腹筋のトレーニングと言えば「シックスパック」がキーワードになっていますが、実は誰もが腹筋は6つに割れるというわけではないようです。
グレナダのセントジョージ大学(SGU)医学部に所属するラブジョイ・ライ氏らの研究を中心に、腹筋のパック数はその人の遺伝子によって変化するといいます。
この研究によるとあなたが努力の末に得る腹筋は8パックや4パックになる可能性があるようです。
詳細は、2018年8月付の医学誌『Cureus』で発表されています。
目次
- 腹筋の構造
- 腹筋のパック数と見え方には個人差がある
腹筋の構造
誰もが運動や食事制限によって「割れた腹筋」を手に入れることができます。
特に厳しいトレーニングによって得られた腹筋は、チョコレートのようにくっきりとブロックに分かれて見えることでしょう。
しかし、そのブロックの数は人によって異なります。
どうしてそうなるのでしょうか。
まず、人間の腹部の筋肉の構造について考えてみましょう。
腹部全体の筋肉は、肋骨から骨盤まで伸びる複数の異なる筋肉が何層にも重なって構成されています。
例えば、お腹の横、つまり脇腹部分には「外腹斜筋」「内腹斜筋」があり、体幹の固定やひねる動作に関わっています。
そしてそれら筋肉の中でも一番目立つのが、「腹直筋」です。
腹直筋は最上層にある筋肉であり、腹部の筋肉の中で最も長く、胴体の正面を覆っています。
胴体および脊柱の安定化、背中を前方に丸めるのに役立っています。
この腹直筋では、縦に伸びる腱「白線」が真ん中を走っており、それに加えて、この白線を垂直に横切る横線の腱「腱画(けんかく)」が数本走っています。
これらの腱が腹直筋を区切っており、いわゆる「シックスパック」の外観を与えるのです。
また、このことから分かる通り、横に伸びる腱画の本数によって腹筋のパック数が変わってきます。
そしてこの腱画の本数は、遺伝子によって異なるのです。
腹筋のパック数と見え方には個人差がある
ライ氏ら研究チームの2018年の論文や、他の数々の研究によると、私たちの約60%が3本の腱画を持っており、腹筋は6つに分かれているように見えます。
(3本の腱画なので、正確には8つのパックに分かれていることになりますが、一番下の2つのパックは見えづらく除外してカウントされることが多いようです)
これはつまり、「大多数の人は努力することで腹筋が6つに分かれて見える」ということであり、これが「シックスパック = 割れた腹筋」という意味合いを作り出しました。
しかし、約20%の人は腱画の数が4本であり、8パックの腹筋を持っているように見えます。
加えて約15%の人は腱画が2本であり、4パックの腹筋を持っているように見えます。
もちろん一番下の腱画の位置も個人差があるため、腱画の数が同じでも、パック数の見え方は異なる場合があるでしょう。
例えば、腱画が2本でも、一番下のパックを含めて6パックに見えることもあるはずです。
また非常に稀ですが、腱画が1本しかない人も存在するようです。
この場合も、「2パックの腹筋」と呼びたいところですが、腱画の位置によっては4パックに見えるかもしれません。
ここで気になるのは、腹筋のパック数で筋力に違いは出てくるのか? という点です。
アメリカのハンティンドン・カレッジ(Huntingdon College)スポーツ科学体育学部に所属するミケーレ・オルソン氏によると、「腹筋のパック数は体幹の強さとは関係ない」とのこと。
腱画の数が他の人より多かったり少なかったりしても、それが強くて優れた腹筋の証拠だとは言えないのです。
とはいえ科学者たちは、腱画の数が多い人は、少ない人よりも可動範囲がわずかに広い可能性があることも指摘しています。
もちろん、腱画の数によって腹筋の外観は異なってくるので、見た目の好みは分かれるかもしれません。
では、自分の腹筋がいくつに分かれるか知りたい場合はどうすべきでしょうか?
全ての人間はもともと腱画によって腹筋が分かれているので、そのブロックを見分けやすいように、腹筋を覆っている脂肪を減らすことが効果的です。
基本的に「部分痩せ」は不可能なので、運動や適度な食事制限により、体全体の脂肪を減らしていく必要があるでしょう。
また筋トレによって腹筋を大きくするなら、分かれ目がよりはっきりとします。
すべての人がバキバキの「シックスパック」を目指す必要はありませんが、「自分ならではの腹筋のパック数」が知りたいなら、健康的なダイエットに励んでみるとよいでしょう。
参考文献
Why do people sport 4-, 6- or even 8-pack abs? https://www.livescience.com/health/why-do-people-sport-4-6-or-even-8-pack-abs元論文
Tendinous Inscriptions of the Rectus Abdominis: A Comprehensive Review https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6173272/