。

もちろんこれは現段階での推測に過ぎず、正確な理解を得るためには、更なる研究が必要でとなります。

それでも、患者に2倍近い発症リスクの差があるとなると、便秘と心臓発作には、何らかの関連性があると考えられます。

便秘を「よくある健康トラブル」として見過ごすのではなく、心臓発作のリスクを増大させる「重大な問題」と関連していると警戒しておくことは、非常に重要になるかもしれません。

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参考文献

New study finds constipation is a significant risk factor for major cardiac events
https://www.monash.edu/science/news-events/news/current/new-study-finds-constipation-is-a-significant-risk-factor-for-major-cardiac-events

Constipation linked to significantly elevated risk of cardiac events
https://newatlas.com/health-wellbeing/constipation-cardiac-risk/

元論文

Constipation is associated with an increased risk of major adverse cardiac events in a UK population
https://doi.org/10.1152/ajpheart.00519.2024

ライター

大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。

編集者

ナゾロジー 編集部

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