出かける間際になって、「鍵がない」「スマホがない」「財布がない」と慌てたことがあるかもしれません。
カナダのウォータールー大学(University of Waterloo)電気・コンピュータ工学部に所属するアリ・アユブ氏ら研究チームは、無くしたものを人間の代わりに見つけ出してくれるロボットを開発しました。
単にものを無くしやすい人だけでなく、認知症で苦しんでいる人をサポートできます。
研究は、国際会議「2023 ACM/IEEE International Conference on Human-Robot Interaction」で発表され、論文が2023年3月13日付で電子的にも掲載されています。
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- 認知症患者の紛失物を探してくれるサポートロボット
認知症患者の紛失物を探してくれるサポートロボット
出かける前にスマホが見つからずにドタバタするのは、単なる笑い話で済むかもしれません。
家の中で無くしたものが何日も見つからない、なんてことも稀でしょう。
しかし認知症で苦しんでいる人々はそうではありません。
記憶障害、脳の混乱によって、日用品の場所すら忘れてしまい、「1日中ものを探している」なんて状況に陥る人も少なくないのです。
アユブ氏ら研究チームは、このような認知症患者の急増を懸念し、彼らをサポートするロボットを開発することにしました。
彼らが開発したロボット「Fetch」は、周囲を認識するカメラと物体を検出するアルゴリズムを備えています。
そしてカメラを通して検出した物体を識別し、その位置データを追跡、記憶するようプログラムされています。
Fetchはある物体を別の物体と区別できるため、カメラの視界に入ってきた時と視界から出た時の日付や時間を記録してくれるのです。
さらにFetchに物体の名前を登録しておくことで、スマホアプリやコンピュータを使って、物体の場所を検索できます。
例えば、スマホを無くして見つからない場合には、その名前を入力するだけで、Fetchが最後にどこでスマホを見たのか教えてくれるのです。
カメラの数を増やすことで、一部屋だけでなく、家全体で物体の位置を監視することも可能でしょう。
そしてFetchのテストにより、この物体検出システムの精度が非常に高いことも証明されたようです。
認知症患者本人が持ち物の名前入力を行うのが難しい場合もありますが、介護者であれば簡単に利用できるでしょう。
その後は音声認識と組み合わせることで、患者本人がロボットに「スマホはどこ?」「財布はどこ?」と尋ねるだけで利用できるようになる可能性があります。
さらに技術が拡大・簡易化すれば、一般の人々が導入しやすいシステムとなるでしょう。
誰もがちょっとした探し物を瞬時に見つけられるようになります。
「いつも持ち歩く財布やスマホ」「普段使わない判子」などを探す時に、鞄や机の引き出しをひっくり返したり、ベッドの下をのぞき込んだりしなくても良いのです。
今後チームは一般人や認知症患者を対象にしたユーザー調査を実施する予定です。
参考文献
Can’t find your phone? There’s a robot for that https://uwaterloo.ca/news/media/cant-find-your-phone-theres-robot元論文
Where is My Phone?: Towards Developing an Episodic Memory Model for Companion Robots to Track Users’Salient Objects https://dl.acm.org/doi/abs/10.1145/3568294.3580160