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母親は自分のことより「わが子」の成功に一番脳が反応する!


母から子への愛情は、自身へ向ける自己愛を超えているようです。

中国・首都師範大学(CNU)の研究で、母親は自らが報酬を得るときよりも、わが子が報酬を得るときの方が、脳の反射速度が上がり、神経反応もより強くなることが明らかになりました。

これは母親が本能的に「自分より子供が得する方が重要である」と考えていることを示唆する結果です。

研究の詳細は、2023年9月13日付で科学雑誌『Social Cognitive and Affective Neuroscience』に掲載されています。

目次

  • 母から子への愛情は「自分が一番」を超えうるか?
  • 母親の脳は子供が報酬を得るときに最も活性化!

母から子への愛情は「自分が一番」を超えうるか?

脳における「報酬系(reward system)」は、嬉しい出来事や満足感を得る経験を介して活性化する神経システムです。

報酬系が反応すると、同時に脳内ホルモンの一つである「ドーパミン」が分泌され、私たちの内にやる気や元気の感情を引き起こします。

しかし報酬系にまつわる先行研究は一貫して、私たちの脳は他者のために報酬を得るときよりも、自身のために報酬を得るときの方がより強く速く反応することを示していました。

友達が宝くじに当たったり、同僚が先に昇進するよりも、自分がそうなった方が心理的にも生活面でもメリットが大きいので当然と言えるでしょう。

結局、私たちは自分が可愛いのです。

画像
Credit: canva

その一方で、脳の反応の速度や強度は、報酬が得られる人との親密さによっても変化することが分かっていました。

例えば、仲のいい親友のために報酬を得ようとすると、まったく見ず知らずの他人のために頑張るときよりも脳の反応が良くなるのです。

とは言っても、自分自身のために頑張るときに比べると脳の反応はどうしても劣ります。

ですが、最も強い絆で結ばれている「母親」と「子供」ではどうでしょう?

皆さんも過去を振り返って、自分に嬉しい出来事があった際、母親が我が事のように喜んでいるのを幾度も目にしてきたはずです。

そこで研究チームは今回、母親がわが子のために報酬を得るときの脳の反応を実験で調べることにしました。

母親の脳は子供が報酬を得るときに最も活性化!

本調査では、2〜6歳の幼児をもつ中国在住の母親31人(20〜45歳)を対象としました。

母親は全員が結婚しており、心身ともに健康で、少なくとも大卒の学歴を持っています。

母親たちは実験で、スクリーン上に表示される「赤」または「緑」の点に素早く反応し、指示された色に合うボタンをできる限り早く押すゲームを行いました。

色の付いた点が表示される前には、正解すると「母親自身(S)」「子供(C)」「慈善団体(D)」のいずれかに報酬が与えられることを示すサインが示されます。

例えば、Sの表示が出た後にゲームに正解すると母親自身が報酬をゲットでき、Dが表示されると慈善団体に寄付されます。

ゲームは合計で480回行われ、母親にはハンドクリーム、子供にはジグソーパズル、慈善団体には現金の寄付の報酬が用意されました。

それからゲーム中の脳の反射速度と神経反応の強さを調べるために、母親は脳波検査(EEG)のヘッドセットを装着しています。

実験手順の流れ(赤か緑のいずれかを選択する、直前には誰に報酬が与えられるかをS・C・Dで表示)
Credit: Yan Zhang et al., Social Cognitive and Affective Neuroscience(2023)

その結果、母親の脳の反射速度や神経反応の強さが最も高まるのは、自分自身ではなく、わが子が報酬を得られるときであることが判明したのです。

慈善団体への寄付のときは、脳の反射時間や神経反応の強さは最も遅く/弱くなっていました。

これは報酬系に関する従来の報告とは違い、母親が自分自身よりも子供の利益を優先していることを脳レベルで示した貴重な成果です。

また実験後のアンケート調査でも、母親たちは自分や慈善団体より、わが子が報酬を得られるときに最も真剣になり、また大きな喜びを感じたと報告していました。

縦軸:脳波の強さを示す振幅、横幅:脳の反射速度(脳の反応はCの子供のときに最も高まる)
Credit: Yan Zhang et al., Social Cognitive and Affective Neuroscience(2023)

子供の頃、母親が「私は良いからあなたがもらいな」とか「あなたが食べな」と譲ってくれた経験があるでしょう。

なんで譲ってくれるんだろうと子供心に思ったかもしれませんが、母親は自分が何かを得るより、子供が何かを得る方が嬉しく感じているようです。

これを受けて研究主任のヤン・チャン(Yan Zhang)氏は「母親においては、自分の子供が報酬を得ることの優先順位が報酬系における自己優位性を超えている可能性を示唆するものだ」と説明しています。

その一方でチームは、実験に参加した母親のサンプル数が少ないことや、全員が未就学児の母親であること、および大学教育を受けていたことで限界があることに注意を促しました。

子供の年齢や母親の教育レベルの幅を広げて再調査すると、結果も少し変わってくるかもしれません。

また父親を対象にするとどうなるのかも同時に調べることで、面白い結果が得られるでしょう。

もし父親の脳の反応速度が上がらなければ、子供としてはショックですね。

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参考文献

Mothers’ brains show stronger responses when winning for their kids than for themselves, study finds
https://www.psypost.org/2023/11/mothers-brains-show-stronger-responses-when-winning-for-their-kids-than-for-themselves-study-finds-214495

元論文

Mothers exhibit higher neural activity in gaining rewards for their children than for themselves
https://academic.oup.com/scan/article/18/1/nsad048/7272681?login=false

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