2023年9月24日から翌25日にかけて、世界の多くの地域で赤いオーロラが夜空を染めました。
通常、オーロラと言えば緑色が印象的なため、今回のような真っ赤なオーロラは非常に珍しい現象です。
古い時代の人たちは、この赤いオーロラを悪いことが起こる前触れであると恐れたようですが、現代の科学ではこの赤いオーロラは強力な太陽嵐が原因と説明されており、比較的緯度の低い地域でも肉眼で見ることができます。
そのためこの珍しいオーロラは、ヨーロッパをはじめ、北アメリカなど北半球の多くの地域で確認され、多くの人々がその幻想的な光景を撮影し、X(旧Twitter)に投稿しています。
今回は、この赤いオーロラがどのように発生するかの解説とともに、世界中でどのように観測されたのかを紹介していきます。
目次
- 緯度の低い地域でも確認されたオーロラ
- 撮影された赤いオーロラの数々
緯度の低い地域でも確認されたオーロラ
通常、オーロラは北半球、南半球ともに緯度60度から70度あたりでよく見られます。
このオーロラがよく見られる範囲は「オーロラベルト」と呼ばれ、オーロラの鑑賞ツアーでは、この範囲に行くのが鉄則となっています。
代表的な場所としては「イエローナイフ(カナダ)」「フェアバンクス(アラスカ)」「トロムソ(ノルウェー)」「キルナ(スウェーデン)」などが挙げられます。
北緯66度33分以北が北極圏なので、オーロラはとても寒い地域で見られることがほとんどです。
しかし、今回の赤いオーロラはフランスやアメリカ中部など、比較的緯度の低い地域で確認されました。
どうやら、緯度の低い地域で確認されたことが赤いオーロラと関係あるようです。
下記は、北緯57度のスコットランドのロジーマスで9月25日に撮影されたオーロラ。
A few shots from last nights awesome aurora display from lossiemouth she lit up the moray firth sky with red to the naked eye!! #Aurora@TamithaSkov@AmazingAurora21@BBCWthrWatchers@aurorawatchuk@_SpaceWeather_@AuroraAlertsApp@SkyeAuroras@astro_apps_uk@TweetAurorapic.twitter.com/ZumbEdL6a3
— stevo howells (@Stevo_SnakeDR) September 25, 2023
オーロラが赤く染まる理由
オーロラは、主に太陽から放出されたプラズマ(電子とイオンの混合物)が地球の磁場によって両極の方向に導かれ、大気中のガス分子や原子と衝突することによって発生します。
オーロラの色は、これらの衝突がどのようなガス分子や原子と起こり、そしてどの高さで起こるかによって異なってくるのです。
最も一般的な緑色のオーロラは、太陽からのプラズマが高度100kmから200km程度の高さで大気中の酸素分子と衝突した際に発生します。
一方、赤いオーロラもプラズマが酸素分子と衝突して発生するのは同じですが、高度200km以上で発生します。
つまり、今回緯度の低い地域で観測された赤いオーロラは、かなり高高度で発生したオーロラということになります。
しかし、なぜ高高度でオーロラが発生したのでしょうか。
高高度でオーロラが発生したのには、太陽嵐の強さが関係しています。
太陽で太陽フレアと呼ばれる爆発が発生すると、電磁波・プラズマなどを含む太陽風が放出されます。
中でも、非常に大規模な太陽フレアが発生した場合には、電子機器などにも被害をもたらすほど高エネルギーの太陽風が放出されます。この現象を太陽嵐と呼びます。
大規模な太陽嵐によって高エネルギーの太陽風が大量に地球に降り注いだ場合、非常に酸素原子の密度が薄い高高度でも酸素とプラズマの衝突が発生します。
そのため、高高度が低高度に渡って広くオーロラが発生したのです。
なので、ニュースなどでは赤色だけが強調されてはいますが、実際撮影された写真を見ると、オーロラは赤から緑色のグラデーションを作っていることがわかります。
また低緯度でもオーロラが見えた理由についても、太陽嵐が強力だったため極点から広い範囲にまでオーロラが広がったからだと理解することができます。
撮影された赤いオーロラの数々
北緯54度の地域でも綺麗な赤いオーロラが撮影されています。
#Aurora#Auroraborealis#Northernlights#Polarlights#Polarlichter
For a few minutes it suddenly exploded and even here at roughly 54N it looked like you’re in the polar areas. All the movement was visible, all the colors, im freaking out this was so awesome (ALT-txt) pic.twitter.com/Y0WHd5ZFGz
— Darth thromBOOzyt (@krasmanalderey) September 24, 2023
なお、緯度が低くなるにつれ、オーロラはぼんやりとした姿になっていくようです。
北緯52度にあるオランダで撮影された下記Xの画像では、夕焼けに近いようなオーロラが確認できます。
Last night, most of the west of the Netherlands was under cloud-cover, but thankfully for a moment the intens green band and deep red pillar’s of the #Aurora#noorderlicht#poollicht became visible.@TamithaSkov@helgavanleur@StormchaserNL@BuienRadarNL@Weerplaza@SonyNederlandpic.twitter.com/LcoF0c23Or
— Raymond Kamstra (@kamstra_raymond) September 25, 2023
北緯50度ほどのイギリス・コーンウォールでは、うっすらとした赤い雲のようなオーロラが撮影されています。
#Aurora from Penryn Cornwall!! About as far south as you can get in the UK and still visible#Cornwall#Auroraborealispic.twitter.com/1sXlqRfRjR
— Christopher Probert (@tophe_probert) September 24, 2023
なんと、北緯44度程度のアメリカ・オレゴン州でも赤いオーロラが撮影されていました。
I’ve captured the Aurora over 24 times in Central Oregon. Every time red was present. pic.twitter.com/kbn8DanmZG
— Jeff Bryant Oregon Photographer (@unknown_patriot) September 25, 2023
日本でも稀に見られるオーロラ
日本でも数年に一度程度、北海道など日本の中でも比較的緯度の高い地域でオーロラが観測されることがあります。
日本の最北端である稚内市の緯度が45度程度なので、今回北緯44度のアメリカ・オレゴン州でも観測されたことを考えると、条件さえ揃えば日本でも赤いオーロラを観測することができるようです。
強力な太陽嵐は低緯度にまで広がることは、古い文献などにも記録があり、日本書紀の中にも「赤気」という名で日本で観測されたオーロラの記録が残されています。
この記録の名前に「赤」の字が使われていることから、古い時代に日本で観測されたオーロラも赤い色だったと考えられます。
とても美しいオーロラですが、その発生源は強力な太陽嵐です。
現代で日本にまで至るようなオーロラが発生した場合、電子機器や通信網に障害を発生させるやっかいな自然災害となる可能性があります。
日本で美しくはっきりとしたオーロラが見られることは、現代の私たちにとっては少々危険なことなのかもしれませんね。
参考文献
‘Holy Grail’of Northern Lights Just Turned The Sky Blood Red As Far South As France https://www.sciencealert.com/holy-grail-of-northern-lights-just-turned-the-sky-blood-red-as-far-south-as-france