日本では、2023年4月から自転車用ヘルメットの着用が努力義務化されます。
自転車の安全については世界中で度々議論されてきました。
こうした中で、エアバックを開発しているフランスの会社「In&Motion」は、自転車用エアバッグ「スタン(Stan)」を発表しました。
事故や衝撃を瞬時に察知し、わずか0.1秒で頭と首を保護してくれます。
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- サイクリストを守る自転車用エアバッグ「スタン」
サイクリストを守る自転車用エアバッグ「スタン」
警察庁の2021年の統計(PDF)によると、日本の自転車乗用中の死傷者のうち、ヘルメットを着用していなかった人の割合は全体で88.5%でした。
特に高校生や65歳以上の高齢者は、9割以上が非着用だったと判明しています。
こうした傾向は、ユーザーがヘルメットを「ダサい」「煩わしい」と感じていることの現れなのかもしれません。
2023年4月からは着用が努力義務化されるため、着用率自体は改善されるでしょう。
ただし、「ダサい」「煩わしい」といった人々の感覚までは、大きく変化しないかもしれません。
下の地図はヘルメット着用の義務がない国を緑、義務化されている国を赤で塗っています。
こうしてみると、世界ではヘルメット着用を法律で義務化している国は少数であることがわかります。
安全のためには当然ヘルメットを着用した方がいいのは確かです。しかし着用の義務化については賛否両論です。
In&Motion社は、こうした世界の現状に全く新しい風を吹き込もうとしています。
彼らは2014年の創業以来、さまざまなスポーツ活動に向けたエアバッグを開発してきました。
そして今回、それらの技術を詰め込んだ自転車用エアバッグ「スタン」を発表したのです。
スタンは一見すると、普通のリュックサック(バックパックとも言う)です。
しかし内部には電子モジュールが搭載されており、事故やサイクリストの落下を瞬時に予測・検出。
わずか0.1秒で頭、首、胸、背中を覆うエアバッグを展開してくれます。
防護性能も非常に高く、ヘルメットと比較して頭部損傷のリスクを80%も低減できると言われています。
上の動画はヘルメット(赤線)とスタン(緑線)における「頭部の減速度(負の加速度)推移」です。
減速度が大きければ大きいほど損傷レベルも大きくなるため、緩やかな曲線を示すスタンがヘルメットよりも保護機能の点で優れていると分かりますね。
また、エアバッグの展開と同時に緊急連絡先にも情報が共有され、保護者がユーザーのGPS座標を得て即座に駆け付けることもできます。
さらにスタンは、通常のリュックとしてのスペースも確保されており、ノートパソコンやスマホ、仕事の資料などを入れて持ち運べます。
毎回背負う必要はありますが、ヘルメット装着による煩わしさやヘアスタイルの乱れからは解放されます。
こうしたオシャレで高性能な代替品が普及するなら、世界各地の「安全意識」や「法的制限」にも変化が生じることでしょう。
もしかしたら将来、「ヘルメットもしくはエアバッグのどちらかを装着すべき」という幅のある法律が生まれるかもしれません。
これによって自転車事故による死亡者が減るならば、素晴らしい技術といえるでしょう。
ただオフロードならともかく、街なかにおける自転車事故については、人混みを自転車で走り抜けない、スマホをいじりながら運転しないなど、自転車利用者のモラルがもっとも重要なのは言うまでもありません。
参考文献
Bicycle airbag backpack blows up womb-like head and neck protectionhttps://newatlas.com/bicycles/in-motion-stan-bicycle-airbag-backpack/