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MITが副操縦士としてパイロットを補佐するAIシステムを開発!


『スター・ウォーズ』ではR2-D2が宇宙船の航法ナビゲートをしたり、『アベンジャーズ』シリーズでは女性型AIのフライデーがアイアンマンスーツの飛行サポートをしていました。


このようにSF作品では、AIロボットによる飛行補助はすでにお馴染みのアイデアとなっています。


しかし現実の研究者たちも決して遅れは取っていません。


米マサチューセッツ工科大学(MIT)は先日、パイロットの操縦をサポートするAIシステム「Air-Guardian」の開発を発表しました。


Air-Guardianは副操縦士として機体に搭載され、人間では気づけない危険情報を察知し、機長と協力しながら、より安全な空の旅を実現します。


研究の詳細は、2023年9月20日付でプレプリントサーバー『arXiv』に公開されました。




目次



  • AIロボットを「副操縦士」に据える
  • Air-Guardianはどのように人間をサポートする?

AIロボットを「副操縦士」に据える


画像
Credit: canva

2人のパイロットが操縦する飛行機に乗っているところを想像してみましょう。


ただし、パイロットの片方は「人間」、もう片方は「AI」です。


AIは副操縦士として機長の仕事をサポートします。


基本的には人間である機長が主導権を握り、機体をコントロールしますが、もし機長が注意散漫になったり、何らかの危険信号を見逃したりするとAIが指摘してくれます。


「機長、よそ見してますよ」とか「前方〇〇キロ先に積乱雲が発生です」というように。


そうしたAIシステムを目指して開発されたのが「Air-Guardian」です。


パイロットは現在、複数のモニターや管制官とのやり取りを通して大量の情報に接していますが、一方で人間の能力では対処しきれない問題が空や機体にはたくさんあります。


そこでAir-Guardianは生身の人間では不可能なデータ分析を行い、機長と連携してより安全な飛行機の航行を実現します。


では、Air-Guardianは具体的にどんな仕事をしてくれるのでしょうか?


Air-Guardianはどのように人間をサポートする?


開発を手がけたMITコンピュータ科学・人工知能研究所(CSAIL)によると、Air-Guardianがメインに扱うのは「サリエンシー・マップ(Saliency Map)」です。


サリエンシー・マップとは、人がある画像を見たときに、視線がどこに向けられているかを画面上にピクセル単位で表示したものです。


これにより、人が風景のどのような場所に目を向けているのか、あるいはどこを見ていないのかが一目でわかります。


サリエンシー・マップの一例(黒画面の白い点が視線が向けられた場所)
Credit: en.wikipedia

実際のシチュエーションでは、パイロットの視線をアイトラッキング装置によって追跡し、そのデータをAir-Guardianがリアルタイムで解析して、機長がどこを見ているのか、また何に気づいていないのかを特定するのです。


これだけでもパイロットが気づいていない危険信号を指摘することができます。


しかしAir-Guardianの仕事は、そんな単純なことだけに終始しません。


最も特筆すべきは「危機の予測能力」です。


Air-Guardianはパイロットの視線の向け方を積極的に解釈し、「この機長はどういう所を見る傾向にあるのか/どういう所を見落としやすいのか」を推定。


それを空の状況などと合わせて分析し、「こういう危険が起きる可能性がある。だから今のうちにこれこれの対処をしておいた方がいい」と指摘してくれます。


要するに、危険因子の点と点とつないで、潜在的なリスクを前もって回避する能力があるのです。


AIは人間に足りない能力を「補完」する役割


チームはAIシステムの有効性を検証するため、パイロットとAir-Guardianによる航行のフィールドテストを実施しました。


パイロットとAir-Guardianは、設定された目的地への航行を通し、同じ視覚データに基づいて意思決定を行います。


AIシステムの有効性は、航行中にどれだけリスクを回避できたか、より短い経路で目的地にたどり着けたかで評価されました。


その結果、Air-Guardianは飛行のリスクレベルを低下させるとともに、目的地までの安全かつスムーズな航行を達成したとのことです。


フィールドテストでも有効性を実証
Credit: canva

チームは、Air-Guardianが人間の注意や判断が揺らぐ瞬間に確実なセーフティネットを提供する女房役として、より安全な空の新時代を約束してくれると考えています。


例えば、1分1秒を争う問題に直面したとき、人間のパイロットだけでは「どの選択が正しいのか、誤った判断で乗客の命を危険に陥れてしまったら?」と迷い、貴重な時間をロスしてしまう恐れがあるでしょう。


また人間の五感だけでは捉えきれない重要な信号を見逃す可能性もあります。


その際に、Air-Guardianは空の天候や現在位置、エンジン残量や機体の状態、一番近い着陸場所などのデータを総合的に分析し、危機回避や生存率を最も高める選択を瞬時に判断して、パイロットに提案します。


パイロットの方もただそれを鵜呑みにするのではなく、AIの正確なデータと自らの経験を合わせて、ベストな判断をすばやく下します。


ここではまさに、ルークとR2-D2のように、人間とAIの協力体制が築かれるのです。


ヨーダのいる惑星ダゴバに向かうルークとR2-D2
Credit: The Freebooting Rodian –Star Wars: The Empire Strikes Back –Luke Lands On Dagobah(youtube, 2021)

研究主任のラミン・ハサニ(Ramin Hasani)氏はこう述べています。


「Air-Guardianは人間の判断に取って代わるものではありません。そうではなく、人間に足りない能力を補完することで、飛行の安全性をより強化してくれるものです。


このシステムは”人間の専門知識”と”AIの機械学習”との相乗効果を強調しており、困難な飛行シチュエーションにおいてパイロットをサポートし、操縦や判断ミスを減らすことを目的にしています」


R2-D2やフライデーのように、Air-Guardianがパイロットの補佐として活躍する日は近いかもしれません。


全ての画像を見る

参考文献

AI co-pilot enhances human precision for safer aviation
https://news.mit.edu/2023/ai-co-pilot-enhances-human-precision-safer-aviation-1003
MIT’s New AI-Powered Co-Pilot Will Redefine Aviation Safety
https://analyticsindiamag.com/mits-new-ai-powered-co-pilot-will-redefine-aviation-safety/

元論文

Towards Cooperative Flight Control Using Visual-Attention
https://arxiv.org/abs/2212.11084
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