ドラえもんは4次元ポケットを持っていますが、4次元とはなんなのでしょう?
よくこの世界は3次元で、4次元は時間を足したものなんて説明されることがありますが、これはどういう意味なのでしょうか?
超ひも理論に至っては、宇宙を表現するのに10次元が必要になると言っていて、さらにM理論では宇宙は11次元必要と言っています。
もうこうなると次元がなんなのかワケがわからなくなってしまいます。
しかし、次元の意味を理解するとき、そんなに難しく考える必要はありません。
今回はその考え方について解説していきます。
目次
- 人と待ち合わせするとき、私たちは4次元を使っている
- 動画は何次元なのか?
- 4次元の迷路を作って遊んだりできるだろうか?
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人と待ち合わせするとき、私たちは4次元を使っている
物理や数学の話に、4次元とか五次元という単語が出てくると、「ああもう無理! たぶん理解できない」なんて気分になってしまいますが、慌てることはありません。
大抵の場合、次元というのは、計算するために必要なパラメータ(変数)はいくつかと言っているに過ぎないからです。
これはもっとわかりやすい言い方をするなら、次元とは位置を特定するために必要な情報の数のことです。
例えば誰かと待ち合わせをすることを考えてみましょう。
そのとき、あなたは相手とどんな取り決めをするでしょうか?
普通は駅名とかで決めますが、場所は地図上のXYという2つの軸座標で指定されるので、2次元の情報です。
もしそれが建物の場合には、「何階にいるよ」という情報も必要になるでしょう。これで高さZを含めた3次元の情報になります。
しかし、これだけでは待ち合わせになりません。「何日の何時頃ね」と普通は約束するはずです。これで時間Tを含めた4次元の情報になります。
つまり、私たちは人と待ち合わせるために、全部で4つのパラメータが必要になります。これは、私たちの住むこの世界が4次元の構造を持っているということです。
よく2次元は縦横の世界、3次元はそこに奥行きを足した世界、4次元はそこに時間を含めた世界なんて表現されます。この説明に「は?時間?なんで縦横奥行きの次が時間なの?」と思った人は多いかもしれません。
その理由は、3次元の空間と一方向に進み続ける時間軸の合わさった世界が、私たちの住むこの世界だからです。そのため大抵4次元の説明を求められた人は、「縦横奥行きの空間に時間を足すと4次元なんだよ」という説明するのです。
ただ、通常時間軸は空間軸の様に自由に操作可能な軸ではないため、私たちの宇宙を表現するときは「4次元空間」という呼び方はしないで「4次元時空」と呼びます。
次元は全部くっついたものとして考えると、イメージができなくて難しくなりますが、このように次元を構成する軸をいくつかに分けて考えると案外簡単に人間の脳でも理解できたりするものです。
そしてこうした考え方ができるようになると、動画は何次元なのか? という問題もすんなり答えられるようになります。
動画は何次元なのか?
私たちはモニターや、そこに映る映像、絵画などをまとめて2次元と呼んだりします。
しかし、動画は2次元なのでしょうか?
普通の絵は止まったまま動きませんが、動画の場合、時間の経過に合わせて写っているものが変化していきます。
写真なら「画面の中央に写っているものがおわかりいただけただろうか?」なんて情報の提示の仕方をしますが、動画紹介の場合「話題の箇所は3分15秒後から」みたいな情報の出し方をします。
動画には二次平面としてのXY軸以外に、一次元の時間軸シークバーがついていて、見せたい場面やものを紹介するには時間も必要な情報になってきます。
ここまで説明を聞いてきた人は、もうすでにおわかりでしょう。
つまり動画は空間次元2個と時間次元1個が組み合わさった3次元時空なのです。
一般的には平面は2次元、立体は3次元という言い方をしますが、時間のような空間からは独立したパラメータが付属することで、2次元平面の動画は理論上は3次元構造になるのです。
4次元の迷路を作って遊んだりできるだろうか?
ここまでで分かったように、次元はあるものの位置や変化を示すために必要となるパラメータの数を示しているものです。
そしてそのパラメータは常に空間だけを示すものではありません。
時間であったり、本ならページ数のように空間とは独立した値のときもあります。
なので超ひも理論のように、宇宙が10次元と言った場合でも、それは素粒子を構成するような存在(ストリング)まで表現しようとしたら、その位置などを計算するのに変数が10個必要になってしまった、というだけなのです。
そのため物理学者や数学者が、10次元や11次元の話をしたとき、彼らは何も複雑な空間を頭に思い描いているわけではありません。単に自分が考えている問題を数式にしたとき変数はいくつになるか? と考えているだけなのです。
そしてそれが4つ必要だなと思ったら4次元の問題と表現するし、10個必要だとなったら10次元の問題と表現しているだけなのです。
こうした理屈を理解すると4次元の迷路なんてものを作ることも可能になってきます。
これは普通の2次元の迷路を左右二つ並べてあるだけですが、右の迷路を進むと左の迷路の形が変化し、左の迷路を動くと右の迷路の形が変化するように作られています。
しかし、2つの迷路の形はそれぞれの迷路の位置ごとに関連づいていて、2つで1つの迷路です。自分の位置となる玉は二つの迷路にそれぞれ描かれていますが、実際は2次元+2次元という方法で4次元上の一つの位置を表現しています。
これは明治大学の先生が、学生時代に思いつきで作ったプログラムが元になっているそうですが、実際に人にプレイさせると、2つの迷路の関連性がだんだん理解できて、4次元の迷路としてゴールまでの道筋を見つけ出すことができるようになるといいます。
私たちの脳は、この3次元空間の世界に対応しているため、3次元以上の空間をイメージすることはできないようにできています。
しかし、2次元+2次元という形で位置を表現する迷路なら4次元の迷路も理解できてしまうのです。
このように4次元とか五次元というものを考えるときに、イメージできないものだからと難しく考える必要はありません。
位置が特定できればいいのだから、場合によっては次元を2つに分けてしまえば、ずっと理解しやすくなるのです。
参考文献
重力とは何か(幻冬舎新書)
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ライター
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。
編集者
ナゾロジー 編集部