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小説で脳を鍛えよう!読書量が多いと他者を理解する能力が高まる!


小説を読むことは認知能力をアップさせるようです。

独ユリウス・マクシミリアン大学ヴュルツブルク(JMU)の新たな研究で、小説のようなフィクション作品を読むことは、言語能力や共感能力を含む認知機能の向上をもたらすことが明らかになりました。

また小説ほどの効果はなかったものの、ノンフィクションの文章を読むことでも有意な効果が確認できたとのことです。

研究の詳細は心理学雑誌『Journal of Experimental Psychology:General』に掲載されています。

目次

  • 読書は動画の視聴より認知能力の向上に役立つ?
  • 小説を読むことは言語能力と他者への理解力を高める

読書は動画の視聴より認知能力の向上に役立つ?

昨今はYouTubeやサブスクリプションを中心とする映像媒体の人気が高まるのに反し、人々の「活字離れ」が進んでいるといわれています。

「最近は動画ばかり見ていて、ほとんど読書をしなくなった」という方も少なくないでしょう。

その一方で、本を読むこと、特に小説のようなフィクション作品を読むことが認知機能の向上につながることを示唆する研究がいくつも報告されています。

そこで研究チームは、これまでの先行研究を体系的にレビューすることで、フィクション作品を読むことの認知的な利益を明らかにしようと考えました。

小説を読むと認知機能は上がるのか?
小説を読むと認知機能は上がるのか? / Credit: canva

今回の研究では、2つのメタ分析(複数の研究結果を統合して分析すること)を実施しています。

まず1つ目は、実験を通じてフィクション作品を読むことの認知効果を調べた研究を集めて体系的に分析するものです。

これらの実験で、被験者は「フィクション作品(短編小説)を読むグループ」「ノンフィクションを読むグループ」「フィクション映像を見るグループ」「何もしないグループ」にランダムに割り当てられた上で、その認知効果が調べられていました。

これには70件の先行研究のデータが含まれており、被験者は合計で1万1172人が対象となっています。

メタ分析の2つ目は、日常的な小説の読書習慣と認知能力の関係性を調べるものです。

これには114件の先行研究が含まれ、被験者の数は合計3万503人に上り、それぞれの読書習慣(どんな種類の本をどれくらいの頻度で読むのか)を調べて、さまざまな認知機能のスコアと照らし合わせました。

小説を読むことにはどれほどの効果があったのでしょうか?

小説を読むことは言語能力と他者への理解力を高める

1つ目のメタ分析の結果、フィクション作品(小説)を読むことは確かに認知スキル全体に対して、有意にプラス効果を与えていることが示されました。

特にどの認知スキルが有意に高まったかを調べたところ、最も効果が顕著だったのは他者の考えや感情を理解する「共感能力」でした。

この効果はフィクション作品を読んだ被験者で最大となっていましたが、ノンフィクション作品を読んだグループでも、フィクション映像を見た被験者や何もしなかった被験者に比べ高かったといいます。

この結果は小説が他者の気持ちを学ぶのに非常に高い効果を持っていることを示唆しています。ノンフィクション作品の場合は、登場人物の気持ちを描くより、事実に基づいた情報を記すことが多いため、効果がフィクション作品より下がっている可能性があります。

それから2つ目のメタ分析でも、日常的にフィクション作品を読む頻度が多い被験者ほど、認知機能も高くなるという一貫した傾向が明らかになりました。

その効果は特に、推論・抽象的思考・問題解決・言語能力などで顕著になっていました。

1つ目のメタ分析と同様に、共感能力の向上も見られていますが、その効果はこれら4つほどではありませんでした。

小説が1番だが、そもそも読書自体が有効かも
小説が1番だが、そもそも読書自体が有効かも / Credit: canva

以上の結果を受けて、研究主任のレナ・ヴィマー(Lena Wimmer)氏は「小説のようなフィクション作品をたくさん読む人は、それをほとんど、あるいは全く読まない人に比べて、認知機能が高まることが明らかになりました」と述べています。

これは空想上の物語を読む行為が独特の方法で脳を刺激し、映像を含む他の形態のメディアからは得られない認知効果をもたらす可能性があることを示唆しています。

フィクション小説は、物語上の人物の感情に寄り添ったり、ある人物の視点から相手の気持ちを考えたりと、人の内面を詳細に描くことが多くなります。

これが無意識に他者への理解を深め、多様な視点から物事を考えるトレーニングになっているのかもしれません。

一方で、映像作品は人物の仕草や表情、言動などから考えを読み取らなければなりません。そのため映像作品は認知スキルを鍛えるというよりも、鍛えた認知スキルが試される媒体と言えるのでしょう。

もともと他者視点の考えを理解する認知能力がないと、映像作品を見ても登場人物が何を考えどう感じているのかさっぱり読み取れないということにもなりかねません。

ヴィマー氏らは次のステップとして、フィクション作品を読むことがいかにして認知機能の向上につながるのか、より詳しい因果関係を明らかにしたいと述べています。

小説を読むことには、自分で登場人物の姿や風景を自由に想像したり、あるいは感情移入する人物を変えることで印象が変わったりと、映像とは違った独自の楽しみがあります。

映像は気軽に楽しめる娯楽ですが、たまには読書の時間を作ることが認知能力を鍛えるために重要かもしれません。

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参考文献

People who read a lot of fiction tend to have better cognitive skills, study finds
https://www.psypost.org/people-who-read-a-lot-of-%ef%ac%81ction-tend-to-have-better-cognitive-skills-study-finds/

Study reveals the cognitive superpowers of reading fiction: more than just words
https://www.zmescience.com/science/psychology-science/study-reveals-the-cognitive-superpowers-of-reading-fiction-more-than-just-words/

元論文

Cognitive effects and correlates of reading fiction: Two preregistered multilevel meta-analyses.
https://doi.org/10.1037/xge0001583

ライター

大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。

編集者

海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。

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