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唐辛子をよく食べる人ほど太っている!最新研究がイメージと逆の報告


唐辛子(チリペッパー)と聞くと、その刺激的な辛さを思い浮かべる人が多いでしょう。

またその辛さから、汗が出るとかダイエット効果があるというイメージを持つ人も多いかもしれません。

確かに唐辛子の辛み成分であるカプサイシンには体温を上げて代謝を高め、脂肪燃焼を促す効果があると言われているので、これまでの通説では間違ってイメージではありません。

しかし、アメリカで行われた大規模調査(NHANES)データを用いた新しい研究で、唐辛子をよく食べる人はむしろ肥満傾向を持つことが示されたのです。

これは、唐辛子を食べることを控えた方が肥満を防ぐのに好影響を及ぼす可能性を示唆しています。

この研究の詳細は、2024年5月30日付で学術誌『Frontiers in Nutrition』に掲載されています。

目次

  • 唐辛子は本当に肥満対策になるのか?
  • 唐辛子をよく食べる人たちはどういう人か考えよう

唐辛子は本当に肥満対策になるのか?

近年は健康への意識の高まりから、体に良い影響のある食事やダイエットに効果的な食事を好む人が増えています。

確かに食事の内容で、病気のリスクを減らしたり、痩せることができるならそれに越したことはありません。

その中でも唐辛子は、香辛料として幅広い料理に利用でき、また辛さには血行の促進や脂肪燃焼というイメージがあるため、健康に良い食品とし注目されています。

実際、様々な研究がカプサイシンの健康効果について報告しています。

しかし、本当に唐辛子で脂肪が燃焼し、痩せることができるのでしょうか?

唐辛子の摂取は本当に肥満率を低下させるのか?
唐辛子の摂取は本当に肥満率を低下させるのか? / Credit:canva

今回の研究チームは、そんな疑問から唐辛子の摂取頻度と肥満との関係を明らかにしようと調査を行いました。

対象は2003年から2006年の米国全国健康・栄養調査(NHANES)に参加した20歳以上の人たちでした。

分析に当たっては、唐辛子の摂取頻度に関する回答がなかった者や摂取カロリーが極端な人は除外し、最終的に6138人を対象にしています

NHANESでは、過去12カ月の唐辛子の摂取頻度について、「どのくらいの頻度で唐辛子を食べますか?」という質問項目がありました。

今回の研究では、その回答をもとに、次の3つのグループに分けて分析しています。
・食べない群:月に0回
・時々食べる群:週に1回未満
・よく食べる群:週に1回以上

そして、この研究では、BMIが30以上の者を肥満と定義しました。一例として、身長が170cmの人の場合、およそ87kg以上が肥満と解釈されます。

分析では、結果に影響する可能性のある人口統計学的要因(年齢、性別など)、社会経済的要因(教育水準、婚姻状況など)、ライフスタイル要因(喫煙習慣、飲酒習慣など)、健康状態(糖尿病や高血圧の有無)、食事要因(摂取エネルギー量、タンパク質摂取量など)を考慮した上で、唐辛子の摂取頻度と肥満との関係を調べています。

その結果分かったのは、唐辛子を食べない群に比べると、時々食べる(週に1回未満食べる)群では37%、よく食べる(週に1回以上食べる)群では55%、肥満のリスクが高いというものでした。

これは一見すると、意外に思える結果です。

なぜ、唐辛子をよく食べている人たちは、肥満の傾向があるのでしょうか?

唐辛子をよく食べる人たちはどういう人か考えよう

実のところ、辛い食べ物をよく食べる人たちが肥満傾向なのは以前から示されています。

例えば、40万人以上を調査対象とした中国の大規模調査をもとにした2014年の研究では、辛い食べ物をよく食べている人たちのBMIが高いことが明らかになっています。

今回の研究を実施した研究者らは、唐辛子の摂取頻度と肥満との関係を調べる際に、遺伝、環境、食事、生活習慣の影響を考慮する必要があることを前置きした上で、唐辛子をよく食べる人は高カロリーかつ不健康な食事をしがちな可能性があると考察しています。

要するに、高カロリー・高脂肪の食事と一緒に唐辛子を食べるために、結果的に体重が増えてしまうおそれがあるということです。

唐辛子が含まれる料理には高カロリーのものもある
唐辛子が含まれる料理には高カロリーのものもある / Credit:canva

では唐辛子の利用の仕方に問題があるだけで、カプサイシンの健康効果自体は事実なのでしょうか?

唐辛子の辛味成分であるカプサイシンの効果に関する研究を見ても、脂肪燃焼や食欲と満腹感をコントロールするなど、ダイエットにプラスに働く効果を認めた研究は確かに報告されています。

しかしその一方で、報告されるような効果が認められないと反論する研究や、唐辛子を過剰にとると食べる量がむしろ増えることにつながる可能性を示した研究もあります。

こういった先行研究の食い違いは、重要な条件を見落としている可能性や、カプサイシンの効果が考えているより複雑なメカニズムである可能性を示唆しています。

そのため、今回の研究者らは、唐辛子を食べることと肥満の関係のメカニズムを明らかにするためには、今後さらに研究を深めていく必要性があると述べています。

今回発表された研究は、限定された地域の特定の集団について一定期間調査した結果に過ぎず、分析についても関連性のみに着目した横断研究です。そのため因果関係を解き明かすものではありません。

しかし、唐辛子を食べることのダイエット効果に疑問を投げかける結果であることに違いはありません。

ダイエット効果があると思い込んで鍋料理に唐辛子を入れたとしても、肝心の鍋の中身が高カロリー・高脂質の食べ物ばかりであれば、唐辛子がなくても低脂質な野菜や魚介類が中心の鍋にダイエット効果で負けてしまうのは当たり前です。

私たちは健康効果のある食材が入っていると言われると、高カロリーの食事でも食べて問題ないと考えてしまいがちです。

しかし、ささやかな健康効果を言い訳に、カロリーの高い食事を続けていればどんどん太ってしまうのは仕方のないことかもしれません。

全ての画像を見る

参考文献

Does eating chili pepper decrease or increase obesity risk?
https://www.news-medical.net/news/20240603/Does-eating-chili-pepper-decrease-or-increase-obesity-risk.aspx

元論文

Does chili pepper consumption affect BMI and obesity risk? A cross-sectional analysis
https://doi.org/10.3389/fnut.2024.1410256

Spicy food consumption is associated with adiposity measures among half a million Chinese people: the China Kadoorie Biobank study
https://doi.org/10.1186/1471-2458-14-1293

ライター

髙山史徳: 大学では健康行動科学、大学院では体育学・体育科学を専攻。持久系スポーツの研究者として約10年間活動。 ナゾロジーでは、スポーツや健康に関係する記事を執筆していきます。 価値観の多様性を重視し、多くの人が前向きになれる文章を目指しています。

編集者

海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。

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