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ペンギンの胃から見つかる石は何のためか?


水族館のアイドルとも言えるペンギンたち。世界には現在18種類のペンギンがいるとされています。なかでもフンボルトペンギンは日本でも飼育数が多く水族館や動物園で身近に見ることのできる馴染み深いペンギンです。

今回はそんなフンボルトペンギンの不思議な行動についての話題です。

実は、水族館ではフンボルトペンギンが小石を吐き出す姿がたびたび目撃されていて、どうやら胃のなかに小石を蓄えているようなのです。

なぜペンギンは小石を飲み込むのでしょうか? これに関してはいくつかの推測はあるものの、実は詳しい理由がわかっていませんでした。

しかしこの度、日本最大級のペンギン展示施設『ペンギン村』がある、下関市立しものせき水族館海響館の研究が、ペンギンが小石を飲む理由について、新たな発見を報告しました。

研究内容の詳細は2023年4月に『日本鳥学会誌』にて掲載されています。

目次

  • フンボルトペンギンはどんなペンギンなの?
  • 小石を飲み込むペンギンはメスだけだった

フンボルトペンギンはどんなペンギンなの?

クチバシの周りがピンク色
credit:Canva

フンボルトペンギンはペンギン目ペンギン科フンボルトペンギン属に分類される種類で、フンボルト海流が流れ込む南アメリカのチリやペルー沿岸地域に生息していることから、その名がつきました。

ペンギンといえば、南極など寒い場所で暮らしているのを想像しがちですが、このペンギンは寒さに弱く、温かく乾燥したペルーでも生息できることから別名”ペルーペンギン”とも呼ばれています。

胸に太い一本のラインがあるのが特徴で、クチバシ周りにはピンク色の皮膚がむき出しになっています。

主食はイワシやカタクチイワシで、日本の飼育下でもイワシやアジなどの小魚が与えられています。

そしてこのフンボルトペンギンの変わった行動として、水族館などでときたま小石を吐き出す様子が確認さています。

しかし、彼らの生態において小石を飲み込まなければならない理由が、長らく謎となっていました。

これまで提案されたペンギンが小石を飲む理由

哺乳類などと違って鳥類には歯がないため、種子や木の実を食べる種では、食べ物を細かく砕くために、飲み込んだ小石を使ってすり潰す専用の器官があります。

これを砂嚢(さのう)と呼びます。焼き鳥が好きな人ならご存知かもしれませんが、いわゆる”砂肝”がこれに当たります。

キジバトやスズメなど種子を主食にしている鳥たちがこの器官を持ち合わせており、ハトも砂嚢をもつ代表的な鳥です。

ハトが何も食べるものがない地面をつついている姿を見かけることがあるかと思いますが、あの行動はエサを食べているだけではなく、砂嚢に石を溜めているのです。

砂嚢に入った小石は、食べた種子と一緒に削られることで小さくなり、最終的に糞として排出されます。

しかし、ペンギンは小魚を主食としており、砂嚢自体が存在しないため小石を飲み込んでいる理由としては当てはまりません。

そのため、これまで有力だった説は、小石を飲み込むことで体の比重を重くし、潜水しやすくするためというものでした。

また絶食への適応という説も唱えられています。

しかし、これらの説はすべてのペンギンが必ずしも小石を飲み込んでいるわけではないことと、潜水のあまり必要のない飼育下でも小石を飲みこんでいる姿が目撃されているため、広く合意(コンセンサス)を得ることはできていません。

小石を飲み込むペンギンはメスだけだった

小石は一体なんのために?
Credit:Canva

では、ペンギンはどのような理由で石を飲み込んでいたのでしょうか。

飼育下のペンギンは、コンクリートで作られた床の上で過ごすのが一般的ですが、海響館のフンボルトペンギンを飼育しているエリアは、生息する環境に近い小石や土を混ぜた地面になっていて、たびたびペンギンが小石を飲みこむ姿が飼育員によって目撃されていました。

そこでこの度、下関市立しものせき水族館「海響館」では、胃の中にある石の役割を明らかにするため、飼育下のフンボルトペンギンが小石を飲む行動と吐き戻しする行動に注目し、小石を飲み込む時期や吐く時期やどの個体がその行動をしているかを調べました。

すると、小石を飲み込む行動を取っているのが、産卵期のメスのみで、その多くが卵殻形成時期に集中していることがわかったのです。

研究チームはペンギンの”小石を飲み込む行動”が「卵殻形成期のメスのみに見られる」(オスには見られない)ことから、この行動が産卵に関連しているのではないかと推測しました。

この調査結果から得られた研究チームの見解は次のようなものです。

「ペンギンの胃内から見つかる石は、メスが卵殻形成に必要なカルシウムを補給しようとして、誤って小石を飲み込んでいる可能性が考えられ、これまで考えられているような浮力調節や消化や絶食時の適応のためである可能性は低いのではないか」

サンゴなどはカルシウムを含むため、本来はこれを飲み込もうとしていて、それと間違えて小石をのんでいるのではないか? というのが今回の結果から示唆されたのです。

人間も出産前はカルシウムの吸収率が上昇すると言われており、子供を育てるためにカルシウムを摂取しようとすることは生き物として必然の行動であるようです。

日本でフンボルトペンギンに出会うことができる水族館は多いので、繁殖期から産卵期あたりには、もしかしたらメスのフンボルトペンギンが小石を吐き出す瞬間を見ることができるかもしれませんね。

全ての画像を見る

参考文献

アデリーペンギン幼鳥の胃石 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jyio1952/3/2/3_2_126/_article/-char/ja/ 『胃石を持つ鳥・持たない鳥』 https://www.google.com/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=&ved=2ahUKEwiJy-KmhNP_AhUCRN4KHYyECFYQFnoECA0QAQ&url=http%3A%2F%2Fwww.gmnh.pref.gunma.jp%2Fwp-content%2Fuploads%2Freport2020_2-24.pdf&usg=AOvVaw2OioxhaZXxAKZvL-9wKJh7&opi=89978449 野生アメリカザリガニの胃石およびキチン質基質の所持とその季節性 https://tust.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=218&item_no=1&page_id=13&block_id=21

元論文

ペンギンの胃から見つかる石は何のためか?―飼育下フンボルトペンギンにおける性差・季節変化― https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjo/72/1/72_17/_article/-char/ja/
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