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実はオーパーツ状態だった宇宙服!月面探査に向け40年ぶりに新型へ更新!


実は宇宙服を新しく生産できない問題があったことをご存知でしょうか?


宇宙服は多層の生地を複雑に重ねて作られているため、機械で縫うことができずすべて手縫いで作られています。


ところがこの縫製技術が継承されていないため、現在宇宙服は新しく生産することができず40年以上も同じものを使い続けているのです。


しかしその状況もやっと打開されそうです。


NASAと民間の宇宙インフラ開発会社「アクシオム・スペース(Axiom Space)」は、月面着陸プロジェクト「アルテミスⅢ」で用いる新しい宇宙服のプロトタイプを公開しました。


約40年ぶりとなる新しい宇宙服には、最新の技術により高い機動性と保護機能が備わっています。


宇宙服の詳細は、2023年3月15日付のNASAのブログに掲載されています。




目次



  • 実はオーパーツ!?「40年以上も使い回されている宇宙服」
  • アクシオム・スペース社が開発した新しい宇宙服が発表

実はオーパーツ!?「40年以上も使い回されている宇宙服」


宇宙服は様々な素材でできた布地が何層にも重なっており、真空状態や熱、宇宙塵から人間を守ってくれます。


また生命維持装置によって二酸化炭素の除去と酸素の供給を行ったり、宇宙服内の温湿度を一定に保ったりします。


宇宙服(船外活動ユニット)の構造
Credit:JAXA

さらに通信のためヘッドセットやカメラ、ライトなども装備されており、長時間の作業に備えて飲料水バッグも収められます。


こうした宇宙服は、まさに「小さな宇宙船」であり、1着10億円以上もするようです。


そして実は、現在国際宇宙ステーション(ISS)の船外活動などで使われている宇宙服は40年以上前に作られたもので、新たに生産することができません。


これは多層の材料を複雑に重ねた宇宙服は手で縫うことしかできず、その縫製技術が継承されなかったためだといいます。


そのため当時NASAは宇宙服を寿命15年と想定して設計・生産しましたが、現在もそのうちの11着が設計寿命を大幅に越えた状態で未だに利用され続けています。(7着はチャレンジャー号とコロンビア号の事故で失われた)


もちろんNASAも新しい宇宙服の開発に取り組みましたが、宇宙服の設計は非常に複雑であり、また未来に想定される使用環境も不確定な部分が多かったことから難航していました。


アメリカ製の従来の宇宙服
Credit:NASA(Wikipedia)_宇宙服

そこで彼らは民間企業の宇宙服を使用することにしました。


2022年9月には、有人月面探査ミッション「アルテミスⅢ」(2025年の予定)で使用する月面探査用の宇宙服を、宇宙インフラ開発会社「アクシオム・スペース」が提供すると発表。


人々は、「新しい宇宙服はどんなものだろうか?」と期待に胸を膨らませてきました。


そしてこの度、NASAとアクシオム・スペース社は、新しい宇宙服のプロトタイプを公開したのです。


アクシオム・スペース社が開発した新しい宇宙服が発表


新しい宇宙服「AxEMU」のプロトタイプ
Credit:Axiom Space,NASA

新しく発表された宇宙服AxEMU(Axiom Extravehicular Mobility Unit)は、従来の宇宙服と比べて見た目がいくらか異なっており、さまざまな性能も向上しています。


まず見た目ですが、従来の宇宙服よりもややスタイリッシュであり、黒色の下地にオレンジ色や水色のラインが入っていますね。


ところが実は、この見た目は「独自のデザインを隠すために展示用カバーを被せたもの」なのだとか。


本来のデザインは内部に隠れており、本体カラーも熱を反射するために白色が採用されているようです。


新しい宇宙服は手足を動かしやすい
Credit:NASA(YouTube)_NASA, Axiom Space Reveal Artemis III Moon Mission Spacesuit Prototype (Official Broadcast)(2023)

公開イベントでは、アクシオム・スペース社のエンジニアであるジム・スタイン氏がAxEMUを着用し、様々な動きを見せました。


彼はAxEMUを着たまま歩き回ったり膝を曲げたりしました。


腕を回したり物をつかんだりして、新しい宇宙服がどれだけ柔軟か示しています。


また従来の宇宙服は上下で別れており、脚部を履いた後、上部ユニットを被るようにして着用してきました。


しかしAxEMUは、背面にハッチが付いたワンピース仕様であり、後ろから足を踏み入れるようにして着用するのだとか。


高い柔軟性と耐久性が備わっている
Credit:NASA(YouTube)_NASA, Axiom Space Reveal Artemis III Moon Mission Spacesuit Prototype (Official Broadcast)(2023)

そしてNASAによると、AxEMUはさまざまな体型の人に適応するよう作られており、「アメリカ人男女の約9割が着用できる」とのこと。


新しい手袋とブーツには、月面での長時間作業を想定して高い柔軟性と耐久性が備わっています。


特に月の南極のクレーターの底では日光が1年中届かず、極寒であるため、新しいブーツは完全に断熱されているようです。


AxEMUは今後も改良が続けられ、実際に使用されるのは2025年の予定です。


その時、約40年ぶりの新作宇宙服「AxEMU」によって、約50年ぶりに人類が月面へ降り立つことになるでしょう。


ちなみに、月面で着用されたAxEMUは、月脱出時の質量を軽減するために月の軌道に留まる宇宙船に置いていかれ、地球には戻ってこない可能性があります。


もしそうなら、アルテミスⅢの出発前に本当の姿を晒したAxEMUをしっかりと目に焼き付けておく必要があるでしょう。



全ての画像を見る

参考文献

Spacesuit for NASA’s Artemis III Moon Surface Mission Debuts
https://www.nasa.gov/feature/spacesuit-for-nasa-s-artemis-iii-moon-surface-mission-debuts
NASA Reveals The Sleek New Suit Next Gen Moonwalkers Will Wear in Space
https://www.sciencealert.com/nasa-reveals-the-sleek-new-suit-next-gen-moonwalkers-will-wear-in-space
1st Artemis spacesuits to be worn on the moon will not return to Earth
https://www.space.com/axiom-space-axemu-artemis-3-spacesuits-fate
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