大きいことはいいこと…ではないようです。
トルコのアイディン・アドナン・メンデレス大学(ADU)で行われた研究により、亀頭の体積の大きさは先天的な早漏「生涯の早漏(LLPE)」と関連しており、より大きな亀頭は早漏を起こしやすい可能性が示されました。
今回の研究は、陰茎亀頭の体積が大きい人に生涯の早漏がより一般的であることを示した最初の研究です。
研究内容の詳細は2024年5月に『The Journal of Sexual Medicine』にて発表されました。
目次
- 亀頭の体積と早漏の意外な関係
亀頭の体積と早漏の意外な関係
早漏(Premature Ejaculation, PE)は多くの文化において、しばしばネガティブな意味合いで捉えられる事が多く、「弱さ」や「未熟さ」の象徴と見られがちです。
また映画やテレビ番組、コメディショーでは、早漏が笑いを取るためのテーマとして使われることがあります。これにより、早漏が軽視されたり、からかわれたりする風潮が助長されました。
日本のマンガやアニメ、さらには漫才でもしばしば「早漏か!」とツッコミのセリフが吐かれるシーンがみられます。
このように早漏は、社会的な期待やメディアの影響により、揶揄の対象となっています。
しかし早漏の実態は決して揶揄されたり笑われたりできるようなものではありません。
早漏の中でも「生涯の早漏(LLPE)」と言われている状態は、性行為を始めたときからほぼ全ての性行為で一貫して現れる症状であり、生涯の早漏を患う人々の90%は挿入後1分以内に射精してしまします。
またその生涯の早漏は遺伝的要因に端を発した脳神経に原因があると考えられており、本人の意思だけでは制御不可能な状態です。
実際、少なくない研究者たちは生涯の早漏を「脳の病気」や「脳の障害」として解釈しており、その原因が神経伝達物質のセロトニンのレベルの低さや、過剰なドーパミンの分泌にあると考えられています。
(※生涯の早漏(LLPE)の他に、甲状腺などの臓器の疾患によって生後に発生する早漏は後天的早漏(AqPE)と言われています)
さらに脳の病気としての観点からの研究では、生涯の早漏はADHD(注意欠陥多動生涯)やASD(自閉症スペクトラム)との関連性も調べられています。
たとえばADHDの人々の脳内では射精において重要なドーパミンの分泌パターンが一般の人々と異なっていたり、射精タイミングを制御するための衝動性の抑制に困難をかかえていると考えられています。
またASDの人々は神経伝達物質(セロトニン・ドーパミン・オキシトシン)の異常に加えて、しばしば「感覚過敏」をかかえており、性的刺激に対して過剰反応を起こし早漏につながることも知られています。
このように生まれ持っての早漏を笑いの対象とすることは、ある意味で「脳の病気を笑いの対象にする」のに等しく、本来ならば著しく倫理に背いた言動であることがわかります。
また生涯の早漏をかかえる人々は、膣内挿入をどんなに我慢しても1分ほどしか継続できないため、健康な人が得られる性行為による快楽や満足を得にくくなっています。
そこで今回、アイディン・アドナン・メンデレス大学の研究者たちは、早漏の予測因子としてペニスの亀頭の形状、特に亀頭の体積と亀頭の硬さの2つが調べられました。亀頭の体積の測定には「陰茎超音波検査」と呼ばれる方法が用いられ、亀頭の硬さの測定には「陰茎せん断波エストグラフィー(SWE)が用いられました。
どちらも超音波を用いる技術であり、亀頭を物理的に傷つけることなる体積や硬さを調べることが可能です。
調査にあたっては「生涯の早漏(LLPE)」と「後天性早漏(AqPE)」そして早漏ではない男性の3種類の人々が用意され、亀頭の体積と硬さが測定されました。
またこれらの参加者は全て国際勃起機能指数が正常で、勃起機能そのものに問題がないことが確認されました。
次に研究者たちは、早漏診断ツールのスコアと膣内射精までの時間を測定しまし、集められた早漏グループの参加者が確かに早漏と言える状態であることが確認されました。
(※健康な人々も診断ツールへの解答や膣内射精までの時間を調べられ、比較対象データとされました)
そして最後に、超音波を使った亀頭の体積と硬さが調べられました。
すると驚きの事実が判明します。
健康な人と後天性早漏の人々の亀頭体積の中央値がおよそ11.4から11.7立方ミリメートルであったのに対し、生涯の早漏の人々の亀頭体積の中央値は12.65立方ミリメートルとなっていました。
(※超音波を使った体積測定では亀頭内部の空洞部分が考慮されず皮膚や内部構造の一部が対象になることが多いため、全体の体積が小さく見積もられることがあります)
また亀頭の大きさをベースに生涯の早漏になる確率を計算したところ、亀頭が大きな人は生涯の早漏になるリスクが 3.326倍も高いことが判明しました。
この結果は、生涯の早漏の人々は健康な人や臓器の疾患により後天性に早漏になった人に比べて、亀頭部分の体積が有意に大きいことを示しています。
一方で、亀頭の硬さは生涯の早漏とそうでない人の間で有意な差はありませんでした。
また海外でしばしばみられる割礼の習慣によって、亀頭の大きさや硬さに変化がないことも確認できました。
今回の研究は、陰茎亀頭の体積が大きい人に生涯の早漏がより一般的であることを示した最初の研究となりました。
研究者たちは今後、早漏の人々のペニスを採取し、神経の数や神経の機能を調べることで、より正確なデータが得られるだろうと述べています。
元論文
Glans penis volume is associated with lifelong premature ejaculation
https://doi.org/10.1093/jsxmed/qdae037
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。
編集者
ナゾロジー 編集部