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泳ぐ姿をまだ誰も見たことがない!幻の巨大イカの赤ちゃんを発見か


奇跡的な遭遇がなされたかもしれません。


皆さんは「世界最大の巨大イカ」と聞くと、おそらく「ダイオウイカ」のことを思い浮かべるでしょう。


しかしこれと別にもう一体、”大王”の名を持つ巨大イカが存在します。


それが「ダイオウホウズキイカ」です。


ダイオウホウズキイカはこれまで、漂流した死骸などが回収されているばかりで、生きた個体は一度も見つかっていないのです。


しかし最近、米カリフォルニア州に拠点を置く海洋探査・保全団体「Kolossal」は、世界初となるダイオウホウズキイカの赤ちゃんの生きた姿を捉えたかもしれないと報告したのです。


ダイオウホウズキイカとはどんな存在なのか、新たに撮影された映像とともに見てみましょう。




目次



  • 海洋世界の巨大な謎「ダイオウホウズキイカ」とは?
  • ダイオウホウズキイカの赤ちゃんを生きた姿で発見?

海洋世界の巨大な謎「ダイオウホウズキイカ」とは?


ダイオウホウズキイカ(学名:Mesonychoteuthis hamiltonia)は、海洋世界における最大の謎の一つです。


本種はサメハダホウズキイカ科というグループに属し、ダイオウイカと並ぶ「世界最大級の無脊椎動物」として知られています。


最大全長は約12〜14メートルで、体重は500キロに達するといいます。


ダイオウイカでは最大全長18メートルのものが過去にヨーロッパで見つかったといわれているので、長さでは敵いませんが、体重だけでいうとダイオウホウズキイカが世界最大の無脊椎動物となるでしょう。


ダイオウホウズキイカの復元イメージ。人間とのサイズ比較
ダイオウホウズキイカの復元イメージ。人間とのサイズ比較 / Credit: ja.wikipedia

本種は南極海周辺の水深2000メートルの深海域をホームグラウンドにしているとされています。


ただこの自然の生息地で生きた個体が見つかった例はありません。


これまでのところ、ダイオウホウズキイカの標本は漁網に引っかかったり、海岸に打ち上げられたりしたものがわずかに見つかっているのみです。


現時点で最も完全なダイオウホウズキイカの全身標本は、ニュージーランド国立博物館テ・パパ・トンガレワにて展示されているこちらの標本だけと見られています。


ニュージーランド国立博物館テ・パパ・トンガレワにて展示されている全身標本
ニュージーランド国立博物館テ・パパ・トンガレワにて展示されている全身標本 / Credit: ja.wikipedia

そのため、ダイオウホウズキイカの詳しい生態や繁殖地などはほとんど未解明のままなのです。


そんな最中、Kolossalの海洋探査チームはこのほど「ダイオウホウズキイカの赤ちゃんを発見したかもしれない」と驚きの報告をしました。


もしこれが本当にダイオウホウズキイカの赤ちゃんであれば、世界初の貴重な発見となります。


では、実際の映像を見てみましょう。


ダイオウホウズキイカの赤ちゃんを生きた姿で発見?


海洋探査チームは2025年までにダイオウホウズキイカを自然の生息地で発見し、その生態を解明するという野心的な計画を打ち出していました。


なぜ2025年かというと、ダイオウホウズキイカが学術的に初めて記載されたのが1925年であり、2025年はちょうど100周年にあたるからです。


そこでチームは2022年12月〜2023年3月の間に、生きたダイオウホウズキイカを見つけようと4度にわたる南極沖調査に出かけました。


調査に使用したのは極地観光船「オーシャン・エンデバー(Ocean Endeavor)」で、これには最大水深400メートルまで潜水できるカメラシステムが搭載されています。


極地観光船「オーシャン・エンデバー」
極地観光船「オーシャン・エンデバー」 / Credit: The Polar Travel Company

4度の深海探査の結果、サンゴやウミユリ、クダクラゲといった生物を多数発見したものの、お目当てのダイオウホウズキイカの成体は見つかりませんでした。


ところが映像を分析している中で、全長10〜12センチの小さな透明のイカが映り込んでいるのに気づいたのです。


このイカは海中を漂う無数のマリンスノー(表層から深層に降り注ぐ有機物の残骸)に紛れていたため、鮮明には見えませんでした。


しかし研究者らは映像をできるかぎり分析した結果、このイカは同じサメハダホウズキイカ科に属するナンキョクスカシイカ(学名:Galiteuthis glacialis)の成体か、ダイオウホウズキイカの幼体のどちらかである可能性が高いと結論しています。


実際の映像がこちらです。(全編は記事の最後に添付してあります)


画面右上から1匹のイカが横切っているのがわかる
画面右上から1匹のイカが横切っているのがわかる / Credit: IFLScience / Deep Sea Antarctica –Possible Juvenile Colossal Squid Sighting(youtube, 2024)

もしこれがダイオウホウズキイカの幼体であるなら、自然の生息地で生きた姿を捉えた世界初の映像となります。


一方で研究者らによると、ナンキョクスカシイカの標本も過去に数例しか見つかっていないため、いずれにしても貴重な映像になるという。


しかし今回の短い映像だけでは、このイカの正体を断定することができなかったので、ダイオウホウズキイカを求める調査はさらに続行されます。


Kolossalの創設者で今回の海洋探査を率いたマット・マルレナン(Matt Mulrennan)氏は「ダイオウホウズキイカは私たちがいかに海について知らないかを改めて教えてくれる存在です」と話しました。


果たして、100周年のアニバーサリーを迎える2025年までに生きたダイオウホウズキイカを見つけることはできるのでしょうか。


今後も注目が集まります。



全ての画像を見る

参考文献

“Mystery”Glass Squid In Antarctica Could Be First-Ever Colossal Squid Baby Filmed
https://www.iflscience.com/mystery-glass-squid-in-antarctica-could-be-first-ever-colossal-squid-baby-filmed-74424

Scientists Think They’ve Captured First-Ever Footage of a Colossal Squid Baby
https://petapixel.com/2024/05/29/scientists-think-theyve-captured-first-ever-footage-of-a-colossal-squid-baby/

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。
他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。
趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。

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