鼻からチューブを通して、胃の内部を観察する胃カメラや、肛門から挿入する大腸内視鏡検査は、できれば私たちが行いたくない検査の1つでしょう。
ただこれらの検査は、早期に発見できる健康問題が多いため、気が乗らなくても毎年健康診断で内視鏡検査を実施している人は多いでしょう。
しかしこれらの検査は近い将来、ぐっと楽になるかもしれません。
医療デバイスを開発するアメリカの企業「Endiatx」は、カメラを搭載したカプセル型ロボット「PillBot」の開発したのです。
マルチビタミンのカプセルと同じサイズのこのロボットは、飲み込むだけで胃や腸を撮影し、検査してくれます。
このPillBotは、現在臨床試験の段階に入っており、アメリカ食品医薬品局(FDA)の承認を得ることを目指しています。
目次
- つらい「内視鏡検査」
- カプセルを飲み込んで検査する「PillBot」
つらい「内視鏡検査」
内視鏡検査とは、先端に小型カメラを内蔵した細長い管を口や鼻から挿入し、胃や腸に異常が無いか調べる検査のことです。
そのため「内視鏡検査」と聞くと、多くの人は痛みや不快感を連想します。
内視鏡が喉を通る際に、どうしても咽頭反射(いんとうはんしゃ)が起きるため、何度も「オエッ」と吐きそうになってしまうんじゃないかと怖がっている人は多いでしょう。
しかし実際は、麻酔などを併用するためこれらの検査が考えられているほど辛い検査ということはありません。
とはいえ、なかなか気が乗らないという人も当然多いでしょう。
ただ胃潰瘍や食道炎、胃がんなどの診断を受けるためには、どうしても内視鏡検査は避けて通れません。
これらの病気は初期症状が軽いため、内視鏡検査による早期発見と治療がかなり重要なのです。
そのため、誰もがもっと気軽にこれらの検査を実施できるようにすることは医療の世界において非常に重要です。
そこで医療デバイスを開発するアメリカの企業「Endiatx」が開発したのが、カプセルタイプの内視鏡カメラ「PillBot」です。
カプセルを飲み込んで検査する「PillBot」
アメリカの企業「Endiatx」が開発した「PillBot」は、私たちを内視鏡検査の苦痛から解放してくれるはずです。
PillBotはマルチビタミンほどの大きさのカプセル型の内視鏡ロボットです。
使用方法は非常にシンプルです。
まず、検査当日の朝は食事を控え、水を多めに飲まなければいけません。
その後、検査段階になると、PillBotと水を一緒に飲み込みます。
飲み込まれたPillBotは、胃の中で自動的に移動し、約10分で検査を完了します。
PillBotが胃の中を泳いでいる間、内蔵されたカメラが高解像度の画像を提供。医師は即座に異常を発見できるというわけです。
しかも、このカプセルは無線操作が可能であり、外部からの指示で移動や撮影を行うことができます。
検査後は、カプセルが自然に体外へ排出されるようになっています。
このPillBotでは、従来の内視鏡検査と同じく、リアルタイムでの診断が可能で、迅速に結果が得られます。
その上で、従来の内視鏡検査に伴う痛みや不快感がなく、費用も抑えられるのだから、まさに「優れもの」といえます。
ちなみに、過去には他の企業も、「カプセル内視鏡」として、似たようなアイテムを開発してきました。
しかし、「PillBot」のように、自由な操作やリアルタイムでの診断が可能なカプセル内視鏡は少なく、これらの点がPillBotの利点だと言えます。
現在、この「PillBot」は臨床試験の段階に入っており、FDAの承認を目指しています。
FDAの承認が得られるなら、医療現場で広く使用されることでしょう。
さらにEndiatx社は、PillBotの技術を発展させ、消化管の他の部分にも適用できるよう研究を進めています。
将来的には、様々な臓器の検査や、癌の早期発見など、多岐にわたる診断ツールとして活用が期待されています。
参考文献
Swallowable PillBot begins clinical trials, and microsurgeons on the way
https://newatlas.com/health-wellbeing/pillbot-begins-clinical-trials/
PillBot™
https://endiatx.com/
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部