最近、ソニーは最新の外科用ロボット技術を公開しました。
手術用の顕微鏡や針付縫合糸を用いて行う微細な外科手術「マイクロサージャリー」では、高度なスキルが要求されますが、ソニーはそうした手術を支援するロボット技術の開発を進めているのです。
デモンストレーション動画では、最新のロボットを使用して、トウモロコシ1粒の皮を極小の針付縫合糸で縫合する様子が公開されており、ロボットの力でより繊細で正確な作業が可能になることを示しています。
目次
- 極微細な外科手術が可能に!ロボットを使ってトウモロコシの粒を縫うことも可能
極微細な外科手術が可能に!ロボットを使ってトウモロコシの粒を縫うことも可能
微細な外科手術「マイクロサージャリー」では、直径1mmをはるかに下回る細い血管に対して針を刺すような「極微小な動作」が必要になります。
当然、術者たちには、顕微鏡をのぞきながら手術を行うことや、信じられないほど高度で安定した技術が要求されます。
ソニーが開発したロボットシステムは、こうした微細な作業を行う術者を助けるものとなります。
そのロボットシステムは、術者が扱う卓上のコンソールと、患者に外科的処置を行うロボットアームが組み合わさっています。
術者の両手の動きが、2分の1から10分の1程度に縮小されてロボットアームで再現されるようになっており、術者の身体的限界に依存しない精密な操作が可能になります。
「手と指に対する並外れたコントロール」を有する才能に恵まれた人間だけでなく、より多くの医師がこの分野の手術を行うことができるというわけです。
しかし、マイクロサージャリーの手術では、前述したような極微小な動作だけでなく、糸を引っ張ったりするような「比較的大きな動作」も行わなければいけません。
そこで新しいロボット技術では、必要以上にモーションスケールを大きくせず、人間の指先の動きを最大限に生かすよう設計しています。
従来の手術器具に近い操作感を目指し、指先で扱えるような小型かつ軽量な操作デバイスを採用しているのです。
加えて、低遅延を追求した電気・制御システムや、ロボットアームのすべての関節を低摩擦化することで、滑らかで、カクつき・遅延のない動きを実現。
術者がまるで自分の腕で手術しているかのように感じるため、直観的な操作性を高めています。
デモンストレーション動画では、その繊細な動きが再現されています。
非常に小さなトウモロコシの粒に対して、その薄皮をカットしたり、「12-0」と呼ばれる極小の針付縫合糸で正確に縫合したりしています。
そしてこのロボット技術の試作機は、既に愛知医科大学の実験に使用されており、スーパーマイクロサージャリー(直径0.3~0.8mmの血管や神経を扱う手術)となる、動物の直径0.6mmの血管の吻合に成功しています。
しかも、マイクロサージャリーを専門としない医師によってこの手術が行われたというのだから驚きです。
今後、ソニーの外科用ロボットが普及することで、一層多くの医師たちが、微細な手術を行えるようになるはずです。
参考文献
Microsurgery Assistance Robot
https://www.sony.com/ja/SonyInfo/research/projects/microsurgery_assistance_robot/
Watch: Sony’s new microsurgery robot stitches up a corn kernel
https://newatlas.com/robotics/sony-microsurgery-robot-corn/
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部