ネコの鳴き声といえば「ニャー」ですが、他に「ゴロゴロ」と喉を鳴らす音を出します。
ニャーの発声は、私たちが話すのと同じように行われますが、ゴロゴロは違います。
ゴロゴロは一体どうやって発声されるのか、また何の目的でゴロゴロと鳴くのか。
それから、ゴロゴロを含む愛猫の鳴き声が飼い主に与えるメリットまで、以下で紹介していきます。
目次
- 「ニャー」と「ゴロゴロ」の発声はどう違う?
- ゴロゴロはネコにも飼い主にも「健康効果」がある
「ニャー」と「ゴロゴロ」の発声はどう違う?
ゴロゴロの発声を理解するには、まず喉の解剖学から始める必要があります。
一般的にネコは、人と同じように喉頭(こうとう)を使って声を出します。
喉頭は喉の奥にあたる気管の入り口に位置し、軟骨、筋肉、骨の組み合わせから出来ています。
喉頭にあるのは主に、声帯と喉頭蓋(こうとうがい)の2つです。
声帯は、発声時に適度な強さで閉じて、吐く息により振動しながら声を出します。
喉頭蓋は、呼吸をするときに開き、ものを飲み込むときに固く閉じて、食べ物が気管へ入らないようにしています。
また、喉頭蓋の中心は声門と呼ばれ、垂直方向の筋肉が並んでおり、それが気道の拡張と収縮を制御しています。
ネコが「ニャー」と鳴くのは、私たちが話すのと同じ方法です。
音を出すために2つの喉頭筋が触れ合い、振動します。この振動は、息を吐き出すときに空気が押し出されることで起こります。
同時に、開口部の大きさを調節する別の筋肉群によって、さまざまな音程が作り出されます。
一方で、「ゴロゴロ」という音は、これと同じ仕方では出ません。
「ニャー」は息を吐いている間だけ出ますが、「ゴロゴロ」は息を吸うときにも出ます。
ゴロゴロは、ネコの呼吸で空気が押し出されたり入ってきたりして、声帯の筋肉が振動することで始まります。
そして、その音は骨から出ているのです。
ネコには必ず舌骨(ぜっこつ)という骨があります。舌骨は喉の奥にあり、舌と喉頭を支えています。
この舌骨に声帯の振動が当たると、低周波の残響として「ゴロゴロ」と音が出るのです。

ちなみに、同じネコ科でも、ヒョウ亜科に属するライオンやジャガー、ヒョウ、トラの「ゴロゴロ」は音がまったく違います。
ネコのそれが比較的穏やかな音色なのに対し、ヒョウ亜科のゴロゴロはほとんど「ガルルル!」に聞こえます。
原因は舌骨にあり、ネコの舌骨が硬く、完全に骨化しているのに比べ、ヒョウ亜科では柔軟で、骨化していません。
それによって声道が伸び、轟音のような咆哮が出せるのです。
ゴロゴロはネコにも飼い主にも「健康効果」がある
では、ネコたちはなぜゴロゴロと鳴くのでしょうか?
この答えはいくつかあって一つに定まっていませんが、一般的には、満足感を示すためという説が有力です。
気分がいいときやお腹が満たされているときに、ゴロゴロと鳴くことはよくあります。
しかし、空腹や緊張時にもゴロゴロ鳴くことはあるので、一概にそうとは言えません。
これと別に、生体音響学者のエリザベス・フォン・ムゲンタラー(Elizabeth von Muggenthaler)氏は「ゴロゴロ音は自己治癒の一種である可能性が高い」と指摘します。
ゴロゴロの周波数は、平均して25〜150ヘルツです。
この周波数域は、骨の成長を促進し、痛みを軽減することが過去の研究で示されています(The Acoustical Society of America, 2001)。
ネコは座りっぱなしで過ごすことが多いので、ゴロゴロ音を日常的に取り入れることで、健康的で省エネな生活を送っていると見られます。

さらに、ネコの鳴き声は、その飼い主にもプラスの健康効果を与えてくれます。
実際、ゴロゴロと鳴いているネコを撫でる飼い主は、心的に癒されるだけでなく、血圧が下がり、心臓病のリスクが減るという相関関係も示されているのです(Orthopedics, 2018)。
ということで、今年の健康増進の一環として、子猫を迎え入れるのもありかもしれません。
参考文献
Okay… How Do Cats Purr?
https://www.earth.com/earthpedia-articles/okay-how-do-cats-purr/
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
ナゾロジー 編集部