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肥満の人ほど「死んだ腸内細菌の毒素」で痩せにくくなると判明!


私たちの腸内には100兆個ともされる細菌が共生し、心身の健康に重要な役割を担っています。

一方で、これらの中には死んだ後に「内毒素(エンドトキシン)」という有害物質を放出するものがいます。

この内毒素は、常に腸内に存在しているため少量なら健康に問題は起こしませんが、血液中に入ると何らかの健康被害を起こすことが以前から分かっていました。

特に肥満者の場合は、腸内の壁が損傷して内毒素が血液中に漏れやすいと言われます。

そして英ノッティンガム・トレント大学(NTU)はこのほど、腸から体内へ漏れ出た内毒素は脂肪細胞の正常な働きを妨げて、体重増加に拍車をかける可能性があることを発見したのです。

この結果は、脂肪細胞の機能不全が肥満を促進するメカニズムを理解する上で画期的なものだといいます。

研究の詳細は、2023年4月19日付で医学雑誌『BMC Medicine』に掲載されました。

目次

  • 内毒素の漏出で脂肪細胞の働きが阻害される
  • 体重を減らせば正常な細胞機能を取り戻せる!

内毒素の漏出で脂肪細胞の働きが阻害される

内毒素とは、もともとはグラム陰性菌など細胞壁を形成している主成分で、これらの細菌が死んだ際に放出される毒素です。

グラム陰性菌は、私たちの腸内に当たり前に生息している細菌のため、内毒素も腸内で常に放出されていますが、正常な腸内細菌叢を持つ人なら問題になることはありません。

ただ、当然毒素なので体内へ漏れ出してしまった場合には、健康に害を及ぼす可能性があります。

研究チームは今回、内毒素がヒトの脂肪細胞の働きに及ぼす影響に着目しました。

156名のボランティアに協力してもらい、血液や脂肪細胞のサンプルを採取して、白色と褐色の2種類の脂肪細胞を分析したのです。

ちなみに参加者のうち63名は肥満と診断されており、うち26名は肥満手術(食事摂取量を制限するために胃を小さくする手術)を受けています。

白色脂肪細胞は、脂肪が蓄積する組織の大部分を占め、脂質を大量に貯蔵している場所です。

褐色脂肪細胞は、冷えた体が暖かさを必要とするときなどに、蓄えていた脂肪を取り出して分解・燃焼する働きがあります。

私たちの体は正常な状態だと、この脂質を貯蔵する白色脂肪細胞を、脂質を燃焼する褐色脂肪細胞に変換することが可能です。

この褐色化プロセスは、健康的な体重を維持する上で極めて重要であると考えられています。

脂肪細胞のイメージ
Credit: canva

ところが分析の結果、内毒素が脂肪細胞に混入すると、白色から褐色への変換機能が阻害されて、蓄積された脂肪の量を減らす能力が低下することが判明したのです。

特に肥満者で血中の内毒素レベルが高く、褐色化プロセスの阻害が起きていました

実際に、肥満者から採取した白色脂肪細胞は、痩せ型の参加者から採取したものに比べて、褐色脂肪細胞に変化することが少なくなっています。

これを受けて、NTUの分子生物学者であるマーク・クリスチャン(Mark Christian)氏は「腸内から血中に漏れ出た内毒素は、正常な脂肪細胞の働きを阻害して、代謝活性を悪化させ、体重増加や糖尿病のリスクを上昇させる可能性がある」と指摘しました。

これまでの研究で、肥満者の腸は弾力性がなく、内側の壁が損傷しやすいため、内毒素が血中に漏れ出す確率が高くなることが分かっています。

つまり、肥満者は内毒素の漏出により、脂肪の燃焼率が大幅に低下して体重増加に拍車がかかると考えられるのです。

体重を減らせば正常な細胞機能を取り戻せる!

今回の研究は、過剰な肥満の人ほど体はどんどん痩せにくくなり、太る一方になるという悲しい現状を明らかにしました。

そのため内毒素の問題を解消できなければ、一度過度に太ってしまった場合もう戻れないということになってしまいます。

そこでチームはこれと別に、減量治療が内毒素の漏出によって生じる脂肪細胞の機能損傷をいかに逆転させられるかを検討しました。

ここでは主に、肥満手術などの外科的な減量治療を受けたことのある参加者の血液や脂肪細胞を調べています。

その結果、外科的な方法であっても体重が減少さえすれば血中の内毒素の量が減少して、脂肪細胞の機能改善が出来ることが確認されたのです。

このことから研究者らは「肥満手術を含む減量治療は、腸から血中に漏れ出る内毒素の量を減らし、正常な脂肪細胞を取り戻す方法として有効である」と指摘しました。

体重減少で脂肪細胞の機能は回復する
Credit: canva

つまり過剰な肥満に人は、内毒素の影響で個人の力で減量することが難しい状態になりますが、外科的な手段を含む減量治療を受ければ、正常な脂肪燃焼の状態に体が戻るので、以後は通常の生活を取り戻せると考えられるのです。

クリスチャン氏は「私たちの研究は、腸と脂肪が健康な体重を維持する上で、密接に相互リンクした器官であることを強調している」と述べています。

また同チームのアリス・マーフィー(Alice Murphy)氏は「今回の研究では、一度肥満になったとしても、その体重を減らせば、腸由来の内毒素が脂肪細胞に与えるダメージを失くし、正常な細胞の機能を取り戻せることも示された」と話しました。

肥満は今、世界的に最も急増している現代病の一つであり、糖尿病や高血圧、脳梗塞、腎臓病など、あらゆる病気と関連しています。

研究チームは今回の知見が、過度な体重増加を防ぐ新たな治療法の開発に役立つことを期待しています。

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参考文献

Toxic Fragments of Bacteria Leaking From The Gut May Drive Weight Gain https://www.sciencealert.com/toxic-fragments-of-bacteria-leaking-from-the-gut-may-drive-weight-gain Bacterial fragments from leaky gut help drive obesity, study shows https://www.ntu.ac.uk/about-us/news/news-articles/2023/05/bacterial-fragments-from-leaky-gut-help-drive-obesity,-study-shows

元論文

The impact of metabolic endotoxaemia on the browning process in human adipocytes https://bmcmedicine.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12916-023-02857-z
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