starthome-logo 無料ゲーム
starthome-logo

マウスの動かし方やキーボードの打ち方からストレスを検知するシステムを開発!


「カチャカチャカチャカチャ……ッターン!」と響き渡るキーボードの打鍵音。

オフィスで働くと隣の人の「キーボードの打ち方がやたら騒々しい」と感じたり、「忙しなくマウスを動かしているな」と感じたことはないでしょうか?

キーボードの打ち方やマウスの動かし方には、イライラした気分が反映されているように思えます。

この考えを拡張させたのが、スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETH Zurich)の経営・経済・技術学部に所属するマラ・ネーゲリン氏ら研究チームです。

彼女たちは新しい研究で、マウスの動かし方やキーボードの打ち方から、その人が抱えているストレスレベルを判断するシステムを開発したのです。

研究の詳細は、2023年2月2日付の学術誌『Journal of Biomedical Informatics』に掲載されています。

目次

  • パソコン作業の動作からストレスの有無を調べる実験
  • ストレスを抱えている人はタイピングミスが多く、打鍵数も多い

パソコン作業の動作からストレスの有無を調べる実験

オフィスで遭遇する「タイピングがうるさい人」たち
Credit:Canva

人間の些細な行動にも、その人の特性や状態が反映されます。

例えば、イライラしているときのタイピングでは、やたらタイプミスが増えたり、打鍵の勢いが強くなったりしていないでしょうか?

またイライラしながら作業しているときは、やたらカチカチマウスをクリックしたり大げさに動かすこともあるかもしれません。

新しい研究は、そんなキーボードの打ち方やマウスの動かし方にその人が抱えているストレスが反映される可能性を指摘します。

ストレスを抱えた従業員を素早く見つけてケアすべき
Credit:Canva

実際、オフィスで働く人は深刻なストレス問題を抱えている場合が多く、今回の実験の場となったスイスでは、従業員の3人に1人が職場のストレスで苦しんでいると言われています。

こうしたストレス問題に対処するには、ストレスの早期発見が大切です。

今回ネーゲリン氏ら研究チームは、90人の実験参加者にパソコンを使ったオフィス業務を行わせ、彼らのストレス度がパソコン作業の動きにどのような影響を与えるか調査しました。

この実験では、参加者のマウスとキーボードの動作、心拍変動、聞き取り調査で自己報告されたストレスレベルが測定されました。

参加者は3つの条件で異なるレベルのストレスを与えられ、作業時に「邪魔なしのグループ」、「邪魔ありのグループ」に分けられ、邪魔ありのグループではチャットメッセージで繰り返し作業を中断させられる、あるいはプレゼン発表をさせられその際に批判されるなどで高いストレスを誘発させました。

こうしたストレスレベルの異なる参加者で、作業時のマウスやキーボード操作に明らかな変化があるかが調査されたのです。

ストレスを抱えている人はタイピングミスが多く、打鍵数も多い

ストレスを感じている人のマウス操作は無駄が多い
Credit:Canva

実験の結果、強いストレスを感じた「邪魔ありのグループ」の人々は、マウスを動かす速度が一定でないと分かりました。

しかも無駄なポインタ移動が多く、画面上の移動距離が長くなっていました。

加えて、不必要で不正確なクリックが多いことも分かりました。

対照的に、ストレスを感じていない「邪魔なしのグループ」はゆっくりと滑らかにマウスを動かしており、無駄のないポインタ移動によって画面上の移動距離は短くなりました。

クリック回数も少なく、正確で無駄のないクリックが行えていました。

そしてストレスを感じている人のキーボードの打ち方は、タイピングミス・打鍵数共に多いと分かりました。

ストレスを感じている人はミスが多く、その結果として打鍵数も増加
Credit:Canva

しかも打鍵間の間隔にばらつきがあり、タイピングを頻繁に休止していました。

これは思考力の低下に伴う正確性やスピードの欠如が原因だと考えられています。

一方、ストレスを感じていない人は、タイピングミスと打鍵数が少ない傾向にありました。

打鍵間の間隔も一定であり、長めの休止で思考力を十分に働かせたあと、文章をスムーズに連続で書けていたようです。

このようにストレスとキーボード・マウスの操作の仕方には、明らかな関連性が見られました。

論文の共著者で心理学者のジャスミン・カー氏はこの関連性について、「ストレスレベルが高まると脳の情報処理能力に悪影響が及び、それが運動能力(パソコン操作を含む)を低下させたのだろう」と述べています。

ちなみに今回のテストでは、2つのグループで心拍数に大きな違いは見られませんでした。

このことから、キーボードとマウスの動作を観察することは、心拍数などでは判断できない種類のストレスを見抜くのに役立つと考えられます。

パソコン作業からストレスを検出するアプリで、ストレスへの早期対処が可能になるかも
Credit:Canva

加えて研究チームは、これらのデータを機械学習にかけ、ユーザーのパソコン動作からストレスを検出するアプリを開発しました。

現在このアプリはスイスのオフィスで試験運用中であり、将来的には従業員が抱えるストレスを早期発見するのに役立つと考えられます。

今回の研究によると、打鍵数やタイピングミスの多さはストレスの指標でした。

自分や周囲の人でそのような変化が見られる場合、早めにストレスケアを実施することで、大きな問題に発展するのを防げるかもしれません。

全ての画像を見る

参考文献

Detecting stress in the office from how people type and click https://ethz.ch/en/news-and-events/eth-news/news/2023/04/detecting-stress-in-the-office-from-how-people-type-and-click.html

元論文

An interpretable machine learning approach to multimodal stress detection in a simulated office environment https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1532046423000205?via%3Dihub#fig2
    Loading...
    アクセスランキング
    game_banner
    Starthome

    StartHomeカテゴリー

    Copyright 2024
    ©KINGSOFT JAPAN INC. ALL RIGHTS RESERVED.