少年時代にこんな体験をしたら一生忘れられない思い出となるでしょう。
このほど、アメリカ北部ノースダコタ州にて、3人組の少年がハイキング中に地面から突き出たティラノサウルスの化石を偶然に発見したことが報じられました。
しかもこの化石は10代の若い個体のものであり、恐竜の王者たるティラノサウルスの成長プロセスを知る上で貴重な発見となっています。
報告の詳細は2024年4月6日付で米デンバー自然科学博物館(DMNS)のオンライン雑誌『CATALYST』に掲載されました。
目次
- 真夏のハイキング中に「恐竜の骨」と遭遇!
- 希少な「10代のティラノサウルス」の化石と判明!
真夏のハイキング中に「恐竜の骨」と遭遇!
この物語は2022年7月の米ノースダコタ州マーマース近郊に広がるバッドランズから始まります。
当時7歳のリアム(Liam)くんと10歳のジェシン(Jessin)くんのフィッシャー兄弟と、そのいとこで当時9歳のカイデン・マドセン(Kaiden Madsen)くんの3人は、岩だらけの荒涼としたバッドランズでハイキングをしていました。
この地は兄弟の父親であるサム・フィッシャー(Sam Fisher)さんのお気に入りの場所であり、このときも3人のハイキングに同行していたといいます。
その最中、3人の少年は風化した堆積岩層から何やら大きな突起物が突き出ているのを見つけました。
近づいてよく見てみると、それは明らかに恐竜の骨だったのです。
実はこのエリアには「ヘルクリーク累層」といって、約6600万年以上前に遡る白亜紀末の地層が保存されていることが知られていました。
過去には実際にバッドランズの地層から恐竜の化石がいくつも出土しています。
子供たちの発見に驚いた父親のサムさんは、高校の同級生で、現在はアメリカ中西部コロラド州にあるデンバー自然科学博物館の古生物学者となっているタイラー・ライソン(Tyler Lyson)さんに連絡をしました。
バッドランズはタイラーさんにとっても馴染み深い故郷であり、子供の頃からこの場所でよく発掘ごっこをしていたといいます。
また3人の少年たちとも交流が深く、特にフィッシャー兄弟はハロウィンになるとタイラーさんの仮装をしていたほどだという。
タイラーさんは送られてきた写真を見て、「君たちは間違いなく恐竜の化石を発見したぞ!」と言いました。
ただし、地面から突き出た部分的な骨だけでは何の恐竜か判断できません。
そこでタイラーさんは化石の正体を突き止めるため、翌年7月に3人の少年を連れてバッドランズで本格的な発掘作業を開始しました。
希少な「10代のティラノサウルス」の化石と判明!
この発掘調査には少年たちの家族だけでなく、ジャイアント・スクリーン・フィルム(Giant Screen Films)というドキュメンタリー制作チームも同行しています。
(チームが制作したトレーラー映像は記事の最後に添付してあります)
発掘はバッドランズの土地管理局の許可を得て実施されました。
11日間にわたる掘削作業の末、チームは頭蓋骨と尻尾、脚、腰の部分的な骨を発見。
そして回収された骨の化石は、恐竜の王者たるティラノサウルスの骨であることが判明したのです。
加えて、このティラノサウルスは大人でなく、まだ未熟な若い個体であることがわかりました。
発掘された骨は周囲の岩石ごと切り出し、ヘリコプターに乗せてデンバー自然科学博物館へと輸送されています。
持ち帰った骨をより詳しく調べたところ、この若いティラノサウルスは全長約7.6メートル、体重1.5トン以上に達すると推定されました。
私たちからするとこれでも十分な大きさですが、大人のティラノサウルスは全長12メートル以上、体重4.5〜8トンにもなります。
またチームは骨の分析から、このティラノサウルスが13〜15歳頃に死んでいたことを割り出しています。
ティラノサウルスの平均寿命がどれくらいだったかは定かでありませんが、これまでの研究によると約30年くらいと見積もられています。
少年たちは同じ10代ということもあって、このティラノサウルスを「兄弟(Brother)」と親しみを込めて呼んでいるそうです。
その一方で、タイラーさんは発掘作業で見つかるティラノサウルスの化石はほとんどが成熟した大人のものなので、若い個体の化石は非常に貴重であると述べました。
特にティラノサウルスがどのような成長プロセスを辿って大人になるかを理解する上で、今回の化石は重要な情報源になると期待しています。
今回見つかった化石は6月21日からデンバー自然科学博物館にて一般展示される予定です。
また、ジャイアント・スクリーン・フィルムが制作したドキュメンタリー映画『T.REX』も同館に併設されているインフィニティ・シアターで上映されるとのこと。
こちらはその公式トレーラー映像です。
参考文献
Teen Rex Discovery Roars into the Denver Museum of Nature &Science
https://www.dmns.org/catalyst/museum-stories/teen-rex-discovery-roars-into-denver/
Three boys found a T. rex fossil in North Dakota. Now a Denver museum works to fully reveal it
https://phys.org/news/2024-06-boys-rex-fossil-north-dakota.html
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
ナゾロジー 編集部